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一章 再起3

老爺の工房を後にして、私は再び冒険者ギルドの前に立っていた。

「……抜き身のままで通るには、少し長すぎるか。」

担いでいた双刃剣を、ゆっくりと袖の中に差し込む。

前腕より遥かに長いその刀身が、袖を突き破ることなく右の袖に吸い込まれる。

「いつ見ても不思議だよな、お前のそのコート。」

「……なんだ、ビル。」

「その袖にどうやってそんな色々仕舞ってんだ?破れる様子もねえし。」

「自作の呪具(アーティファクト)だ。詳しい仕組みの説明は省くが、私しかものを出し入れ出来ないかわりに容量ほぼ無限の収納になっている。」

「へー……で、朝から依頼取りにきてんのか?つか、今日はソロか?」

「今日()じゃなくて今日から(・・)だな。そんなところだ。」

「お、ついにあいつらに見切り付けたか。」

「見放したのは否定しないが、見切りを付けたのはあいつらの方だ。」

「ふーん……勿体ないことするよな。ここの支部唯一のソロランクAAAの冒険者を追い出すなんてな。」

「借り物の力で、自分達が強くなったと勘違いしたんだろうな。まあ、もう私には関係ない。」

「……ドライだなぁ、アレンは。ま、お前のそういうとこは嫌いじゃないが。」

「言ってろ。……お前も依頼取りに来たんじゃないのか?」

「おっと、そうだった。仲間と待ち合わせてんだよ。」

「そうか、じゃあな。」

後ろから声を掛けてきた、茶髪の男とのやりとりを打ち切り、ギルドの扉を開ける。戸口を潜り、掲示板を眺め、報酬の高い討伐系の依頼を3、4枚纏めて取ってカウンターに向かう。

「1時間ぶりですね、アレンさん。依頼の受注ですね?」

「これらを一括で受注したい。」

依頼の紙をカウンターに見やすいように並べて、首に提げていたタグをその上に乗せる。

依頼書の内容を確認した受付嬢が、引き攣った笑みを私に向けた。

「えー……失礼を承知で申し上げますが、アレンさん。正気ですか?」

「得物の新調で入り用になったので。手っ取り早く稼ぐために、多少のリスクは許容することにしたんだ。」

「……レッドワイバーンの群れの討伐、クイーンハルピュイアの討伐、サーベルウルフの群れの討伐、ギガントボアオークキングの討伐。サーベルウルフの群れはともかく、他は余りにも危険すぎます。」

「あの阿呆共から貸していたものを回収したお陰で、一応の勝算があるから取ったんだけど。」

「……少々お待ちくださ」

「構わないよ。受理しなさい。」

「ま、支部長(マスター)!?正気ですか!?アレンさんが死んじゃうかもしれないんですよ!!」

「アリアくん、君はアレンくんを舐めすぎだ。彼が昇格試験をなかなか受けようとしなかったからAAAで止まっているが、実力はSSと遜色ないんだぞ。」

制止を試みる受付嬢に、カウンターの奥から現れた壮年男性が声を掛ける。

振り向いて食ってかかる彼女に、穏やかな口調で諭すようにそう告げた。

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