05
ダンナはきょうだいが多かったのよ、六人。だからにぎやかな家庭にあこがれてたみたい、私はね、両親も早くからいなかったし、きょうだいも……だからよく分からないけど。
「でもね、今はダンナがいるから」
えくぼが、彼の方を向いた。
「ダンナさんのこと、本当に愛してらっしゃるんですね」
「うん……そうね、大好き」ごめんなさいねぇノロけちゃって、とあけっぴろげに笑っている。サンライズもつられて笑顔になった。
「いいですよ、そういうの」
「そう?」
「昔は苦労されたんでしょうね」
「むかし?」
少し、暗い光景が点滅した。はっきりしたイメージはない。
「……だったかも、って言うか、あまり覚えてないの」
「ごめんなさい、イヤなことを思い出させていたら」
トシエは空になったランチボックスを組んでたたみながら、まあるく笑った。
「ううん、ぜんぜん平気よ、だって、本当に思い出せないんだもの」
過去がまったくないはずなのに、ずっと過去に縛られているんだ、この人は。
「だから今、ダンナのことを大切にできるのかも、近くで愛してくれる人がいたら、その人にせいいっぱいのお返しをする。それで十分な気がする」
じゃあ、ボクのことは? という質問がのどまで出かかったが、彼はぐっと飲み込んだ。
そこまで踏み込むな、会社員アオキも一般人シイナタカオも、プロの特務員サンライズまでもが彼に警告を送っていた。
一緒に逃げて下さい、と言いたい。この人を自分が更生させられるのならば、どんな苦痛が襲っても構わない。
でも、シェイクはしたくないのが本心だ。無理やり彼女の心の奥にまで踏み込むなんて……彼女のドロドロした部分を全部かき出して、目の前に晒さねばならないのだ。そんなことできるわけがない。考えただけで、自分の心まで引き裂かれそうだ。
そんな彼の苦悩にも、彼女は全然気づいていないようだった。
「さて後半戦」
トシエが、ぴょんと立ち上がる。
「ワタシね、あのヘンテコな観覧車に乗るけど、一緒に乗りたい人?」
「はい」同じく、立ち上がる。
とりあえず、今日は今日。明日は明日の風だ。




