第十一話
織田上総介信長。
彼は幼少の頃からうつけ者と呼ばれていた。
奇妙な行動が多かったのだ。
百姓の子供と相撲をとったり、他の家の柿を盗ったり。
とても猛将と名を轟かせた織田信秀の息子とは思えない子だった。
その行いは成長しても収まる事を知らず、父親である信秀の葬式でも問題を起こし、お世話役であった平手政秀の死によってようやく落ち着いたという。
秀政はその人物に会うべくやって来た。
白の死装束を着て、清洲城の広間で織田家の家臣たちが両脇に並ぶ中、当主の信長を待っている。
今回に限っては、葵と茜に護衛を付けて城下の宿に泊まらせている。
三十人連れて来た兵の内5人をそちらに割き、残りは一緒に登城した。
彼らは一つ前の間に待機している。
秀政はぼんやりと、よくこんな格好をしている俺を美濃からの正式な使者であると信じてくれたものだな。と考えつつ両脇の男たちを観察する。
上座の方に居るあの筋骨隆々の大男はおそらくだが、柴田勝家。
尾張の兵は天下一弱いというが、柴田勝家は剛の者と聞く。
他には……特に目立つ風格の者はいない。
あ、一人気になる男がいた。
穏やかな笑みを浮かべているが、あれは武芸者。
小豆坂七本槍に数えられる佐々政次だろう。
笑みの中に棘がある。
などと見ていたら男たちが一斉に低頭した。
一瞬遅れたものの秀政も頭を下げる。
「表を上げい。この俺が織田上総介信長である。貴様の名を申せ」
地を揺るがすような迫力の声音に秀政は小さく唸った。
これはどうやら本物か!
道三の目は曇ってはいないらしい。
そして、ゆっくりと顔を上げ、視線を合わせる。
「斎藤家家臣瀬名秀政にございます」
「であるか。して、何の用だ」
信長はつまらなそうに頬杖をつき、正室である濃姫に「ちゃんとしてください」と言われ、ぺちん。とはたかれている。
その様子に笑みを溢しそうになりながらも、引き締まった表情を作る。
「率直に申し上げますと、美濃はお譲りできませぬ」
秀政の短く要所だけを含んだ返事に信長は眉をピクリと動かす。
「しかしな。蝮はこの俺に譲ると書きおったぞ」
「道三様は美濃の一部を譲るとお書きになったのですか?」
「なに?」
「道三様が美濃の国を譲ると書かれたのならば、今はまだそれはなりませぬ。
長井道利が叛旗を翻し、美濃は割れております。
そのような状態の美濃を譲るなど道三様に顔向けができませぬ。
それに道三様の言われた美濃とはかつてご自分でお治めになった地域。今、お渡しできるのは半分ほど。
それでは、遺言に背く事になりましょう。
ゆえに我らが美濃を統一した後、美濃を上総介様にお譲り致しましょう」
そう言うと、ふんと鼻を鳴らして秀政を見つめる。
「貴様の言いたい事はわかった。だが、それには及ばん。今のままでよこせ。この俺が残りを獲ろう」
秀政は考えた。
ここはどう返すが正解か
既に屁理屈を並べている。
これに重ねるのは良くないと踏んだ。
ならば、実利の話をしよう。
「そうなされたとして、上総介様は我々が美濃を手中に収めるよりもはるかに時間をかける事になるでしょう」
「なんだと?」
「もし、上総介様が美濃を直々に攻めたとしましょう。その場合、おそらく今川が動くと見ます。
上総介様は美濃の長井道利と今川を同時に相手にせねばなりますまい。
しかし、美濃を我々にお任せになれば今川だけに専念できましょう。
我々としても、身内が上総介様に迷惑をかけるのは良しとは致しませぬ。可能ならば、こちらで処理したいのです。
それにそうなさった方が天下にはより早く辿り着けるかと」
秀政は信長の表情を伺う。
目を閉じて、何かを考えている。
そしてカッと開くと笑いだした。
「天下か…………フハハハハ!わかった!
