03
「桑原は、護身用ナイフを持っていたようです。発見時にはありませんでしたが」
「どうして分かった」
「犯人に向かっていったらしくて、ごく微量ですが、彼女のとは別の血液反応が出ました。あと、右手親指付け根の内側に刃物が当たって軽く切れた痕が。秘書にも確認したら、持っていたかもしれない、と。日頃から敵が多いという話をしていたようです、本人は冗談交じりだったようですがね」
「その血液反応、人物が特定できそうか?」
「どうでしょう……本当にわずかでして。地面に落ちた分、土ごとさらった痕跡があって、かなり難しいのでは」
サンライズは霧雨に煙るかなたをじっと見やっていた。
「リーダー、どうします? 赤坂に行く?」
ボビーが近寄ってきて、聞いた。
「あちらはとりあえず警察が見張っているって」
「ケガしている、とかいう話はあったか?」
ボビーはナイフのことを聞かされてなかったので、少し面喰っていたがすぐ応える。
「特には聞いてないけど」
「ならいい」
サンライズ、覚悟をきめたように息を吸い込む。
「今から、トシエのダンナに会いに行こう」
「え?」
ボビーはびっくりして叫んだ。
「ダンナって、仕事先に?」
「そう、代々木だったよな、確か」
ボビーは納得できない顔をしていたもののすぐ、電話番号を出してきた。
かけてみてしばらく話をしていたが、すぐに礼を言って電話を切った。
「どうした」
「彼、今日休んでるって」




