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葬儀を終えた日の夜、二階の東側の部屋で寝ていた。

私が確か小学校高学年になった頃、家族と同じ部屋に寝るのがなんとなく嫌になった頃からはおじいちゃんの家でも別々に寝るためにこの部屋で寝るようになった。

おじいちゃんの家に来た二日前は布団を運ぶのが面倒だったので襖を隔てた和室二部屋を使い寝たが、翌日から一部屋はは通夜や葬儀にも使われるため私は二階の部屋を使っていた。

一人になりおじいちゃんの事を思い出すと、やっぱりまだ涙が出てくる。

布団を被り、小さな声で泣いていたが、いつの間にか眠っていたみたいで夢を見た。


おじいちゃんの家、今よりもだいぶ視線が低い、お母さんに怒られて泣きながら階段を駆け上がり、この部屋を通り抜けベランダへ出た。

今と同じ季節らしく、ピンク色の花が視界に写った。

大声で泣いている私、これでは隠れて泣いている意味がない。

恐らくこの私は幼くて、隠れていれば泣き声は聞こえず泣いていることがバレないと思っているようだ。

暫くすると隣の部屋から聞いた事のある優しい声がした。

「どうしたの?」

幼い私は顔を上げた、ムトだ、と現実の私は眠りながら思った。

「おかあさんに、おこられた…」

泣きながら答える幼い私。

「そうか、どうしてかな?」

ムトは優しくでも淡々と質問をした。

「あまプリのシール、おへやと、レーゾーコにはったから…」

現実の私は台所の柱とガラス戸に貼ってあるシールを思い出した、冷蔵庫は買い換えてしまったからなくなっていて忘れていたが、そういえば貼った気もする。

「ははは、シールを貼っちゃったんだね、お部屋と冷蔵庫がお洒落になっただろうね。」

ムトは笑いながら言った。

「おじさんだれ?じいじとこのおうちにすんでるの?」

幼い私よ、おじさんと言うには若過ぎる…まぁ20代中後半くらいだから恐らく小学校入学前の子供から見たら親ともそれ程変わらなく見えて、おじさんにもなるかもしれない。

「うーん、どうなんだろう?秘密かな。」

ムトは少し悩んでからそう答えていた。

「ひみつ?ムートみたいだね!おじさんあまプリしってる?」

あまプリ大好き幼女だった私はさっきまでの大泣きが嘘のように突然泣きやみお喋りモードに切り替わった。

「ムートはね、プリンセスたちをたすけてくれるなぞのおとこのこでね、かっこいいの!バーってやっつけちゃってね、かっこいいメガネつけててね、プリンとラブラブなの!」

幼いとはいえ、話があっちこっち飛んでしまっているし、それに"メガネ"じゃなくて"仮面"って言ってくれー、なんかちょっと伝わる雰囲気が違うと思うんだ。

それからも暫く幼い私のお喋りは続き、ムトは幼い私の滅茶苦茶な話にもしっかりと相槌を打ってくれていた。

「そうなんだね、プリンセスとそのムートくんが大好きなんだね。」

「うん、だいすき!」

幼い私の顔は見えないが、きっと目を大きく見開いているのだろうとムトを見ている視界が広くなったような気がして思った。

「君のお名前は?」

ムトが質問もしてきた。

「ムトウ アキラ ごさいです。」

暴走お喋りの時とは違ってちゃんと答えられた幼い私を、心の中で褒めた。

「おじさんはムトだよ、よろしくね。」

「ムートじゃなくてムト?」

「ムートくんはプリンセスを護るんでしょ?おじさんはアキラちゃんを護るムト、ダメかな?」

「ううん、おじさんかっこいいからいいよ!」

こうしてムトはムトになったのか、幼い私のためによくわからない設定まで作ってしまって、申し訳ないです。

その後はムトが質問して私が答える流れが続いた。

「おじいちゃんのことは好き?」

「すき!やさしいし、おかしくれる!」

「お母さんのことは好き?」

「おこってなかったらすき…」

「そうだね、お母さんが怒る時はアキラちゃんがいたずらしたり危ないことした時じゃないかな?」

「おへやかわいくしようとおもって…」

「そっか、でもね、アキラちゃんはかわいいと思うかもしれないけど、お母さんは違うかもしれないよ。」

「あまプリはかわいいよ…」

「アキラちゃんがそう思うならきっと可愛いんだね。でもね、じゃあ、アキラちゃんが好きなあまプリのおもちゃとかに僕がアキラちゃんが知らないもののシールを貼ったらどう思う。」

「……いやぁーっ、ああーん。」

「あ、えっと、今のは例えばだから、本当に貼ったりはしないよ。」

「ほんとに?」

「本当だよ、でも気持ちはわかったかな?おじいちゃんにとって、お家は大事なんじゃないかな?」

「…わかんないけど、わたしはあまプリにしらないシールはられたらないちゃう。じいじもそうかもしれないってこと?」

「僕にもわからないけどね、人間ってそれぞれ違う生き物たんだよ。ちゃんとお話しないとわからないこともあると思う。おじいちゃんとお母さんにごめんなさいして、アキラちゃんが思ってたことをお話してみるといいと思うよ。」

「ごめんなさいする。」

そう言って幼い私は一階に降りていった。

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