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第六章

初夏の風が教室の窓から吹き込み、心地よい涼しさを運んでくる。授業が終わり、放課後の時間が始まると、教室は部活の準備をする生徒たちのざわめきで満たされていた。そんな中、涼宮紗耶は一人静かに座って、今日の学級委員としての業務内容を整理していた。


「涼宮さん、今日も残ってくれるかい?」


唐突に声をかけたのは、佐藤祐斗だった。彼もまた学級委員として、共に仕事をすることが常となっていた。


「もちろんです。何か問題がありましたか?」


紗耶が問いかけると、祐斗は少し苦笑いを浮かべた。


「いや、問題というわけじゃないんだけど、体育祭のプログラムにちょっと変更があってね。それで、急遽打ち合わせが必要になったんだ。」


その言葉に、紗耶は軽く頷いた。


「分かりました。では、早速始めましょう。」


-静かな二人の協力-


教室に残った二人は、机を並べて資料を広げた。祐斗が変更点を説明しながら、紗耶はメモを取り、次の行動を考える。


「ここの競技の順番を変えるのは、リスクがあると思いますが、どうでしょうか?」


紗耶の冷静な指摘に、祐斗は一瞬考え込んだ後、同意した。


「確かに。参加人数や準備時間を考えると、順番を変えることで混乱が生じる可能性があるね。」


「ならば、事前に他のクラスに確認を取っておくべきです。準備不足が原因で当日に混乱するのは避けたいですから。」


二人の間に交わされる言葉は少ないが、その分、お互いの理解と信頼が深まっているのを感じさせた。紗耶の冷静な分析と、祐斗の柔軟な対応が絶妙に噛み合っていた。


-想定外の訪問者-


その時、教室の扉がノックされ、二人は振り返った。入ってきたのは、同じクラスの友人たちだった。


「お疲れ様、二人とも。こんな遅くまで頑張ってるなんて偉いね。」


友人たちは微笑みながら、手に持っていたジュースの差し入れを机の上に置いた。


「ありがとう。助かるよ。」


祐斗が礼を言うと、紗耶も軽く会釈した。


「体育祭の準備、大変そうだね。何か手伝えることがあれば言ってね。」


その言葉に、祐斗は軽く笑いながら答えた。


「今は大丈夫だけど、当日になったら助けてもらうかもね。」


友人たちはそれを聞いて笑いながら教室を後にした。再び静寂が戻り、二人は作業を続けた。


- 優しい時間 -


資料に目を通しながら、紗耶はふとした瞬間に祐斗の顔を見た。彼は真剣な表情で資料に目を通し、何かを書き込んでいた。その姿に、紗耶は微かに笑みを浮かべた。


「何かおかしいかい?」


祐斗が顔を上げ、紗耶の視線に気づいた。


「いいえ。ただ、あなたが真剣に取り組む姿を見て、少し感心していただけです。」


その言葉に、祐斗は少し照れたように頬を掻いた。


「そうか。ありがとう。でも、君もいつも冷静で頼りになるよ。」


その言葉に紗耶は少し顔を赤らめ、視線を資料に戻した。


- 絆の深まり -


二人が協力して作業を進める中で、少しずつその距離が縮まっているのを感じていた。お互いに言葉少なに、しかし確かな信頼を持って支え合う姿は、周囲からも注目されるようになっていた。


夕暮れの陽射しが教室をオレンジ色に染める頃、ようやく作業が一段落した。


「これで一通りの準備は整ったね。」


祐斗が深呼吸をしながら言うと、紗耶も軽く頷いた。


「はい。これで明日からの準備もスムーズに進むでしょう。」


「本当にありがとう、涼宮さん。君がいてくれて助かったよ。」


その言葉に紗耶は微笑みながら答えた。


「こちらこそ、あなたのおかげで無事に進めることができました。」


その静かなやり取りの中に、二人の間に芽生えつつある絆が確かに感じられた。


帰り道、夕焼けの中を歩く二人は、これからも共に協力し合いながら乗り越えていくことを感じていた。それは、二人の間に生まれた新しい絆の始まりであった。

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