よかろう!
貴様のその話乗ったぞ!
面白い。もう一度名乗れ。貴様の名覚えておこう」
「瀬名秀政にございます」
「瀬名秀政。で、貴様はなぜそのような格好をしておる」
秀政の死装束に目を向けて信長は訊ねる。
「もし、上総介様が我々を信用せず、詭弁だと申し、激した挙句私を手討ちになさるのならこの格好の方が良いかと思いまして」
「中々に気の利く奴よ。面白い。貴様、着替えはあるか」
「供に持たせております」
「ならば、着替えて来い。死装束を視界におくのは気分が悪い」
「では、お言葉通りに」
一度退室して、素早く湯帷子に着替える。
再び広間に入ると、信長は居らず、濃姫が一番上に座っていた。
「上総介様は少し席を外しています」
濃姫は秀政に視線を向ける。
周りの織田家家臣と対象的に笑みを見せてだ。
秀政は小さく首肯した。
「それにしても、あなたは変わりましたね」
濃姫がゆっくりと秀政のところに歩いてくる。
「姫様は変わらずお綺麗で」
秀政は濃姫と視線を合わせず、頭を下げる。
道三の娘である濃姫は秀政を知っているし、道三の愛弟子だった秀政も濃姫とは幾度も会っている。
「顔を上げなさい、秀政」
濃姫の手が秀政の頬に添えられる。
「父は悔いなく逝けたの?」
「はい。それなのですが、上総介様に遺言を預かっております」
「遺言を?」
濃姫は秀政から離れ信長を呼びに行った。
ほどなくして現れた信長は腰から瓢箪をぶら下げ、左肩を露出させた小袖姿だった。
「蝮からの遺言か。聞こうではないか」
なるほど。
うつけ者と呼ばれるわけだ。
あんな格好をしていては仕方ない。
俺も似たようなものだが。
「『我が夢、尾張の息子に託そう。
あぁ、良きかな。
我が生涯の最期に婿殿に会い、死後の光が見えたわ。
わしは先に逝き、信秀殿と酒を飲み交わそう。
息子よ、天より二人の父が見ておるぞ。
その手に天下を抱いてみせよ』
との事です」
信長はしばらく顎に手を当てて思案する様子を見せ、秀政を見た。
「天下か……道三め。言いおる。
瀬名秀政、この俺が天下を取れると思うか」
ニヤッと笑って問いかけた。
あぁ、試されているな。
ここでの返答次第で評価は大きく変わろう。
全く緊張が解ける事がない。
緊張のあまり一人称を私としてしまった。
いや、これはこういう場ではこっちの方が正しいのか
「無理でしょう」
「ほぅ。なぜだ」
「隣国に今川を持ち、内にも不安をお持ちになる。
今の尾張に今川に勝つ力はない。
しかし、万が一にも上総介様が今川を破るとなれば、一気に天下は上総介様の手の中に転がり込みましょう」
そう言うと、秀政はスッと少しだけ前に出た。
「今川を破るか」
信長は笑みのまま秀政を見つめている。
「口で言うのは容易けれど行動は難儀。しかし、私には一計がございます」
ん?と信長は疑問を抱く。
「一計とな。だが、斎藤家は今川と結んでいたのではないか」
そう。今川と斎藤は同盟を結んだ。
それを行ったのは瀬名秀政。
今ここにいる若造だ。
「確かに。今川との同盟は私が結びました。同盟を破棄するのは義に反しましょう。
ですが、美濃斎藤家は道三様の国譲り状により、織田家の臣も同然。
ならば、今川よりも主家たる織田家を助けるのは必然。
かつての同盟を守るよりも今の主君を救う事こそ義でしょう」
「蝮の弟子が義を語るか。義など親の中の忘れてきた男の弟子が」
「道三様は我が師なれど、私は私の道を歩む者。義は持ち合わせております。
しかし、そのお言葉は道三様を義父とする上総介様は義を持っておられないかのように聞こえます」
「ふん。忠義などはこの俺に不要な物よ。
俺は誰にも従わん。
