ペンギンの女神様
緩いファンタジー系なお伽噺
誤字脱字と共存してきた為、恐らく大変読み辛いです。
ご都合主義ご都合展開なので突っ込みは野暮というもの…頭を空っぽにしてお読み下さい。
昔々まだ神様達が地上を行き来していたほど昔のお話。
南極にはオーロラの女神様が居られました。
ですがこのオーロラの女神様は来る日も来る日も泣いてばかりおりました。
その原因は女神様がなんとペンギンの姿をしていたからです。
ペンギンの姿のオーロラの女神様は他の神様達にその姿を見られては嘲笑われておりました、
そのためオーロラの女神は「ペンギンの女神」と呼ばれ、馬鹿にされては女神は啜り泣くのでした。
ある日ペンギンの女神は今日も一人で南極で泣いていると、太陽の女神がペンギンの女神の元へ訪れました、
そして太陽の女神はペンギンの女神にこう言いました。
「貴方が毎日たくさん泣いているから、私が太陽を空に上げて白夜にすることが出来ないじゃない」
太陽の女神は南極で太陽が夜でも沈むことがない「白夜」を作るお仕事があるのです。
それなのにペンギンの女神が毎日泣くので「白夜」を作ることができません。
なぜならペンギンの女神が涙を流すとその涙はなんとオーロラとなって空に輝くのです。
オーロラが空で輝いている間はずっと空は明るくなりません。
こまった太陽の女神はペンギンの女神に泣くのを止めてほしいと頼みに来たのでした。
ペンギンの女神様はこう言いました。
「…でも私は涙が止まらないのです、きっとこの姿であるかぎり私は泣くのを止めることは無いでしょう」
「それは困るわ」
太陽の女神様は途方にくれました。
こればかりは一番偉い神様にお願いしても、おいそれとは変えられないからです。
仕方がなくその日は太陽の女神様は帰りました。
太陽の女神様が最初から最後まで居る間もずっとペンギンの女神様は泣くばかりでした。
そんなある時、南極に大きく立派な黄金の竜が現れました、竜を恐れた他の者達は一目散に姿を隠しましたが、泣いてばかりいたペンギンの女神様は竜の存在に気づいておりませんでした。
突如目の前に現れた巨大な竜にペンギンの女神様が飛び上がって驚き、小さくなって震えていました。
「美しいオーロラを見る事ができると噂を聞いて来て見れば、そこで小さくなって泣いているのはオーロラの女神様ではないのですかな?」
とペンギンの女神に向かって竜は話しかけてきました。
「はい、何の御用でしょうか?」
巨大で雄雄しい竜を目の前にして女神は恐ろしくて、ますます縮こまってしまいました。
「こんなに美しく空にオーロラが輝いているというのに、何故そんなに泣いているのです…何か悲しい事でもあったのですか?」
竜はペンギンの女神がこれ以上怖がらないようにと、そっと尋ねました。
「いいえ、いいえ。オーロラを作ることが私の役目、オーロラは私が流した涙が空で輝くのです」
竜と話をしている間も女神はシクシクと涙を流し続けておりました。
「そうだったのですか、ですが安心しました」
「何がですか?」
「貴方は私が怖くてずっと泣いているのかと思いましたが、違うので安堵しました」
そう言われたペンギンの女神はびっくりしてしまいました。
「いくら泣いてばかりの私でも竜の神様のお姿を見ただけでは泣いたりいたしません、それこそ大変失礼でしょう」
「そうですか?けれども私はご覧の様な姿をしております、貴方も最初は私を見て怯えていたではないですか?」
「それは、確かに貴方を見たときにはとても恐ろしくて身が縮んでしまいまいたが、貴方は別に私を笑いに来た訳ではないのでしょう?」
「確かに私は貴方を笑いに来たのではなく、空に美しく輝いているというオーロラを見に此処までやってきたのです」
そう聞いたペンギンの女神は急にまた悲しくなって、大粒の涙を流し始めました。
「私はオーロラの女神なのに、何故オーロラの様に美しくは無いのでしょう?皆が私の姿を見て笑うのです。オーロラの女神なのになんと不恰好な姿をしているのかと」
