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錬金術の森~未成年孤児エルの半生~  作者: 一仙
第一章 森の迷い子
22/97

22.辺境都市の朝

いつもお読みいただきありがとうございます。新しく投稿する度に最初からざっくり読み直しておりますのでストーリーに不具合出そうな時はその都度修正をかけさせていただくと思います。

修正ある時はあとがきにてご報告させていただきます。

 翌朝、目を覚ますと体のダルさはすっかり抜けていた。ベッドから身を起こすとジュリアの姿はなく、ベッド横のテーブルには綺麗な布と水の張った桶が置かれていた。おそらくジュリアが用意してくれたのだろう。感謝しつつ顔を洗い、水で濡らした布を絞り体を軽く拭く。そうしていると部屋のドアが小さく叩かれる。


 「エルくん。起きてるかい?入っていいかい?」

 「はい!大丈夫です。」


 ドアが開くとダンと共にレオとジュリアも一緒に入ってきた。三人とも表情は少し硬い。心配をかけてしまっただろうか。もう心配いらないと思ってもらえるように笑顔で迎える。


 「おはようございます!ご心配かけました!体調は大丈夫です。」

 「おはよう!本当に大丈夫かい?無理はしていない?」

 「はい!もうお腹空いちゃって。。。」

 「はっはっは!!!大丈夫そうだな!エル。体で少しでもおかしいトコがあるなら言えよ?」

 「うん。大丈夫。心配かけてごめん。」

 「大丈夫だ。それを守るのが俺たちの役目だからな。さぁ、メシに行こう。」


 レオの優しく大きな手がガシガシとエルの頭を撫でる。エルはこの手が好きになっていた。

 部屋を出て階段を下りると少し大きめのホールがあり複数人で使える木製のテーブルと椅子が何組か置かれていた。その一番広いテーブルにサームとオーレルが座っている。階段から下りてきたエルに気付き優しく笑顔を向ける。エルはサームに駆け寄る。


 「お師匠様。オーレル様。おはようございます!昨日はご心配をおかけして申し訳ありません。体の方はもう大丈夫です。」

 「あぁ、おはようエル。そうか。少し心配したが大丈夫ならば心配いらんかな。」

 「はい。オーレル様もご心配をおかけしました。」

 「わっはっは!ジュリア嬢の威圧を受けてしまっては体調が悪くなっても仕方あるまい。白金冒険者の威圧など受けたくても受けれるもんでもない。良い経験をしたと思うんじゃ」

 「オーレルっ!そのような事はもう起こりません!私もこれからは更に精進いたしますから!」


 オーレルがジュリアをからかい、エルとレオも混ざりワイワイと笑顔が溢れる。その輪の中でサームはそっとダンに視線を向ける。ダンはサームを見つめながら小さく頷く。それを見たサームも目を閉じながら小さく頷き、エル達に声をかける。


 「さぁさぁ、朝もしっかり食事をせんと今日はたくさん用事があるからの。座りなさい。」

 「おかみさぁ~ん!!ここに人数分朝食頼むぅ~!!」


 レオの大きな声にホールの奥にある厨房から「はいよぉ!!」と元気な女性の声が聞こえてくる。エルはサームの横に座る。こんな大人数で食事をするのは初めてだし、宿に泊まるのもそこの食事を食べるのも初めてだ。ワクワクしながら食事を待つ。

 しばらくすると厨房から背の低い狸人族の女性と体つきだけならレオよりもがっしりとした人虎族の男性がお皿を次々に運んでくる。エルは奴隷商の牢屋の中以外で獣人族を見たのは初めてだった。二人に目を奪われ見ていると、狸人族の女性がニッコリと柔らかい笑顔でエルに話しかける。


 「おはよう!坊や。昨日は急に運び込まれたから驚いたけど顔色は良さそうだね!ご飯は食べれそうかい?」

 「はい。おはようございます。お腹はすごく空いてます・・・」


 呆気に取られて話すと女性は大きく笑いながらエルの背中に手をやる。


 「坊やはもしかして狸人族を見るのは初めてかい?」

 「あっ・・・はい。猫人族(ワーキャット)の方とは少し話したことはあるのですが。」

 「猫人族の方ときたかい!ハハハハハッ!!うちらはそんな丁寧に喋ってもらうようなもんじゃないよぉ!楽しんで食事して酒飲んで安心して眠ってもらいたいだけさ!まぁ、ちょいとダンナは怖い顔してるけどね!こう見えて優しいんだよ?」

 「すみません。ジロジロ見てしまって!あの、エルと言います。」

 「はいはい!エルね。私はノーラ。ダンナはジョバルだよ。この街いる間はこの宿使ってくれるって聞いてるから自分の家だと思ってくつろぎな!」

 「はい!!ノーラさん!ジョバルさん!朝食、いただきます!!」


 ノーラもジョバルも目を丸くして驚き、二人で笑い始める。ノーラがエルやジュリアと盛り上がっている時、ジョバルはエルとは一番離れた席に座るレオとダンに小さく話しかける。


 「良い坊主だな。守ってやれよ。」

 「分かってるさ。ジョエル。で、どうだ。」

 「昨日、騒ぎを起こした野郎がお前たちがこの宿に泊まってるのを探ってた。特に向こうはそれ以上何も動いてねぇが常にどこにいるかは把握出来てる。繋ぎはダンに入れるようにしてる。」