なぜならば、この俺こそが覇者となるからだ。
頂点に座する俺は忠誠を誓われこそすれど、忠誠を俺自らが誓う事はない」
秀政は小さく、ほぅと感嘆の声を漏らした。
病は気からとは違うが、天下を語るならばそれを実現するかもしれないと思わせる態度や言動が求められる。
信長は絶対の自信を見せた。
これには参った。
これはとても敵う相手ではない。
無駄に対抗心を燃やしたが、意味がなかった。
話に聞くのと実際目にするのではこうも違うか。
道三がこの男に美濃を譲りたくのもわかる。
秘めている可能性が未知数なのだ。
彼が作る世界がどのような物になるのかそれを見てみたい気持ちはある。
「なるほど。天下人になるにふさわしい物言い。
この瀬名秀政、感服致しました。
一つ述べさせていただくつもりでしたが、私のような未熟者の策など無用でしょう」
だが、俺の理想は変わらない。
「では、私はこれにて」
一度頭を下げて退室しようとしたら信長が秀政を引き止めた。
「貴様、気に入ったぞ。今宵、俺の屋敷に来い。酒宴を開こう」
「お言葉に甘えさせていただきましょう」
一度身支度を整えてから再度伺うと伝えて一旦退室する。
ふぅ、と一息つき伸びをする。
さてさて、どうするか。
酒宴とな。まぁ、とりあえずは宿に戻るか。
秀政は供の連中を引き連れて城を出る。
「殿、あんな事言っていいんですかい?」
供の一人が訊ねた。
「あんな事とは?」
秀政はあえて聞き返す。
「美濃を譲るなんて嘘でしょう」
その疑問を持つのは当然だろう。
なにせ俺は美濃は譲らないと言えと言われて来ているのだから。
「何を言うか。俺は嘘なんて言わん。
美濃は上総介様に譲る。
問題は利治をどう説き伏せるか。あいつは頑固だから反対するだろう。
そこをなんとしてでも説くのが俺の役目。
道三様の遺志は必ず叶える」
兵たちの肩を軽く叩く。
「お前らの協力を頼りにしてるぞ」
そう言った秀政は視界の隅に動く影を捉えた。
ようやく剥がれたか
全くうつけであったらいいものを。
真逆だとは。
俺が言った事の真偽なぞ見破っているのだろう。
知った上で俺の話に乗り、俺の事を警戒する意志をわざと見せた。
何を目論むんでいるかは謎だが、変わった人だ。
あのような人物とは敵になりたくはないものだ。
あの人物の下で働くのも一興だ。
「お前ら、俺に護衛はいらん。明日の朝、宿に戻っていればいい。自由に遊んで来い」
兵の一人に金の入った袋を投げ渡し、手で追い払う。
兵たちは袋の中を見て奇妙な雄叫びを上げながら、一礼してから町の雑踏に紛れていく。
「さてと。俺は宿にいくか」
信長との酒宴だ。
どうせならあの二人も連れて行ってやろう。
葵は姫様と知り合いのはずだし、顔も見たいだろう。
清洲城下で一番立派な宿に泊まったのは俺の気分と見栄だったが、まぁやはり気分はいい。
完全に遊び人の風貌の青年が入っていくのを見て、町人たちが囁く。
あれは何者?と。
それがまた心地よい。
宿の人間に夕餉は要らんと伝えてから、秀政は葵と茜の部屋の襖をガラッと開ける。
どこから持ってきたのか。
葵が茜に書を教えていた。
二人が揃って顔を上げ、襖に手をかけたまま硬直している秀政を見た。
「その硯と筆は?」
まずは二人が使っている道具についてだ。
見たところ中々に良い品だが、どこから持ってきた。
盗んだとかは……ないか。
「宿の者に貸して頂きました」
小さく安堵。
「そうか。で、なぜに字なんぞ教えてる」
「茜が覚えたいと言うもので」
むぅ、と唸る。
字をか。
「なぜ字を覚えたい」
秀政は目を細めて茜を見る。
「…………秀政の役に立ちたい」
茜は恥ずかしそうにボソボソと言う。
