一章 再起4
「支部長、買い被りすぎだよ。」
「いいや、私にとっては正当な評価だ。アレンくん、君はたまに嫌味なほどに謙虚になる。いいかね、君は呪具の能力込みで計算すると本当にSSと遜色ないのだよ。ともすればXにも迫るかもしれない。呪具創師という君の職能を考えれば、率直に言って異次元の強さだ。さあ、アリアくん。わかったら受理手続きを終わらせなさい。」
「……っ、かしこまり、ました……。…………以上4件、確かに受理いたしました。……アレンさん、どうかご無事で。」
「どうも。」
処理が終わった証左の判を押された依頼書を纏めて受け取り、一緒に渡されたタグを首に提げる。
足早にギルドを後にして、街の門を目指し走る。
「支部長。」
「なんだね?」
「やっぱり無謀じゃないですか?」
「もっと手強いイレギュラーを、彼は仕留めているよ。」
「それ、どういう……」
「3年前の異界迷宮暴走、覚えているだろう。私と彼の父が二人がかりで攻めあぐねていた親玉、あれを倒したのが彼だ。」
「……はい?」
「身長6メートルはあろうかという巨体の狂鬼戦士だった。私が誤って致命的な隙を晒して、そこに狂鬼戦士の棍棒が振り下ろされ、彼の父が障壁を作り出す呪具で止めた瞬間に、空中を蹴って弾丸のようにすっ飛んできた彼が、そいつの首を刎ね飛ばしたんだ。彼はその時二挺の変わった形の剣を使っていたんだが、初太刀の軌道に正確に重ねるように二の太刀を当てて、まるで一刀のもとに落としたかのように無駄傷無しに首級を上げていたよ。鋼のような筋肉に覆われた丸太のように太い首を、こう、バターを切るような気軽さで事もなげに落として、何と言ったと思うね?」
「……いえ、想像もつきません。」
「『大物は粗方仕留めた、多分こいつが最後。』だとさ。私が対処に手間取るような強力な個体を、複数体仕留めているのだよ。信じられるかね?しかも、だ。収容鞄を一つ、彼の父に無雑作に投げ渡したと思ったら『残りの雑魚共蹴散らしてくる』ときた。それなりに多く数がいる、上位個体の群れを相手に、だぞ?」
「……ちなみに、その投げ渡された収容鞄の中身は?」
「それまでにスタンピードで彼が落としただろう魔物の生首。死体全部を回収する暇はなかったんだろうね、彼はどうやら無駄が嫌いなようだから。」