ようこそ 地獄庁へ!
目を覚ました瞬間、真っ白な天井が目に飛び込んできた
ああ、これは夢だ
だって...最後に見たのは、ワインに溶けた
あの濁った毒の色だったから
「お目覚めですね!
エルノア・ラ=メルフィー様」
無機質な声に顔を向けると、視界に割り込んできたのは
――骨
いや、冗談とかではなく骨なのだ
いや.....もっと正確に言うなら、黒いスーツに身を包んだ頭蓋骨....
ネクタイまで、妙にきっちり締めている気がする...
「本日からあなたには、“地獄庁・死神課”にてご勤務いただきます」
……は?
言葉の意味を理解する前に、私はゆっくりと上半身を起こした
簡素な部屋で壁は灰色、窓もない
ひんやりと湿った空気が肌を撫でる
病室のようで、何かが決定的に違う気がする
「あなたは正式に死亡が確認されました
ただし、天国に行くには功徳が足りず....
かといって地獄に堕ちるほどの悪人でもない....
なので!労働によって徳を積んでいただくこととなりました。おめでとうございます!!」
「……え、私は死んでて、
しかも今から働けって言われてるの?」
「はい。初任給は〝ゼロ〟です!
まぁ、死んでますからね笑」
その即答に思わず黙り込む
素足のまま冷たい石畳に降りると、肌に伝う感触が生々しい....
身にまとっているドレスは、あの晩のまま
毒を盛られた夜、宴の席で着ていたものだ
「あなたの配属先は“死神課”です。魂の回収、浄化、地上派遣業務などを担っていただきます!」
「……労災は?」
「ありませんよ?
事故死の場合は転生か、最悪..消滅ですね!」
「え、ふざけてるの?」
「地獄庁は常に真剣です!!ブラックですが....」
冗談みたいなやり取りの中、私の脳内だけがやけに静かだった...
使用人の不自然な態度、冷たい婚約者の視線そして
最後の晩餐に感じた、あの不自然な苦味
間違いない....私は誰かに殺されたのだ
しかも計画された毒殺
「あのさ、ひとつ聞かせて?」
「なんでしょうか?」
「“地上派遣”って、具体的には何をするの?」
「未練のある魂を導くために地上に行き、死の瞬間に立ち会っていただきます!
誰であろうと、もちろん例外はありません!」
その言葉に、口元が自然と笑みを浮かべる
「いいわね...!じゃあ、私……」
もう一度、会いに行くわ
あの夜、私を殺した誰かさんに
この目で、“最期”を見届けるために
骨の案内人が手にしていた黒い紙束を、私の前に差し出した
燃えるような赤い文字が中央に、こう書かれていた。
『労働契約書:地獄庁死神課』
私は、躊躇なくペンを取った
毒殺された伯爵令嬢、エルノア・ラ=メルフィー
新たな職場はー
地獄庁、死神課