秀政は頭を掻きながら困惑した様子を見せつつ、微妙な表情を見せる。
「……竹中半兵衛に触発されたか」
秀政が安藤伊賀守の所に居た際に伊賀守の屋敷に居た少年。
聡明な頭脳を持ち、年端もいかない癖に膨大な量の書物を読む将来が恐ろしい化物だったが、なぜか茜とは意気投合していた。
というか、姉弟のようだった。
必要であったとはいえ、茜を伊賀守の所に呼びつけたのは失敗だったか。
「半兵衛は幼くして父の片腕ですから。茜が憧れるのも無理はないでしょう」
「時期を見て色々と教えるつもりではあったけど、まさか自分から言い出すとはね」
学を欲する女子ね。
世間では批判されるのだろうな。
俺はしないが。
実際、葵は書物が好きで男顔前の知恵者だ。
今は俺のする事に一切口を出さずに見守っているが、本当は色々と言いたい事はあるのだろう。
「まぁ、いい。なら、美濃に戻ったら国親に教わるといい。あいつは教えるのがうまい」
そう言い捨てて秀政は壁に寄りかかって座る。
刀を抱いて、天井を見つめる。
「お前らは誰が天下人になると思う」
視線を動かさずに秀政は訊ねる。
「三好か今川では?相模の北条は都に遠すぎますし、武田は長尾景虎と争っていて、上洛はならないでしょうし」
葵の答えには秀政も大半は同意見だが、少しばかり異なる。
「茜は?」
「え、えっと…………」
なんて言えば良いのかわからないようで、困惑した表情を秀政に向けた。
「ははは、天下の情勢を知らないか。良い機会だ。覚えておくと良い。
南から大国を挙げていこう。
薩摩の島津家、豊前豊後の大友、肥前の龍造寺。
この三家は京から遠すぎる。
天下の争いには入ってこないだろう。
次に安芸の毛利、出雲の尼子。
毛利家は強大であった大内家を滅ぼし、勢い付き尼子攻略を始めている。
山陰山陽が毛利のものになるのはそう遠くない。
そうなると、毛利は主権争いに絡んでくるだろうな。
畿内には、三好長慶。
天下を半分手に入れた人物だ。
畿内をほぼ手中にいれ、四国も勢力下の入れている。
これに並べるのは相模の北条くらいだろう。
そして、東海、甲信。
二強と言うべきか。
甲斐の武田。駿河の今川。
この二つが圧倒的な力を持っている。
今川も武田も個々では三好には及ばないが、厄介な事に今川、武田、北条と同盟を結び協力関係を保っている。
北条は関東から出てこないとしても、今川、武田が並ぶとなると天下に敵はない。
最も、それはならない。
越後の長尾景虎が甲斐の武田信玄と小競り合いを繰り返すからだ。
双方、共に軍神の域に達した男の軍だけあって凄まじいらしい。
そして、小大名として尾張の織田に美濃の斎藤があるな。
美濃はまとまっていれば、今川ほどではないが、天下を狙える。
しかし、今の状況では無理だ。
あとは相模の北条。
関東の大半を支配下に置き、巨大な勢力を誇る。
奥州は小国が列挙していて、気にする必要はない」
そこまで言って秀政は茜がついてこれていない事に気づいた。
頭から煙を出している。
「ははは、いきなりたくさんは無理か。そうだなぁ。
俺らの近くの勢力では今川と武田が群を抜いて強力だった事を覚えておけば良い」
まぁ、その勢力図はすぐに塗り変わるだろうけど。
「あ、そうだ。葵と茜、二人でも外出る支度をして。今から信長の屋敷で酒宴だ」
危ない危ない。
忘れる所だったよ。
「ほぅ、両手に花を咲かせてきたか」
屋敷に呼んだ信長は秀政を見て、ニィっと笑ってそう言った。
「酒の前に一つ話だ」
信長はドンと畳が揺れるほど強く片足を前に出しそこに肘を乗っけて、身を乗り出す。
「瀬名秀政、この俺に仕えないか」
…………え?
