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05


 赤坂の容疑者は、のらりくらりと供述を変えているらしい。

 すでに身柄拘束から五日が過ぎていた。


 本部の技術部長ナカガワが東日本支部長を訪ねてきたのは、ちょうどそんな折だった。


 容疑者の男は住所不定無職、複数の名前で免許証を保有しているような人間だったが、それでも海老名に行ったにしては少しばかり、前後の行動がつながらないということだった。


 警視庁は、今度はその男までMIROCに押し付けようとしているようだ。

 まずはMIROC本部長のカチハラが上から目線の警視総監より直接その命令を受け、憮然とした表情のまま本部に戻り、今度は本部技術部長のナカガワを呼びつけ、

「どうにかしろ」

 と伝えたらしい。


「MIROC東日本支部の特務が岸町の容疑者を見張っているが、そちらはさっさと引き上げて赤坂の男を先に尋問しろ」

 という命令らしかった。


 もともと、東日本支部には何かと恨みのあるナカガワは、まっすぐに支部長室に入っていった。

 だが、すぐに中尊寺支部長から

「話は屋上で聞こう」

 と誘われ、むっとした顔でまた連れだって上へとあがる。


「今、特務の責任者を呼んだから」

 中尊寺が言うと、ナカガワは柵に寄りかかり、腕組みをしたままその後はしばらく黙りこんだままで屋上への出入り口ドアを睨みつけていた。


 サンライズ、屋上に来い、と言われてまず、高校時代の怖い先輩を思い出していた。

 非常階段を重い足取りで上り曇天の元に出ると、柵の前に支部長と本部技術部長が並んでいた。


 ナカガワ本部技術部長はいつも渋面で、目つきがきつい。

 中尊寺支部長が『仏のチュウさん』と呼ばれている反面、この男は常に機嫌が悪そうだ。

 二人で立っていると、支部長よりも技術部長の方がだんぜん、格上に見えてしまうくらい、とにかく、偉そうだった。

 以前、ナカガワと支部の総務主任・春日ヒロミツとが、本部支部間の軋轢をきっかけとして、個人的にひと悶着起こしていた。

 春日と仲が良かったサンライズもそのとばっちりを受けて少しばかり顔を覚えられていたから、よけいに睨まれているような気もしていた。

 こんな時以外でもできれば会いたくない相手だった。


 それでもサンライズ、ごくりとつばを呑んでまっすぐ彼の前に立った。


 どうしてもこれだけは悔いのなとようにしておきたい。

 支部長たちを見るや否や、彼らの前にがばっとひれ伏す。


「お願いします!」

 土下座したまま、ようやく口に出した。

「『コーダ』いや、ムラカミ・トシエを保護させてください、今すぐ」


 何をバカな、とナカガワ。

 すでにカンカンなのか顔が真っ赤に変わった。

「『コーダ』はちゃんとマークされてるんだ、そいつをなんとかするのが先だ。オマエは何を言ってる」

「赤坂のアレは、『コーダ』ではありません」

「ヤツは海老名の時にアリバイがなかった。村上淑恵には、あっただろう」

「ダンナが、嘘をついたんです」

「なぜ判る」

「それは……」


 支部長が、おだやかに横から口をはさむ。

「彼は、シェイカーなんだよ」

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