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03

 ムラカミのダンナは、一回り縮んだようにみえた。


「カアチャン、ラーメン屋で働いてたんだ」

 当時の事を思い出しているのか、ほんわかした笑顔を浮かべている。

「会社近くの、行きつけのラーメン屋。あんまし客がいなくてね、すぐ食えるから、好きだったんだ」

「うん」

「明るいし、何だかさ、かわいいとこあるだろ? アイツ」


 決して美人というわけではないが、言葉や動作の端々に、おぼつかないような、あぶなっかしい所があってつい、守ってやりたくなる、そんなタイプだったと。


「身寄りがなかったんだろ?」

「ああ……ラーメン屋のおやじがさ、道ばたで拾ったんだぁコイツ、って笑いながら言ってた……後でアイツに聞いたら、そうなのよ~って笑ってた」

 行き倒れ同然のところを、ラーメン屋のじいさんが連れ帰って介抱したらしい。

「惚れちゃったらさ、もうあとはアタックあるのみだよ、最初は全然、脈がないと思ったのに」

 家庭を持つのが怖い、と言ったそうだ。

 それを聞いてサンライズは胸が痛んだ。

「一緒になれた時は、もう舞い上がっちゃってよ」

 判るわかる、とうなずいた。

「でもさ、」ここ煙草吸ってもいいかな、と急に聞くので、隅に控えていた記録官をみる。

「主任がついていて下されば」

 とオーケーがでたので、ダンナは胸ポケットからマイルドセブンを出して、火をつけた。

「カアチャンが、急に出かけてさ……なかなか帰って来なかった」


 結婚二年目に入った、ある夏の晩だった。

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