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第零話:窓辺の少女

この作品には死を題材としております。

苦手な方、嫌悪感を抱く方は気分を害さないうちにブラウザバッグしてください。

――残り三日と四時間。

残りの儚い余生をどう過ごしたい?


それが窓ガラスをすり抜け現れた透き通る様な銀髪に翡翆色の眼を持ち、白装束を纏った可憐な少女の第一声だった。

 何時もの様に部活で目覚ましい結果を残せぬ疲労感あふれる体を癒すためにただベッドに寝そべっていた“明石ツバサ”はその声により窓側に眼を凝らす。

 幻覚と幻聴だろうか? 

やはり自分は疲れているのだろう。

そう思い視線を窓辺の少女から水着姿の可愛いアイドルが印刷されているカレンダーの貼られている方向へ反らす。

「なんで無視するのかな? 高校二年生。部活は卓球部で、同学年から一度も勝てない程弱い。そのくせ好きな娘は隣のクラスにいる四組随一の美少女の高岡晴香。そしてそんな彼女に卒業式の日に告白してみたい明石ツバサ君?」

息を飲んだ。

学年と名前ぐらいなら調べたら直ぐにわかるが、高岡さんが好きだなんて誰にも言った事は無いし、いつ告白するかなんて誰にも知られる筈なんて無い。

ツバサは恐る恐る情報元を少女に聞いて見る事にした。

「何処からそんな情報収集したんですか?」

目線が合い、少女の瞳を覗くとやはり翡翆色の眼は自分の知ってる限りは日本人ではあり得ない。

一瞬の静寂

一瞬の沈黙

崩したのは少女の笑い声だった。

そして少女はエヘヘと笑い、軽い冗談でも言うが如くあっさりと

「それは私が死神だからだよ」

と笑顔で奇怪な答えを返した。

その言葉はツバサの頭をメルトダウンに近いものに変え、脳内の血の巡りを鈍らせるには十二分過ぎる。

「え、えーと」

ツバサは言葉を濁す。

「なぁに? 彼女はおろか女友達いない歴=自分の寿命の明石ツバサ君。質問でもあるの?」

まだ状況判断が出来ないながらも、一つだけ少女は無礼なやつだと思い

「どこまで失礼なやつなんだ」

と呟いた。

そして“女友達ぐらい沢山居る”と怒鳴ろうとした、寸前、携帯から軽快な音が流れる。

「うわぁーガンダム……退くわぁ。女友達居ないでしょ?」

「うるさい」

からかい目線で見つめる少女を軽くあしらいツバサは携帯電話に手を伸ばし電話に出た。

「もしもし。あぁリョウか? なんだ。声が聞きたかっただ? ふざけるな。こっちは忙しいんだ。じゃあな」

一方的過ぎる電話を強制終了した後、少女と目が合う。

「やっぱり一生女と無縁だな」

唐突に指を差しながら通話直後の呆れ顔のツバサを嘲る。

「これは悪夢だ。……だから寝る」

言うが早いかツバサは目を合せない様に布団で自身の身を覆った。

「制服だが良いのか?」

とか

「勉強しなくても良いのか?」

としきりに少女は聞いてくるが気にはしない。


まぶたを閉じると声が徐々に途絶え、頭の中が段々とぼやけてくる。

これでいいんだ。

目覚めた時には眼中の少女は失せ、柔らかい陽射しと平穏が待っている……はずだ。


ともかく明日の平穏を祈った。

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