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翌週明け、サンライズはまず作戦課をたずねて、村上家の電話に無事、発着信探知器がつけられたことを確認する。
外線電話を外から故障させてNTTに連絡させるといういつもの手で、NTTに化けたスタッフ二人を家に入れて、モニタの準備を済ませていた。
「ダンナが、疑われてるんですか? 何か」
現地に入ったスタッフがいぶかしげに訊ねた。
見た目がその筋の人みたい、ガタイがよくて髪が短く、てっぺんが尖ってました、というよく分からない報告だった。
寝起きなのかかなり不機嫌そうだったが、奥さんは向こうの部屋から、時々顔だけのぞかせてペラペラとよくしゃべっていたのだと。
電話のことは、シヴァにまかせることにした。
彼は今朝早くから作戦課の隅っこに机を借りて、電話のモニタを始めていた。
『修理』の済んだた電話で、彼女はさっそくサークルの友人に電話をかけていた。
ちょっと風邪っぽいので次回は休むと言っていたそうだ。
その割には元気そうだったけどね、とシヴァ。
かかってきたのは二件。怪しいものは今のところない、と。
そこまで確認していたら、パーテーションの向こうからキサラギが来た。
「てめぇ、キ~サ~ラ~ギィ」
キサラギは防衛本能はちゃんと働いているらしく、サンライズの姿をみて反射的に横に飛んだ。
「な、なんっすか」
「あの資料、ヌケだらけじゃねえかよぉ」
作戦課の連中は、特務のリーダーに追い回されているキサラギを楽しげに見守っていた。
シヴァも、作業の手をとめてうれしそうに追いかけっこを見物している。
「え、どこ、どこがですか」
「全てだよ、端からハシまで。オマエ、二ヶ月間、何調べてたんだよ」
そこに救いの手あらわる。
「サンちゃん、電話。5番」
キサラギはすんでのところで命びろいした。
「ちぇ、」
はあはあしながら、サンライズは電話をとる。
「お電話、替わりました」
しばらく無言で聞いていたが、
「すぐ行きます」
電話を切った時には、すっかりキサラギへの敵意は消えていた。
「シヴァ、」
呼ばれてすぐ、シヴァは顔をあげる。
「モニタはいつから、記録がある?」
「土曜の午前11時02分から」
故障動作をしかけたのは金曜夜8時過ぎとの記録が残されている。
サンライズが彼女と別れたのは、その日の午後3時半近く。
「どうしたの、リーダー」
「海老名サービスエリアで、一人撃たれた」
周りの動きがとまった。
「いつ」
「金曜の夜遅く、死亡推定時刻は真夜中だと」




