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一章 再起18

「いくつ貸してたんだい?」

「ジークに一つ、ジャックに一つ、レイナに一つ……完全にやったつもりでいたセフィーから自主的に返されたのも合わせて、四つだな。」

「納得。道理で、あの雑魚魔術師の魔術が予想以上の火力だったわけだ。」

「そういや、ジークのやつも、あんなひょろっとした体つきの割にやけに力が強かったよねぇ。」

「……意外だな。」

「何が?」

「ユキナ、君、見た目の割に口が悪いな。もう少し穏やかな気性だと思っていた。」

「オンオフの違いと好悪の念の違いだよ。仕事中は私情を持ち込まない主義。個人的にあの雑魚魔術師が気に食わないから。」

「雑魚かどうかはさておいて、あいつの魔術が強かったのは機能を制限して貸していたこれの恩恵だろう。」

首元に下げた六芒星の首飾りを揺らす。

「それが呪具?初めて見た。もっとわかりやすくおどろおどろしい物だとばかり。」

「それとわかっては呪具の意味がないだろう。これは賢者の六芒星フィロソファーズヘックス、魔術増幅器であると同時に演算代行装置だ。装着者が行使する魔術の出力を高め、脳に掛かる負荷を大幅に減衰させる。さらに、高度な術式であっても一度でも行使すればそれを記録し、何度でも短縮発動出来る。」

「……あたい、魔術は専門外なんでよくわからないんだけど、それは凄いことなのかい?」

「かなり凄い。わたしが知る限り、魔術師は必ず毎回術式を組み直してる。」

「いくつか記録してあるがよく使うのは時間操作の術式だな。体感時間を加速させ、加速した時間流に対応できる速度を得られる。」

「……遠いね。凄く強いって聞いてたけど、違った。仮にこの距離で、不意を突いたとしても、多分わたしじゃ勝てない。何か役に立てればと思って声を掛けたけど、わたしじゃ大して役に立てない。」

「何故?初対面の筈だが。」

「弟のことで、君には大きな借りがある。君は、あの子を救ってくれた。心が折れて、塞ぎ込みかけてた弟に、光を与えてくれた。」

「待て待て、なんの話だ?全く心当たりが」

「イオリ、知ってるでしょう。ここで雑務全般をしてる、右足が義足の子。あの子、わたしの弟だよ。」

「……気分を害したら申し訳ないが、全く似ていないな。」

「あの子は母に似ていて、わたしは父に似ているから。異界迷宮暴走に巻き込まれて、命を落とす寸前だったあの子を、君は救い出してくれたんだ。どれだけ尽くしても、返しきれない恩がある。」

「……五体満足で救えなかったことを責められこそすれど、感謝される謂れはないな。義足を拵えてやったのは、完全に私の自己満足だ。」

「君にとっては自己満足でも、わたしとイオリにとっては違う。義足を定期的に診てくれているでしょう?」

「作り手として、作った物に最低限の責任を持っているだけだ。」

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