一章 再起2
「数打ちとは思えないほどにしっくり来る。」
「気に入ったかね、僥倖僥倖。」
振り回していた双刃剣を止め、慎重に壁に立て掛ける。
老爺からハルパーを受け取り、無言で刃を改める。握りを確かめるように、軽く2、3度素振りをし、満足げに頷く。
「相変わらず、いい腕だ。研ぎも握りも完璧。あと、この双刃剣、買うよ。幾ら?」
「整備と合わせて二万レルドでええぞ。」
「安くないか?」
「理由は幾らでもあるぞい。お前の使い方が良いから武器が長持ちする。使える奴がおらんかったから死蔵しておったが、飾るために作った物じゃないんだ、使われてこそだろう。後は、そうさな……祝い、といったところか。」
「……有り難く。」
袖から巾着を取り出して、巾着の中を探る。目当てのものを取り出すと、老爺に手渡した。
「ほら、二万レルド丁度。あと……これも。」
「あいよ、確かに。んで、これは……聖銀鋼に神鉄!?お前、こんなもん何処で見つけてきた!!」
「レイナとセフィーが両方ぶっ倒れて、2人が病み上がりの時期に安パイ取ったときにソロで行ったダンジョンアタックで拾った。これで、私に双刃剣を作って欲しい。」
「アー坊、いや、アレンよ。儂ら鍛冶師にとって、この金属を扱うことが、どれ程の悲願か知って持ってきたのか?」
「勿論知ってる。天下に名だたる名工ガンドラであれば、これを扱えることも。爺さんが、仕事で妥協しないタチなのも。ただ剣を打って欲しいなら、そこらの鍛冶屋にでも適当に上等な鉄を持ち込んで頼めば良い。だけど、私が欲しいのは、この命を預けるに値する半身なんだよ。爺さんにしか頼めないし、爺さんだから頼むんだ。」
「…………抜かしおるわ、小僧が。良かろう!儂の1週間をくれてやる!500万レルド、耳を揃えてきっちり用意しておけよ!!」
「技術料だな、上等だ!」
子供が見れば泣き出すだろう壮絶な笑みを浮かべ、老爺が吼える。それに気圧されることなく、私も笑みを浮かべ吼えて応える。
踵を返し、渡した金属塊を大事そうに抱えて建物に引っ込む老爺を見送り、立て掛けていた双刃剣を担いでその場を離れた。