03
「そうか」
クリームソーダのストローを止めて、彼女が少し上をみて言った。
「外国人とか? ならほとんど周りには」
「外国人でもありません。コーダ、というのは本名ではないんです」
「あら……」
トシエの視線が、はじめて泳いだ。
サンライズ、身をかたくして、一挙手一投足を見守る。
何かを、思い出そうとしている。
意識の混沌に何か、別のものがちらっとみえた。
しかしその目はすぐにサンライズの方に戻る。
「Eメールでも、そんな名前の方はいないし、たぶん」
「Eメールも、やってらっしゃるんですか?」
「ええ」
はにかんだように、上目づかいにこちらをみた。
「これもついこの頃、ニフター、でしたっけ? でもほんの数件だけ……主人のパソコンでいっしょに」
キサラギのヤロー! 新事実続々じゃねえかよ!!
内心の怒りをつゆとも見せず、サンライズは淡々と
「いいですねえ」
と笑ってみせる。
「アオキさんも、パソコンを?」
「カイシャではね……仕事がらみで少しは」
「あれ、面白いですよねぇ」
お手紙みたいにお話できるんですもんね、でも電話の回線を使うからあんまり使ってもいられませんよねえ、と笑っている。電話の方が便利かも。すぐかけられるし、話せば済むから早くて楽なんですもの。
サンライズは笑顔を崩さず、さりげなくもう一歩踏み込む。
「どんな方々メールのやりとりをされるんです? 知らない人もいるのでは?」
「いえいえいえ」
あわててぽっちゃりした手をふるしぐさも可愛い。
「それほど多くないんです、四人か五人、それにお知り合いの方ばかり……だって、会ったこともない人なんて、なんだか怖くて」
そう言いつつ、彼の顔をみて笑った。
「あら、私、会ったこともない方とこうしてお茶してますよねえ」
「そうですね」
同じようにサンライズも笑う。




