03
どんよりと曇った、しかし過ごしやすい遊園地日和だった。
「アオキさん、私服ですのねぇ」
時々まじまじと見つめられて、はは、と照れ笑い。
「そりゃ、遊園地ですから」
「よねぇ」
トシエもはしゃいでいる。
彼女もちょっと、いつもよりはオシャレをしてきたのか、淡い水色のワンピース。よけい太ってみえる、とは言わないでおいた。
でも、やっぱり可愛い。サンライズはまた横目で見た。
これで痩せていたら男どもの十人が十人、はっとふり返るだろう。だからいい、このくらいでいいのだ。
「ワタシね、うれしくってうれしくって」実は、遊園地、初めてなんですぅ、と目を輝かせている。
「お弁当も、作ってきたんですよ、ホラ」
大きな手提げを少し、拡げて見せた。
「お口に合うと、いいんですけど」
「うれしいなあ」
素直に、口からでた。
「ねえ、何に乗る?」
トシエはすでに、周りをキョロキョロ。
「あ、アレ何っ?」
彼の手を取って、すでに走り出している。速い。さすがスナイパー。
のっけから、ウォータースライダーだった。
初めは「あれ、見て! わあ、水だわねえ、ホンモノの、」などと余裕で笑っていたカノジョ、最後のスライダーで「ぎゃああああ」大絶叫、彼にしがみついた。
降りた時には顔がびしょ濡れで、トシエ、何だか泣き笑いしているようだった。
「な、なんだったのアレ! たいへん、お化粧とれちゃった! もう、アオキさん知ってたんでしょ、ひどいわ!」
とぽかぽか殴られる。
しかしその次にはきりっと腰に手を当て
「アオキさん、今日はとことん、付き合っていただくわ」
ジェットコースターに向かってダッシュ。
「待ってください、トシエさん、ボク、あれ、苦手なんですよ」
「だぁめぇでぇすっ」
結局、ジェットコースターだけでもその後二回、その他のアトラクションもまんべんなく回らされた。
昼もかなり回った頃、ようやくお弁当を拡げていただいた。




