序章 追放3
「……承りました。少々お待ちください……はい、滞りなく終わりました。以上で、アレンさんの所属パーティー、『黎明の剣』からの脱退手続きが終了しました。他にご用はございますか?」
「私個人の口座から三万レルド下ろしたい。」
「それはこっちのカウンターじゃないですよ。シアン、お仕事よ。」
「うぃ。アレン、いつもよりちょっと元気そう。良いことあった?」
「追放を吉事と捉えるならそうかもな。何故?」
「ん、なんか憑きもの落ちたみたいな顔してる。ちょっと待ってね。タグ、ちょうだい。金貨と銀貨、どっちが都合が良い?」
「ほら。一万分だけ銀貨で頼む。」
カウンターから背伸びをするように顔を出した少女に、タグを渡しながら答える。
「話は聞いてたよ。追い出されたんだって?」
「まあな。」
「馬鹿だよね、アレンみたいな引き出し多い冒険者を追い出すなんて。……はい、三万レルド。頼まれたとおり、一万分だけ銀貨で残り小金貨ね。」
「どうも。」
袖から取り出した巾着に、差し出された硬貨を入れる。しまい終わると、袖に戻して踵を返した。
「アレン。」
「……なんだ?」
「これからどうするの?」
「暫くはソロで稼ぐよ。当分阿呆の面倒はこりごりだ。」
「そう……無理しないでね、アレン。」
「判ってるさ。ありがとうシアン。」
背後から掛けられた声に、軽く手を振って応える。
扉を押し開けて、冒険者ギルドを後にする。
何か声が聞こえた気がしたが、気のせいだろうと思い気にしないことにした。
「ねえ、アリア。」
「んー?」
「なんで追い出されたんだろうね?」
「さあねー。そんなことより、書類の処理、さっさと終わらせなさいね。」
「うぃ。……あ、アレン、タグ忘れてる。」
「あらら……イオリ、いる?」
「居るよ。どうした?」
「さっき出ていったところだから今から追い掛ければ間に合うわ。これ、お願い。」
「投げんな……なんでアレンの奴タグ置いてってんだよ。」