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お別れの準備

6月のよく晴れた日、おじいちゃんが亡くなった。

私が学校から帰ってすぐに知らされて、母親に連絡が来たのは私が下校している頃だったらしい。

学校には既に連絡済みで、準備ができ次第おじいちゃんの家に向かう事になっている。明日から数日はお休みだ。

慌ただしく準備をする両親に影響され、私も急いで準備をした。3泊分くらいの着替えを詰め込み、シャワーを浴び、軽く髪を乾かした。

おじいちゃんの家までは車で2時間程、母親の実家だ。運転席には父、助手席に母、その後ろに私で乗り込み、私は少し窓を開けて生乾きの髪を夜風で乾かそうとしていた。

不思議とまだ涙は出てこない。覚悟ができていたのかもしれない。というのも、おじいちゃんは1月末に体調を崩しずっと入院をしていた。詳しい病名などは聞いていないが、元々持病もあったからか医者からもそう長くはないと言われていたと聞いている。

入院したばかりの時はそれほど病人らしくはなく会話もできていたが、最後に会ったゴールデンウィークの時は酸素マスクをつけ、途切れ途切れで少しだけ会話ができる程度まで弱っていた。そんな姿を見ていたから覚悟もできていただろう。

そんなことを考えてながら、今後の予定を話している両親の声に耳を傾けていたら20分程の所まで来ていた。

母親の話では母親の姉、私にとっては伯母が病院に行っていて葬儀屋への連絡や手続きもしてくれているらしく、母はおじいちゃんの家からタクシーで葬儀屋に向かい伯母と合流する。私と父はおじいちゃんの家で葬式ができるように準備しておく事になっている。

本当は私も早くおじいちゃんに会いたいが、高校生とはいえまだ子供だし、帰りが何時になるかわからないところには連れては行けないだろう。

おじいちゃんの家に着き、母が鍵を開けてくれたので荷物を運び入れる。久しぶりのおじいちゃんの家、だけどいつもの様に笑顔で出迎えてくれるおじいちゃんはいない。

「それじゃあお母さんは葬儀屋に行くから、お父さんとアキラで片付けや掃除をお願いね。でも予定より遅くなったから明日でもいいわよ。じゃあよろしくね。」

と言い残し、落ち着く間もなく母は葬儀屋へ向かった。

私と父は家の中を見回り、少し換気をしてから寝ることにした。

換気をしている間は明日どこから掃除をするか、今後の予想される予定などを話した。近くに住む伯母が時々様子を見に来てくれていたからそんなに汚れている所もないし、布団も前回来た時にたまたま干してくれたようで何不自由なく寝ることができた。


翌朝、父より遅く起きた私は身支度を整えて昨日寄ったコンビニで買ったパンを食べて掃除を開始した。遠くの親戚達も来るから葬式に使う部屋だけでなく二階も掃除しておこう。

2時間程掃除をして少し休憩してくなり台所へ向かうと、父が電話を終えたところだった。

「おじいちゃんがそろそろ家に帰ってくるそうだよ。今日がお通夜で明日が葬儀になるって。」

父の電話の相手は母だったようで、今後の流れを教えてくれた。

「そっか、掃除もだいたい終わったし、間に合ったね。」

「そうだね、アキラは大丈夫?」

「ん?大丈夫だよ。」

何についての大丈夫なのかわからなかったけど、体調とか疲れてるかの心配だと思ってそう返した。

おじいちゃんは几帳面でいつ家に遊びに行ってもどこも綺麗だった。おばあちゃんは私が生まれる前に亡くなっていたからずっと一人で家を綺麗に維持していたと思うと尊敬する。そんなおじいちゃんが約半年ぶりに帰ってくる我が家だから綺麗にしておきたかったのだ。

電話から十数分後、母と伯母と葬儀屋と共におじいちゃんが帰ってきた。

慌ただしく通夜の準備がされていき、なかなかおじいちゃんとゆっくりすることができないでいた。父がお茶を用意していたので私はお菓子や軽食を買いに近くのスーパーマーケットに向かった。きっと母や伯母はまともにご飯を食べていないだろうし、そろそろ親戚達も来る頃だというのにお茶菓子がない。あとサイダーが飲みたい。

今日もよく晴れている、額に汗が滲む。

おじいちゃんとよく散歩した畑の間の道、ザリガニとりをした水路、スイカをもらったご近所さんの畑、色々な思い出が蘇る。

交差点を右に曲がると目的のスーパーマーケットがある。パパっと買い物を済ませ、帰り道を歩く。私が好きなサイダーと子供用にオレンジジュースと某乳酸菌飲料の原液と一応緑茶も買った。スーパーマーケットを出てすぐに買いすぎたと後悔した。

おじいちゃんの家に着いた時には親戚達がほぼ揃っていた。あとは一番遠くに住んでいる伯母の旦那さんと娘さんだけだ。離婚している訳ではなくて、旦那さんの転勤先と娘さんの進学先がたまたま同県だったから一緒に住むことにしたらしい。とても仲の良い家族だ。

伯母の息子さんとその長男に挨拶をして早速オレンジジュースをあげた。奥さんは妊娠中で飛行機の距離の実家に帰っているそうで今回は来られないらしい。

通夜の準備も終わっていて、葬儀屋さんも一度帰るところだった。母と伯母に買ってきたお弁当を渡し、休憩するように言った。たまにはできる娘を演じておこうなんて。

やっとおじいちゃんに会える。そう思い棺の前に座り中を覗いた。ゴールデンウィークに会った時よりもさらにシワシワになっているような気がした。おじいちゃんの笑顔を思い出していたら流石に目頭が熱くなり、私は急いで二階の東側の部屋に入った。

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