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04

 もしかしたら、『コーダ』が資料などを送り返すのを見ているかも知れない。宅配を使った記録はなかった、という話だったので、一般郵便が一番考えやすい。彼女のアパートから一番近いポストは駅前の郵便局、この前を通りかかったかもしれない。

「はぁ? ずいぶん具体的だねえ」

 それでも質問が面白かったのか、ぱらぱらとメートをめくっている。

「あはぁ」思い出したぞ、そんな女は通らなかったけど……

 ちょっと、ミノルヤのじいさんともめた男がいてさ。


 ここの数少ない常連、駅前の靴屋のじいさんが店に入る間際、急ぎ足の男と店の前でぶつかった。

 男はぶかっこうな封筒(よく500円で送るやつあるだろ、あれに紙やら何やら無理やり詰めたような感じだったな)を取り落とし、あわてて拾い上げようとしたが先にじいさんがそれを拾い上げたのだそうだ。

 先にぶつかったのはそっちだ、謝れだのどうだの、へそ曲がりのじいさんがごねた。

 頭のてっぺんの毛を尖らせたキューピー野郎が、何だとコノヤローとすごんだが、何となく落ち着かない感じで、けんめいに封筒を取ろうとした。

 ヤロー謝るまでは返さねえ、返せジジイ、騒ぎになった。そこに声を聞いて、マスターがかけつけたのだと。

 まずジイサンから封筒を取り上げ、まあまあ、話せば分かる、お兄さんが困ってるだろ?と、男に返した。

 キューピーは礼も云わずに、どんぐり眼を白くむいて、駅の方に早足で向かっていったのだそうだ。

「礼儀のレの字も知らないヤツだ、ってじいさんはカンカンだったな」

「それ、土曜日の何時頃か覚えてますか」

 ボビー、口の中が乾いてきた。

「店を開けようと思ってたから、十時ちょっと前だな」

「まさか……」

 笑いながらも、もしかして、とすがるような気持ち。

「どこ宛てとか、見てませんよね」

 マスター、ごましおになった口ひげをひねりあげ、ゆっくりとノートを読んだ。

「東京都、港区、台場一丁目…」ビル名まで「第二翼ビル八階812森リツコ様」

 どうだい、頭の体操は? 自慢したとたん、ボビーは彼に抱きついた。

 

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