06
ナカガワは、急に口をつぐんだ。
しばらくは街の喧騒しか耳に届かない。
「……しかし」
咳払いして、ようやくナカガワが声に出す。ことばを選んでいるのが分った。
「本当に、シェイカーだとしても……スキャニングまでできるのか?」
この男も『シェイク』について知っているんだ、サンライズは、支部長の顔をみた。
仏のチュウさんと言われつけている彼も、いつになく厳しい表情だった。
彼は答えるように、と無言でサンライズにうながす、彼はしかたなくこう答えた。
「完全ではありませんが、彼の意識をスキャンしました」
支部長も横から補足する。
「『コーダ』の意識スキャンは不可能に近いらしい。完全に目くらましの方法を使える。しかし、彼女のダンナさんは、どうやら一般の方だ。ずっと彼女をかばってはいたようだが、心にまで嘘はつけないからね」
「支部長、」ナカガワは矛先を支部長に向けたようだ。
「本当なんでしょうね」
土下座したままのサンライズを、指さしてそれだけ聞いた。
「うむ」
ナカガワ、またサンライズの方を向いた。サンライズは顔をあげて、ナカガワをみた。
「お願いします」今度はナカガワに頭を下げようとした。すると
「やめろ」
低く制された。
「ムラカミ・トシエの保護は、オマエ一人の責任で行うように。本部技術部は知らん」
「……わかりました」
「それと」
ナカガワの目の中にあるのは、畏れの色なのか。それともさげすみか。
「オレの心を、読もうとするなよ。絶対」
彼は足音荒く、その場を去っていった。支部長が一足遅れて
「すまない」
そう言い残し、後に続いた。