先ほどよりも大泣きをはじめたペンギンの女神に竜の神様は驚きました。
「確かに貴方の姿は空に輝くオーロラの様に美しくはないかもしれません。ですがとても可愛らしいと私は思います」
竜の神様の言葉に、ペンギンの女神様は驚きびっくりしました、今までずっとオーロラと比較されて自分の姿を笑う者はいても、可愛らしいなどと言ってくれる者は誰もおりませんでした。
「可笑しな姿ではないと思わないのですか?」
「いいえ、とても可愛らしいです、食べてしまいたいくらい」
そう言うとペンギンの女神はまたぶるぶると震えてしまいました。
「冗談です、そんなに怯えないでください。貴方を食べたりはしませんよ、それに食べてしまったらこの美しいオーロラを見る事ができなくなってしまうじゃないですか」
「本当に?」
「ええ、本当に。怯えさせてしまったお詫びに、貴方を空の散歩へ連れて行きましょう」
そう言うと、竜の神様は小さなペンギンの女神様を自分の広い背中へ乗せると、オーロラの輝く空へと飛び上がりました。
あっという間に大空へと連れて来られたペンギンの女神様は、幾重にもオーロラが輝く美しい空に見入ってしましました。
「まあ、まあ。こんなに素敵な光景だったなんて。私は何時も俯いて泣いてばかりいたし、自分よりも美しいオーロラを悲しく見上げてばかりだったのに」
すっかり感激して喜ぶペンギンの女神様。
「又何時でも空の散歩にお連れしましょう、この素晴らしい空を見る事ができるのは貴方のおかげなのですから」
すっかり喜んでいるペンギンの女神様に、気を良くした竜の神様がそう言いました。
「そう言って感謝される事も、私には初めてです。それに私は今まで本当に泣いている事しかできず、自分の姿を恥じてずっと一人でいましたから」
「ずっと一人きりで?ならば私の所へ来ますか?私もこの姿を恐れられるあまり今までずっと一人きりで暮らしておりました」
ペンギンの女神様は驚きました。
「まあ、貴方もずっと一人きりだったのですか、私達は似た者同士なのですね!それに私は今まで南極以外の所へ行ったことがあまりないのです、貴方が住んでいる場所がどのような所なのか行って見たいです」
「私の暮らしている所は、緑豊かな高原です。他に誰も住まっておりませんが、このオーロラに劣らぬ美しい場所だと思いますよ」
「まあ、本当ですか?是非行って見たいです」
女神から了解を得た竜の神様は、その力強い大きな翼でみるみる南極を離れ、あっという間に自分の住んでいる山へ飛んでいきました。
竜の神様が言った通り険しい山のてっぺんで周りには誰も居りませんでしたが、美しい緑に包まれた高原でした。澄んで綺麗な泉と小さな滝もありその周りには色とりどりの小さな花が咲いていて、まるで夢の国の様でした。寒い氷と雪に覆われた大地でずっと暮らしてきたペンギンの女神様にはあまりに眩しい光景でした。
「素敵、私が居た場所は花など咲く場所ではなく、またこんなに気候も暖かくなかったから私はいつも寒々しい思いで暮らしておりました」
「好きなだけ居てくれてかまいませんよ。皆私の事を恐れて此処は他に誰も居りません、貴方の姿を笑う者も居りません」
そう言って姿形がまったく違う二人の神様は大変仲良く暮らしておりましたが、なんとペンギンの女神様は大変大事な事を忘れてしまっておりました。
ペンギンの女神様はオーロラを作る役目をすっかり忘れてしまっていたのです。
困ったのは太陽の女神様でした、何時もはオーロラが出ている空のほうが長いのに、急にまったく無くなってしまったのです。
これでは南極に夜がこなくなってしまいました、太陽が沈まないままでは皆ゆっくり眠ることもできません。
大変困った太陽の女神様は、自分よりも偉い神様にペンギンの女神様の行方を聞いて、二人が暮らしている山へ現れました。
「まあ貴方、役目を放って何をしているのです」
「ああ!太陽の女神様」
