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被害者は、超党派議員の会『誠心の民』代表、桑原このは。
元々は保守派だが、脱原発を訴える団体としては全国でも最大の規模をもつ会の代表を務めていた。
桑原は、以前別れた亭主の名を語る誰かに呼びだされ、サービスエリアで頭を撃ち抜かれた。
至近距離だったらしい。
そしてすぐそばに落ちていたのは、あのカード。
今朝になって、先生が事務所にいらっしゃらないんですが、という秘書の一報から、事件が判明した。
サンライズは、走って同じフロアにある自分のデスクに戻った。
ムラカミ・トシエの仕業なのか、まだ判断がつかない。
どこでどうやってターゲットを知るのか、移動は? 武器は? 不明な点が多すぎる。
金曜日に、会ったばかりなのに。
しかし、一つだけ強く思う。
トシエがもし、『コーダ』ならば、これ以上、殺させてはならない。
「ボビー、」
デスクにいたボビーもすでに、支度ができていた。
「どこへ行きます?」
「まず、海老名だ」
現場は、霧雨だった。
サービスエリアのはずれ、ガソリンスタンド側のトイレ裏手、少し外れた草むらに桑原は倒れていたということで、すぐに現場に案内された。
しっとりと濡れた草があちこち踏み荒らされ、黒い土がのぞいていた。
現場検証は一通り済んだらしく、黄色い立ち入り禁止テープの中は、すでに数人しか残っていなかった。
「アオキさん、ですよね。MIROCの」
所轄の担当らしい男が、サンライズ達を待っていてくれたらしく、すぐ気がついてそばに寄ってきて軽く頭を下げた。
手にプラの小さい袋をぶら下げている。
「カードは、置いときました。指紋は出ていません」
やはり、コーダマークと悪魔のイラスト。
以前、資料の中で見た物と寸分たがわない。被害者の頭のすぐ脇に落ちていたとかで、紙の端が赤く湿っていた。
ボビーが持っていた通信機が、赤く点滅した。
「リーダー」
ボビー、少し話を聞いてから送話口をふさいで彼に告げた。
「『コーダ』の身柄を確保、赤坂から」
「彼女が捕まったのか?」
「いえ……捕まったのは、もう一人の容疑者のほうです、って」
ボビーは通信機をもう一度耳にあて、何か聞いている。
その間に、サンライズは所轄の警官と現場を一通り確認した。
建物の陰になり、しかもサービスエリアの従業員もほとんど立ち入らない場所だった。
草刈りが最近済んだばかりで、次の清掃は約一ヶ月後に予定されていたらしい。
計画的に選ばれた場所だ。
彼女が暗殺者だったとしても、ここを選ぶヒマがあったのだろうか?
フルーツパーラーのピンクと、ここの墨で描いた風景画のようなたたずまいが、どうしても結びつかない。
本当に、彼女の仕業なのだろうか?
それともやはり赤坂で捕まったヤツが犯人なのか。
「おかしなことがあって……」
こちらを向いた警官が声をひそめた。




