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聖夜祭の思い出

 オカ研の集合場所になっているカフェ。いつもの席に向き合って座るのは、アスカと翼だ。聖夜祭が過ぎ去った後のいつもと変わらないある日のこと。

 翼は甘いカフェオレのマグカップを両手で持ち、こくんと飲む。聖夜祭の記憶が鮮明に蘇る。そう、雪内桃花という新しい仲間と一緒の聖夜祭である。

「……なんだったんだろうね、桃花ちゃんは」

 さすがの翼もひき気味である。

「まあ、アイツらしかったな」

 聖夜祭の夜。アーケードはきらびやかに飾られていた。華やかな雰囲気に人々が集まり、その中にはオカルト研究部の部員も含まれる。もっとも、彼らの目的は祭りではなく、聖なる夜だけの特別な魔力にある。だが、雪内桃花という少女は何に導かれたのか? お気に入りのアスカと翼だろうか。

「桃花がどれくらいの人物かはわからなかったが、異常をきたした魔力と戦う力はあると感じていた」

 アスカは深く黒いコーヒーにスティックシュガーを注ぐ。どちらかというと、ブラックが好きな彼だが、今日は甘いコーヒーが飲みたい気分。

「今回のボクたちは、最低でも魔力の異常が発生した原因を突き止めたかったからね~。ボク個人は、今年こそ神社の秘密を突き止めてやるって思ってたけどさ」

 その魔力異常の原因は、神社のもたらす結界の力がほころんでいることが理由だとは容易にわかったが、なぜそうなったのかは簡単には分からないものだ。

「本来、あれほどの事態なら本部のエリートを呼び寄せる必要がある」

「そうかもね~、ボクとアスカくんがいるとはいえ、万全を期す必要があるし」

「神社の人も悪戦苦闘していたようだったな。だからといって、参拝客を不安にさせるわけにはいかないから。虚勢をはっていた」

 アスカはごくりとコーヒーを飲む。ほど良い甘みがある。

「桃花が、カギになるとはな……」

「そーだねー。桃花ちゃんの力で神社の神様と対話ができるなんて思ってもなかったよ」

 神社の結界の綻びは、神がテキトーに降臨したせいで、結界がダメージを受けたせいらしい。

「自分で結界を壊しておいて、ボクたちに直してもらうなんて新人かな?」

 アスカと翼の力で結界は修復されたが、神の表情は暗い。

「……私は未熟ですね、修行をやり直さねば。これで失礼します」

「あの! まってください!」神界に帰還しようとした神を桃花が止める。

 それを聞いて、神は振り返る。

「わたしを生贄にしてください! そうすれば、すぐに必要な力を得られるのでしょう?」

「生贄、ですか? それなら、必要なことがあります」

「なんでしょう? わたしに出来ることならなんでもします」

「それは代償です。生贄というのは、願いを叶えるために捧げるもの。人に報いることをしないで受け入れるわけにはいきません」

「そ、そうなんですか……願いを考えろということですね。魔法のランプみたい」

(なんか違う)

「思いつきました。わたしの願いはアスカくんです」

 それを聞いてアスカと翼はハッとする。

「わたしは、アスカくんの大切な女性になりたいんです。だから……」

「わたし、アスカくんの母親になりたいんです」

 その爆弾発言を思い出す。アスカはふっ、とため息をつく。

「まるで、オレがマザコンみたいじゃないか」

「生贄に捧げられる人を、すでに存在している人の母親にするって、神様でも難しいよね」

 翼は棒状の焼き菓子を食べる。

「そもそも、アスカくんの大切な人になりたいんならさー、アスカくんの隣にいればいいのに」

「……お前がいるから、それができないんだ」アスカは自分の親友に突っ込む。

「はあ、ボクがいるくらいで諦めちゃうなら、結局その程度だったってことだよ」

 翼は両腕を大きく広げてヤレヤレ顔をする。わざとらしいが、大げさな身振りをするのは彼の癖だ。

「生贄になってもいいくらい強い気持ちがあるなら、どうして本人にぶつけないのさ?」

 ポジティブな翼がしばしば見せる、暗い方向に進んでいく人間の気持ちへの無理解が出た。

「いや、生贄になりたいっていうのは、桃花の性癖だと思うんだが」

「あははー、それじゃ桃花ちゃん的には良かったのかな。残された人は別として」

「神様も鬼悪魔じゃない。そのうちひょっこりと帰ってくるさ」

 ふたりには聞こえないが、カフェの出入り口ドアが開いた。

「いらっしゃいませ」

「……では、あちらの席にどうぞ」

 ふたりのテーブルに新参客が。

「アスカくん、翼くん。久しぶりですね」

 そこに現れたのは、雪内桃花その人だった。

「うわあ!」翼、いろんな意味で驚く。

「……戻ってきたか」アスカ、そう反応するしかない。

 桃花も席につく。

「案外、待遇よかったです。拍子抜けというか、期待ハズレでした」

 変態ドM少女、しれっと言ってのける。

「あのさ、生贄の話はナシになったの?」

「それがですね。わたしの願いを叶えてくれることになったんですよ」

「? それはどういうことだ。オレの母親になるなんて、どうやって」

「それがですね。転生とか並行世界とか、そういう感じで実現するみたいです」

「なるほど」

「桃花ちゃんの無茶ぶりに、神様も苦労しそうだね」

「ああ、詳しいことはわからないですけど、あちらの人たちも色々企みがあったんです。それでわたしの存在は渡りに船だったそうで」

「うわー、アスカくんと血縁関係になれるなんてスゴイ! まさかの逆転劇だよ」

 翼、笑顔で拍手する。

「そ、それが……翼くんは、アスカくんと合体させるみたいです」

「え? ボクたち、すでに合体してなかったの?」

 その、誤解を招きそうな言葉の表現は、ワザとなのか……。アスカと翼の魂が共鳴しているのは事実だけどね!

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