始まりは「自由」
短いです。
目覚めると、「オレ」は何処かにいた。
正確に言うと浮いていた。
というか水槽の中で足枷をはめられて動けなくなっていた。
さっきから変なことを言っているがオレ自身、自分がどうなっているかよくわからない。
とりあえず足枷を引っ張ってみるとすぐに取れた。
先程までは気がつかなかったが水槽の外は洞窟のようだ。
水槽から出ると出口から出ることが出来た。
出てすぐ右に川があった。
その川では衣服などを洗濯しているのか一人の女の子がいた。
「あ、あの…「きゃあああああ!」
びっくりしたのかどうかはわからないが急に悲鳴を上げられたので少しだけショックだった。
ふと、自分の体を見てみると服を着ていなかった。
なるほど。
話してみると打ち解けた。
どうやら村に一人の医者の娘らしい。
ちなみに服はまだ洗っていなかった服を少しの間かしてもらうことにした。
小さい子で、名前は「マーヤ」だそうだ。
「貴方の名前は?」
マーヤはオレに名前を聞いていた。
そういえば、女の子の名前は「マーヤ」だったけれど、
オレの名前は何なんだ?
オレはそれを知るべく、マーヤの村へと向かった。
村では、人はあまりいなかった。
子供は外で遊んでいたけれど、大人は誰もいなかった。
あまり大きなところではないようで、店や家も少ない。
森に囲まれているし、他の村や町と接点が無いのかもしれない。
「…人が少ないでしょ。最近はね、カンバッチ王国の人達がお金を取ったり女の人を連れて行っちゃったりするから皆恐がって外に出たがらないの。私みたいな子供はこっそり出てるんだけどね。そうだ、私のお母さんに聞いてみたら貴方の名前もわかるんじゃないかな」
オレはマーヤの言葉に頷き、マーヤの母改め医者の元ヘ行くことにした。
案外すぐ近くにあり、壊れかけの引き戸を開けて中にはいった。
マーヤの母は、眼鏡で髪が長くてとても弱そうな感じだった。
優しそうな、それでいて厳しそうな、矛盾した人だった。
「お母さん、この人診てあげて」
「あら…?見ない顔ね、どこか悪いの?」
「…わかりません。わからないんです、ここはどこで自分が誰なのか」
「貴方それ、記憶喪失って言うのよ」
マーヤのお母さんは、オレに記憶喪失だと言った。
確かにそうかもしれない。そうかもしれないが、俺は行く当ても無く、金も無く何も無かった。