今、勧誘されたのか?
織田信長に仕えろとそう言ったのか
「上総介様。だから言ったでしょう。いきなりでは秀政も困りますよ、と」
「むぅ。そうか。お濃の言う通りだな」
「上総介様は話を飛ばし過ぎなのです」
濃姫は秀政にニコッと微笑みかける。
「秀政、尾張をどう思いますか?」
さっきの信長の言葉が生んだ混乱に未だ流されながらも、秀政は何とか返事を考える。
「兵は弱く、石高も低けれど、商業地が多く金には困らない良い場所だと思いますが」
濃姫は返答に一回首を傾げ、それからポンと手を打った。
「言葉がたりませんでした。尾張の将たちをどう思いましたか?」
これには言葉を選ばざるを得ない。
他国の人間に聞く内容ではないだろう。
いや、他国だからこそ聞くのか
「遠慮はいりませんよ」
「では。正直に申しますと人材不足かと。柴田殿や佐々殿のような大器がほとんどおられません」
「そうよ!だから、俺は優秀な奴が欲しい!」
信長は立ち上がり、身振りを織り交ぜて語り出す。
「道三の教えを受け、あのような場で俺に義がないと言う度胸!それに一計。あえて言わずにしおったな。この俺の興味を引いておくためにか」
全く。
こちらの考えを知った上で乗ってくれるんだからありがたい事で。
「確かに。それもありますが。策はあのような場で申すべきものではないのです」
「ほぅ。では、今申して見よ」
「まぁ、まずは先に返事といきましょう。
今の私は斎藤家家臣。
主家を裏切るなどできませぬ」
秀政は薄く笑みを作る。
「それでは。一計とは今川に勝つ策。
まずは今川に上洛のための大軍を起こさせます。
今川の領地から京へ行くには必ず尾張を通りましょう。
当然、上総介様は迎え撃つでしょう。
しかし、籠城は今川の大軍相手に意味なく、野戦など下策と評定で皆が申しましょう。
ならば、取る策は一つ。
奇策。
敵の先鋒は必ず三河勢。
松平元康。
彼は今川を裏切り独立する機会を狙っています。
既に話はつけてあります。
彼はこちらに協力すると。
松平に今川義元の本陣の位置をうまく奇襲しやすい位置まで持ってこさせ、周囲を松平の忍びに警戒させる。
そして、私は美濃からの援軍として今川軍の中に入りましょう。
準備が整ったのなら、上総介様は兵を引き連れ、奇襲をおかけください。
尾張兵の目撃情報は忍びにすべて握りつぶさせ、私は美濃兵と共に義元本陣と他部隊との間に入り、援軍には行かせぬようにいたしましょう。
その間に上総介様は義元を討ち取ってくだされ。
これが私の策にございます」
信長はしばらく黙り込んだ。
それは待っている秀政がこれは駄目だったかと怯えるほどに。
濃姫も珍しく黙る婿に戸惑い、顔色を伺っている。
「瀬名秀政」
落ち着いた調子でただ名が呼ばれる。
「はい」
「これが本当になると思うてか」
信長の問いに秀政は笑みを作る。
「成功の自信がなければ策とは言いませぬ」
この返事に信長は声を上げて笑った。
「殿?」
と、濃姫が本当に壊れたんではないかと心配して小さく訊ねた。
「瀬名秀政!面白い!面白いぞ!いいだろう。その案に乗ろうではないか!」