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気になって、ボビーにも連絡を入れた。
「元気です。こちら異常なし。彼女は通常の生活を送ってます」
小さく、BGMらしい、ジャズが聴こえる。ずっと喫茶店で見張ってるのか? と聞こうとしたら、向こうから答えた。
「それがね」
口調が変わる。なんと、張り込みの喫茶店でバイトをしてるのだと。
「すごおく、ヒマらしくてさ、この店」
客はほとんど、彼一人かもう一人、近所のご老人くらい。
「あんた、もしかして刑事さんかい?」と聞かれて「はい」と答えたのだそうだ。
刑事ということで、近所の出入りを見張っている(でも誰をとは言ってないわよ、と急いで言い訳)という事を話したら、だったらバイトのふりして、にわか店員になってくれてもいいよ、とありがたい申し出があったのだという。どうせ客も来ないし、アンタ、急に呼びだされたりして飛び出したとしても、店開けっぱなしでも特に取られるものもないし、オレも刑事さんがいてくれれば心強いし、と。
ボビーが店にいる間は、近所に出かけたり、二階で寝ていたり、らしい。
結局はつかの間でもラクできるのが魅力なのか。
「しかもね」
だんだん声が小さくなった。
「彼、ゲイなんですって」
「はいはい」
とりあえず、見張りとしては最低限役にたってはいる、と思いたかったのでサンライズは軽く流す。
シヴァが休んでいる間、端末の前で村上家の電話をモニタをしながら、カイシャの様子をとりとめもなく、ボビーに話してやる。
ボビーは仕事は大嫌いとかいいながら、MIROCの支部についてはけっこう気に入っているらしく、こういう話なら喜んで聞いている。
「やだわぁ、キサラギは相変わらずツメが甘いのね」
「この件が済んだら有休とるらしい」
「ナマイキ」
「シヴァだって、休んでないのにな」
シヴァの様子も話してやると、「まあ」と言ったきり絶句した。彼もシヴァのことはかなり気に入っているので、非常に心配になるらしい。
「……彼でも、難しいのね」
ちょうどシヴァが戻ってきた。顔を洗ったらしく、タオルで拭きながら帰ってくる。
「シヴァが戻ったんで、いったん切るよ」
サンライズは、さっぱりした顔のシヴァに軽く手をあげて自分のデスクに戻った。




