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01


 間もなくして、サンライズは本部に呼び出された。


 ムラカミ・タカユキが参考人として来ているので、彼から事情を聞いてほしいというオーダーだったが、まず、本部長と技術部本部長が呼んでいるというので本部長室に入った。


 どこかシンプルな校長室といったこじんまりした部屋の真ん中、応接セットの向こう側に、ふたりはすでに並んで座っていた。 

 本部長のカチハラはせわしなくファイルをめくり、ナカガワ技術部長はただ、腕を組んで彼に刺すような視線を向けた。


 どちらも座れとは言わなかったが、サンライズは一礼して彼らの向かい側に浅く腰かけた。


「責任の所在は」

 カチハラがファイルから目を上げ、おもむろに口を開いた。


 検事あがりと聞いたことはあったが、小柄でずんぐりして、目の詰まった灰色のウール生地でかっちりと縫いあげたような印象の男だった。


 横に腕を組んで座っているナカガワの方が、もう少しすっきりした上背のある印象だが、どちらも堅苦しい顔をしてサンライズを凝視していた。


「責任の所在は、キミのチームにある、と聞いているが」


 サンライズは二人を静かに見比べている。


「『コーダ』を早くからマークできていながら、二ヶ月以上無駄な調査に費やし、しかも二回も暗殺事件を見逃して四人の死傷者を出しておる、その上」


 本部長はまるで裁判にのぞんでいるかのように、指摘にも無駄がない。


「本人まで、キミの目の前で死なせてしまったというじゃないか。本当かね」

「本当です」


 オレは椅子ではなくて、おシラスに這いつくばった方がいいのか。

 そう心の中でつけ加えたのが目の色に見えたのか、カチハラが眉をかすかに寄せた。

 答えの続きを待つ様子、だが、結局サンライズは黙っていた。


「何か弁解はないのか」

「ありません、報告書はもう出しました」


 カチハラは部下の反抗的な態度にあまり慣れていないのか、彼の答えにいっしゅんたじろいで、意味もなくファイルを数ページほどめくっていた。


「それを見たから今日呼んだんだ」

 ナカガワはイライラと口をはさむ。


 カチハラもそれに勢いを得たようで、音を立ててファイルを閉じ、真っ直ぐサンライズを見上げて尋いた。


「オマエは『コーダ』とも何回か接触してたんだ、どうして何もできなかった」


 ナカガワは、押し黙ったままサンライズを凝視していた。


 少なくとも彼の異能ちからについて知っているはずだが、この場でもそれについては触れようとはしない。

 本部長の方は全くそれについては把握していないようだ。

 普通ならば組織の上になればなる程、極秘事項に近くなるような気もするのだが、ナカガワの方が確かに、サンライズの事情には詳しいようだ。

 サンライズには組織の内情や力関係までは判然としなかったものの、とりあえず黙ってカチハラの説教を聞いていた。


「あの報告書ではまるで説明がなってない。彼女の説得を試みた、とあったが、結論から言ってまるで効果はなかったようだな。キミは説得の技能を買われて、ネゴシエーター登録されているんだろう」

「はい」


 あの『力』を使ったことについては、報告書から全て省いていた。

 この機関においても、タブーは存在するのは重々承知だった。

 説明してはいけない内容なのは判っていたし、あえて説明する気もなかった。


「昨日中尊寺支部長には厳重に注意した」

 はあ、と本部長は大きな息をついて椅子によりかかる。

「警視庁からも、赤坂の件で全く関係のない男を掴まされた、と抗議されている」


 あちらからムラカミ・トシエを押しつけてきたことは、すっかり忘れてしまったらしい。


「キミの処分は追って連絡する。今日ムラカミ・タカユキにこの後会ってから、報告書は書きなおして再度、提出するように」


 以上だ、と立ち上がった。


 サンライズは軽く頭を下げ、部屋を出た。



 案の定、ナカガワが後から追いかけてきた。

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