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プロローグ

お待たせしました!クークーでございます!連載頻度は下がりますが今後ともよろしくお願いします!

四月の風が校舎を包み込むように吹き抜け、新しい生活の始まりを告げる鐘の音が響く。桐生祐斗は新しい教室の後方の席に腰を下ろし、無表情のまま窓の外を見つめていた。春の日差しが柔らかく差し込む中、クラスメートたちの賑やかな会話が彼の耳を掠めていく。


「また同じような日々が始まるのか…」


そんな独り言を胸の中で呟きながら、祐斗は新生活に対して特別な期待も抱いていなかった。彼の性格は内向的で、無駄な人間関係を築くことを好まない。小学校から中学校へ、そして中学校から高校へと進む中で、彼の生き方は一貫していた。


だが、そんな彼の視線を引き寄せる存在が、この教室にはいた。


黒板の前に立ち、担任教師の言葉を静かに聞いている一人の女子生徒。その佇まいは静かで落ち着いており、同時にどこか冷たさを感じさせるものだった。彼女の名前は涼宮紗耶。中学時代に優秀な成績を収め、この高校に推薦で進学してきたと聞いている。長い黒髪が肩に流れ、切れ長の目が印象的だ。


「クールなやつだな…」


祐斗は自然と目を引かれながらも、彼女に特別な興味を抱くわけではなかった。ただ、自分と同じようにクラスの喧騒に馴染むことなく、どこか冷徹な雰囲気を纏っている彼女に、ほんの少しだけ親近感を覚えた。


-学級委員の任命-


「それじゃあ、学級委員を決めるぞ!」


担任教師のその一言で、クラスは一気にざわめいた。全員が初対面の状態で立候補する者などいるはずもなく、結局は担任の指名に任される形となった。


「桐生くん、涼宮さん。君たち二人にお願いするよ。」


突然の指名に、教室内が一瞬静まり返る。そしてすぐに、控えめな笑い声と視線が二人に集中した。涼宮紗耶は無表情のまま頷き、ゆっくりと席を立った。一方、祐斗も特に反論することなく「はい」と短く答えただけだった。


こうして、祐斗と紗耶の二人は、学級委員として高校生活を共にすることとなった。


-不器用な始まり-


「よろしく。」


その日の放課後、学級委員としての初仕事を終えた後、涼宮紗耶が初めて祐斗に声をかけた。その言葉は簡潔で、彼女の無表情にさらに冷たさを感じさせるものだった。


「…ああ、こちらこそ。」


祐斗もまた、紗耶に負けないほど簡潔に答えた。それ以上の会話はなく、二人は互いに背を向けて教室を後にした。まるで無言の協定が交わされたかのように、必要以上の言葉を交わすことなく関係を築こうとする二人。


だが、そんな冷徹な空気の中にも、確かに何かが芽生え始めていた。


祐斗は無意識に紗耶の歩幅に合わせて歩きながら、彼女の横顔に目をやった。何を考えているのか全くわからないその表情。しかし、その無表情の奥にある何かを知りたいという気持ちが、少しずつ膨らんでいくのを感じていた。


一方、紗耶もまた、祐斗の冷静な態度にどこか心地よさを感じていた。これまで、彼女に近づこうとする人間は皆、彼女の外見や成績に興味を持った者ばかりだった。しかし、祐斗はそれらに全く関心を示さず、ただ淡々と接してくる。そのことが、彼女にとって新鮮だった。


新学期の風に乗って、不器用な二人の関係は静かに動き始める。そしてその先に待つのは、まだ誰にもわからない物語だった。



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