ペンギンの女神様は漸く自分の役目を思いましたのですが、山での暮らしが楽しかったせいか、中々帰ることができません。それに。
「あそこでは皆が私を笑います、此処には私をオーロラの女神なのにちっとも美しくは無いと言う者もおりません、どうかこのままそっとして置いてください」
「それは困ります、オーロラの輝くのは夜であり、その夜も貴方が司っているのですから」
オーロラの女神は夜を司る夜の女神でもあったのです。
「嫌です、あそこへ帰れば私はまたずっと悲しみのために泣き続けなければなりません」
嫌がり竜の神様の後ろへ隠れてしまうペンギンの女神に、太陽の女神もほとほと困ってしまいました。
そこで仕方なく竜の神様はペンギンの女神様にこう言いました。
「お別れは寂しいですが、私もまたあの美しいオーロラの空を貴方と一緒に空中散歩したいと思っています。前にした約束を忘れてしましましたか?」
「貴方も私にあそこへ戻ってまた泣き続けろと言うのですか?」
「違います、そうではありません。落ち着いてよく聞いてください」
竜の神様はペンギンの女神様の方へ向き直りこう言いました。
「確かに貴方にとっては辛く悲しいかもしれません、なら私が貴方の傍に居りましょう。そして私の影に隠れておいでなさい、そうすれば貴方を見て笑おうとしに来た者達も、私を恐れて皆引き返して行く事でしょう」
「でもそれでは今度は貴方が辛いのではないのですか?」
「確かにそうかもしれません、ですがまたあの綺麗なオーロラを見ることができますし、今度は一人きりではありませんから寂しくはないです。怖がられる事は悲しいですが、貴方が一緒にいてくれますから」
その竜の神様の言葉に感激したペンギンの女神様はようやく帰る決心をしました。
「でも貴方が南極に長く居ては、貴方の体は凍って動けなくなってしまうかもしれません。やはり私一人で帰りましょう」
竜の神様の事を気遣い、寂しいがペンギンの女神様は一人で帰る事にしました。
「ではオーロラの出ている時は必ず一度は貴方の元へ会いに行きましょう、また白夜になったのなら私が貴方を迎えに行きましょう」
「ええ、わかりました。約束です、必ず会いに来てくださいね、待っております」
竜の神様と一緒に暮らしていた時はペンギンの女神様は泣く事が無くなっていたのに、帰る事になってペンギンの女神様はまたはらはらと泣き始めてしまいました。
そうしてまたペンギンの女神様は南極で一人泣きながら暮らす事になりましたが、今の女神様の涙は自分の姿が笑われて悲しくて泣くのではなく、自分の事を可愛がって親切にしてくれた竜の神様を恋しくて涙を流す様になっておりました。が、前にも増して夜空のオーロラが美しく輝きを放つ様にもなりました。そんなオーロラが美しい夜には黄金色の巨大な竜が背に小さな女神を乗せて空中散歩をする姿が見られました。
やがて白夜が来ると約束どおり竜の神様はペンギンの神様を迎えに現れ、自分の住む山へと連れて帰りました。竜の元で暮らしている女神様は悲しみの涙を流すことなく、輝く笑顔で幸せに過ごしていたと、その高原に住まう小鳥達は言いました。
そう、竜の神様と暮らしている間はペンギンの姿ではなく、いつの間にかオーロラのように美しい乙女の姿となっていたのです。そして共に暮らしている竜の神様もまた立派な青年の姿となっていました。
互いを大切に思う心が二人を美しくしたのです、二人の神様は一緒の間だけ美しい神の姿で居る事ができたのですが、二人は離れ離れになるとまた竜の姿とペンギンの姿に戻ってしまうのでした。
そして竜の神様はいつもこう言っておりました。
「彼女はまさに空に輝くオーロラの様に美しい女神」であると、悲しみに泣き暮れることで本来の姿を忘れ変えてしまっていた女神の姿を外見に惑わされず、彼はずっと前からオーロラの女神様の真の姿を知っていたのでした。彼もまた女神と似た様な境遇であったためです。
女神達の本当の姿を目にすることができた者はその後も誰一人おりませんでしたが、二人は一緒のときはとても幸せだったそうです。