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短編

まいごのくまちゃん

作者:

 



 ある日。

 くまの親子が苺を摘みに行きました。家から少し行ったところに苺がたくさん生っている場所があるのです。

 お母さんぐまと、子ぐまマックくんは、仲良く手を繋いで苺畑に行きます。

「わーいっ! 苺がたくさん!」

 苺畑に着くと、マックくんは嬉しくなりました。苺に近寄り、まじまじと見つめます。小さくて赤い苺。おいしそうです。

「摘んですよ。食べちゃだめですよ」

 お母さんが注意しました。

 でもマックくんは苺を一つ手に取ると、ぱくりと一口。

「おいしい!」

 マックくんは一つ、また一つ、と苺を食べていきました。どんどん、夢中になって食べました。

 しばらくすると。

「……?」

 周りを見ると、お母さんの姿がありません。

 お母さんはどうしたのでしょう?

「おかあさん? おかあさーん!」

 マックくんはお母さんを呼びました。けれども、返事はありません。お母さんは帰ってしまったのでしょうか。それならばたいへんです。マックくんは帰り道がわからないのです。

 マックくんの目に涙が溢れました。

 すると。

「どうしたの?」

 声が聞こえました。声は上からです。マックくんが見上げると、苺畑の向こうの木に黒い影がありました。

「だ、誰っ!?」

 マックくんはびっくりして、体を縮めます。

「あら? わたしよ、マックくん」

 黒い影はゆっくりと羽ばたき、こちらへ降りてきました。草木を風に揺らし、降りてきたのはマックくんの知っている鳥です。

「モモちゃんさん!」

「そうよ」

 ハクトウワシのモモちゃんは軽やかに降り立ちます。

「なにを泣いているのかしら?」

 モモちゃんは羽でマックくんの目元を撫でました。マックくんはくすぐったそうに答えます。

「おかあさんとはぐれたの……」

 ぐすんと鼻をすすると、モモちゃんは悲しそうな顔をしました。

「そうなの。……それじゃあ一緒に探しましょうか」

「いいの?」

「ええ。わたしがいればなにも怖くないわ」

 モモちゃんは自信満々に胸を張りました。

「ありがとう! モモちゃんさん」

「どういたしまして。わたしは空から探しましょう」

 モモちゃんはそう言って空高く舞い上がりました。


 空でくるくると回りながら、モモちゃんはマックくんの家の方向へ向かいます。マックくんはモモちゃんを追いかけました。

 あまりに空を見上げて歩いていると、なにかにぶつかってしまいました。

「いたっ!」

「ごめんなさい」

 マックくんはすぐさま謝ります。

「前向いて歩いてよ」

 マックくんがぶつかったのは、ダックスフントのわんたろうでした。

「あ、わんたろうくん」

「やあ、マックくん。元気?」

 わんたろうはマックくんの友だちです。わんたろうは笑って声をかけてきますが、今のマックくんには、それに答えられません。

「どうかしたの?」

 わんたろうはマックくんの顔を見て、心配そうに聞きます。すると、バサッと音を立てて、モモちゃんが降りてきました。

「マックくん。お母さんとはぐれちゃったんだって」

「え! それはたいへんだ! ぼくも手伝うよ」

 わんたろうは自慢の鼻を使いました。くんくんとマックくんお母さんの香りを探します。

「あら。わんたろうくんって優しいのね」

 モモちゃんはそう呟くと、再び空へ戻りました。

「こっちかな?」

 わんたろうはマックくんのお母さんの香りを見つけ出したようです。

「うん! こっちだ!」

 わんたろうは走り出します。マックくんも走りました。それを見たモモちゃんも動きます。

「いた!」

 目の良いモモちゃんは遠くにお母さんを見つけました。

 モモちゃんは翼を羽ばたかせ、お母さんへ向かいました。

「マック! どこなの? マック――っ!」

 そのころ、お母さんも一生懸命マックを探していました。苺畑を出るとき、しっかりとマックに声をかけなかったのを後悔していました。

「マック……」

 お母さんはたくさんの苺が入ったかごを見つめて、悲しくなりました。

 そのときです。

「おかあさーん!!」

 遠くからマックの声が聞こえました。お母さんはハッとなって顔を上げます。

「マック?」

 眺めていると、道の向こうからマックが走ってくるではありませんか。

 お母さんは嬉しくなりました。

「マック!!」

 お母さんの声です。

「おかあさん!」

 マックは大きな声で呼びました。お母さんも駆け寄ってきます。

「あぁ、よかった」

 お母さんはマックをぎゅっと抱きしめました。

「おかあさん! ごめんなさい……」

 マックはお母さんの胸の中で何度も謝りました。でも、お母さんは「いいの」と許してくれます。

「すぐ見つかってよかったわね」

 隣にモモちゃんが降ります。わんたろうも安心して笑います。

「ありがとう。モモちゃんさん、わんたろうくん!」

 マックくんは二人にお礼を言いました。

「ふたりともありがとう」

 お母さんも二人に言いました。

「お礼に苺のジャムを作るから。持って帰って」

「やった――!」

 モモちゃんとわんたろうは喜んで、羽を広げたり、遠吠えを上げていました。


 モモちゃんとわんたろうのおかげで、お母さんに会えることができました。

 よかったね。マックくん。




おわり。





 ちなみにわんたろうの模様はブラック&タンで。

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