01
―― 犯行のあった金曜日の夕方遅く、村上家に宅配便が届いていました。
その報告から全てが動き出した。
「代引きですね、ええと、ムラカミ・トシエさま宛て、差出人は御本人様で。ドライバーが金曜日午後6時過ぎにお電話させていただいてます。お届けしたのが午後6時20分頃」
1234円、いただいてます。とのことだった。
「大きさは」
「A4で、一番小さくて軽いタイプなので60センチ以下、2キログラム以下」
「以前にも同じような荷物を運んだことは?」
「さあ……」個人情報ですので何とも……ということになり、あとはシヴァに頼む。
シヴァは水の中の魚、しかも肉食魚のようだ、端末を操って次々と情報を取りだす。
「宅配業者はイロイロだけど、今までに代引きで何度か、受け取っている」
「日時とか、判るか」
「リストを出すよ」
あっという間に、9件分のリストが出た。
過去の暗殺事件と、宅配便の配達記録は完全にリンクしていた。
「最初の二件は、別の住所に届いている。カイセ・トシエ様宛て。埼玉県浦和市……それから少し時期が開いて、七件は東京都北区○○二丁目…今の住所」
「差出人は」
「本人か、あとはバラバラ。ただ一つだけ、キョウツウテンがあるよ」
シヴァがサンライズに渡したリストを示した。
「どれも速達になってて、いつも代引き、金額は1234円」
データが抜き出されてこうして並ぶと、異質な感じが更に強まった。
多分、代引き金額が1234円、という所で、彼女のキーが作動するのだろう。
後は、スイッチが切り替わって『コーダ』となった女の元に、宅配で指示が届く。
彼女はそれに従って、マニュアル通りに仕事に行くのだろう。
スイッチを切るのも、多分、マニュアルに含まれているに違いない。
「システムとしては、単純かもね。でも」
ボビーが脇からのぞいて言う。
「必ず、彼女が電話に出るとは限らないでしょう?」
シヴァは更に端末をみる。
「この、スピード宅配、という会社にはコメント欄があったよ。ええと
『代引きは必ずムラカミ・トシエご本人様に連絡のこと』だって」
今回電話が来たのは、金曜の夕方6時頃。MIROCが電話に細工したのは8時少し前だった。
もう少し早く、仕掛けていられたら……サンライズは唇を噛む。
しかし過ぎたことより、今は次の動きだ、と目を上げた。
「シヴァ、しばらく宅配業者を重点的にチェックだ。同時に背後を探れ」
「了解」
シヴァはさっそく、端末に向き合った。すでにシステムの中に入り込んでいる。
「ボビーはアパート近辺で見張りを頼む」
「わかったわ」
いい珈琲店見つけたから、と肩をすくめてみせる。
「リーダーは?」