 「ジョエル。すまない。もう冒険者は引退したのに。」

 「てめぇらしくもねぇ。この宿をこうやって続けられてるのはお前らのおかげだ。お前らがエルを守るってんなら俺もノーラも守るさ。」

 「ありがとうジョエル。もしこの宿に奴らが動くようならすぐに連絡を飛ばしてくれ。」

 「引退したとしても創竜の翼のメンバーだったんだぞ。舐めてもらっちゃ困る。あんな野郎に負けるようなら宿は続けれてねぇよ。」

 「確かにね。ジョエルのおかげでワックルトで創竜の翼も含め、僕らのクランがどれだけ動きやすくさせてもらってるか。ホントに助かってるよ。」

 「あの坊主にはその事はまだ秘密なんだろ?」

 「あまり警戒させたくないし、僕らとの事に変に壁を持って欲しくない。今はまだ偶然助けた冒険者で構わない。」

 「分かったよ。ホントにお前らはいつもめんどくさい方に流れるな。」


 そう言って三人は苦笑いを浮かべる。皆が食事を始めたのでジョエルもノーラと共に厨房に下がる。その時にそっとエルの頭をジョエルは撫でた。びっくりしたエルだったが、その優しい手に満面の笑顔を返す。二人が厨房に下がるのを見送り、テーブルの上の朝食と向き合う。

 大きなワンプレートに鶏肉のステーキと茹でた芋や野菜が混ぜ合わさったサラダにオレンジ色のソースがかかっている。パンは白く見た目から柔らかさが想像できる。脇に添えられたスープカップには美味しそうなスープが並々と注がれていてその香りが鼻を刺激する。


 食事をする手が止まらない。いや、止められない。少し食べすぎただろうかと思うほどエルは一生懸命にかきこんだ。その様子を他の皆は微笑ましく眺めていた。朝食が終わるとサームが皆に向けて声をかける。


 「さて、エルの体調も良さそうだから今日は両ギルドでエルの身分証を発行して、今後の生活に必要な物を買い揃えようかの。先に商業ギルドにしようか。恐らく冒険者ギルドは話が少し長引きそうだからの。」

 「そうですね。買い物は雑貨屋とパウラ商会で済ませられると思います。エルボアさんの店はどうされますか?」

 「ワックルトまで来て顔を出さねば今後何を言われるか分からんしのぉ。それに儂のポーションや他の物もエルボアでなくては捌けんものもあるしな。礼がてら寄っておこう。」

 「分かりました。では、そのように。エルくん、出発していいかい?」

 「はい!楽しみです!」

 「もう昨日みたいな事は無いだろうけど、絶対に一人での行動はしない事。必ずレオかジュリアの傍にいてほしい。」

 「わかりました。」


 宿屋から街の通りに出る。朝の早い時間だがすでに通りには人が溢れていた。冒険者らしき立派な装備を付けた者もいるが、野菜や荷物を背負っていたり抱えている人も多い。その活気がこの街の朝の目覚めの勢いを感じさせる。大きな通りのあちこちで露店の準備をしていたり、何人かの冒険者が集まって地図を広げて今日の依頼を再確認しているのか真剣な顔で話し合っていたり、商人たちが荷車に荷物を積む傍らに屈強な冒険者が辺りを警戒していたり様々だ。

 そのどれもがエルには新しく新鮮で興味深かった。


 「すごい人ですね!こんなに朝が早いのにもうこれだけの人が通りに。」

 「各ギルドでは遠方への配送や護衛依頼も出してるからね。それを受ける冒険者は準備の為に当然早くから動くし、その冒険者で一儲け考える商人たちは更に朝早くから動くんだ。だから逆に夕方過ぎると酒場以外の店はほとんど閉まってしまうんだよ。」

 「街の外は当然夜よりも昼間の方が安全だしな。だから明るいうちの少しでも距離を稼いで安全な野営地を目指すのさ。そういう安全な野営地は冒険者同士で情報が共有されてるから冒険者が集まりやすい。単独で野営をするより安全って事だな。まぁ、絶対とは言えないがな。」

 「近場での採取や討伐の依頼であってもそうですわね。朝早くから出ればそれだけ早く達成出来る可能性がありますし、時間に余裕があれば討伐数を多くして追加報酬を狙ったり、状態の良い素材を探す時間にも使えますから。なので、冒険者は早起きなんですよ。」

 「すごく合理的なんですね。」

 「まぁ、長い年月の中で成功してきた冒険者達の記録を辿れば、皆真面目で朝早くから依頼に励み領民の為に時間を惜しまなかったって記録がほとんどなんだよ。だから、自分の力を過信しない冒険者はおのずと同じように真面目になるって感じかな。」

 「聞いているだけだと冒険者の人たちの評判が悪くなるような要素が見当たらないんですが、どうして乱暴者みたいな印象になってしまっているんでしょう?」

 「それは王国の中だけでない西ドルア大陸全体の今までの歴史もあっての事なんだ。まぁ、そこはおいおい勉強していけば良いさ。」


 確かに通りを歩く冒険者の中には必要以上に周りに睨みをきかせるような怖そうな冒険者もいる。しかし、その冒険者を見る領民の人たちの目は冷ややかで怖がっていると言うよりはバカにしているような軽いものに感じる。


 「ここは辺境都市ですから。領民の方たちも冒険者に対しては他の街や村の住民よりは目が肥えています。本当に危険で粗暴な冒険者なのか、振りだけの小心者なのか等と言うのは見分けられるだけの目は持ち合わせているんです。それだけ高ランクの冒険者が常に常駐している都市ですし、住民とも触れ合う機会も多いんですよ。」

 「さぁ、そんな話をしていたらまずは商業ギルドへ到着だ。昨日作れなかった商業ギルドの身分証を作ってもらおう。」

誤字脱字ありましたらご指摘お願いします。

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