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キッズ電話相談

作者: 山谷麻也

挿絵(By みてみん)


◇恐竜と怪獣


 子どもは時に、親の不勉強を(あぶ)りだしてしまう。何か()かれると、ヒヤヒヤものである。

 幸か不幸か、筆者の子どもたちはいろいろなことを質問してきた覚えがある。

 公共放送で恐竜の科学番組を放映していた。飲みながら視聴するには、ちょいとハイレベルだった。


「お父さん、恐竜と怪獣はどう違うの」

 三女が素朴な疑問をぶつけてきた。

 酔って、頭はフル回転しなくなっている。かといって、父親の沽券(こけん)にかかわる事態である。


「原始人と戦うのが恐竜で、ウルトラマンと戦うのが怪獣じゃないかな」

 取り敢えず答えて、二の矢に備えた。

「面白い。座布団、三枚!」

 と質問者。なんのことない、相手が上を行っていた。


 ◇発芽


 その娘はクリエーターになった。

 高校には行かなかった。正確には、御茶ノ水にある高等専修学校に進み、芸術関係の大学に行った。


 高校生の姉がデザイン専門学校の体験入学に参加し、同行したことがあった。デザイン実習の模擬授業が準備されていた。

「君、ぜひウチに来てよ」

 声をかけられたのは、中学生の三女だった。


 中学生の娘が、筆者が鍼灸専門学校で使っていた解剖学の教科書を、よく読んでいた。

「骨格が分かってないと人が描けないから」

 というのが理由だった。

 その頃から、骨格の勉強をしていたのである。


 ◇後世おそるべし


 これで終ると、親バカもいいところである。これからが本題だ。

 筆者は目の障害が進み、ラジオが手放せなくなった。よく聴くのはニュースのほか、公共放送の子ども電話相談である。


 電話してくる子どもたちは面白い。よくぞ気が付いた、と感心するような質問のオンパレードだ。恐竜と怪獣の違いを訊かれ、一瞬ながら冷や汗をかいた過去があるだけに、解答者の心労は察してあまりある。


 小学生らしく「✕✕小学校何年何組です」などと、しおらしく自己紹介する子もいる。それも個性だろう。

 いざ質問はといえば、目のつけどころに笑ってしまうもの、観察眼にうなってしまうもの等々、まことに多士ならぬ多()済々である。

「この子は大変な研究者になるのでは」

「この子はアイディアマンになるのでは」

 などと、行く末に期待を膨らませる。


 ◇子どもは羅針盤


 ところが、ネットで現在の教育の問題点をレポートした記事に接した。

 高校の無償化など負担軽減の流れが結局は中学教育を歪め、有名私立高校の人気を加熱化させているという内容だった。それらの高校のウリは東大や京大、難関医学部などへの進学者数だというから、何をかいわんやである。時代は動いているのに、旧態依然を絵に描いたようなものだ。


 これでは日本の社会は変わりようがない。

 まずは子どもたちが何に関心を持っているのか、真摯に耳を傾ける必要がある。

 子どもたちの芽を摘む教育は虐待、未来に対する犯罪でしかない。(つの)()めて牛を殺すような人間は、教育行政に携わるべきではない。また、軽々に口出ししてはいけない。

 昔から「負うた子に教えられ」と言われてきた。負うた子こそ、進むべき道が良く見えていることもあるのだ。

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