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突然のヘッドハンティング


「王宮専属の恋文屋、ですか」

「そうじゃ。悪いようにはせん」


りさは


(王宮専属となると、給料もがっつり上がりそうだな)


と考えた。

仕事も安定していそうだし、豪勢な仕事ができるかも……と一瞬夢心地になったが、

すぐにケインやロザリーなど、馴染みの顔が頭に浮かんだ。

彼らを切り捨てて王宮で働くのは、いやだ。

何より、ケインさんに


「帰ってくるの待ってるね」


と言われたんだ。

私は帰らなきゃ、あの店に。


「王様、とても嬉しいお言葉なのですが辞退させていただきます」

「ほう。何故かね」

「恩を感じている店主がおりますし、何よりご愛顧いただいているお客様も微小ながらついております。彼らを見捨てて王宮専属になるなど、私にはできません。」


ただ、と続けフウと深呼吸をする。


「七日に一度、王宮に出向いて、恋文の依頼をお受けするということは可能です」

「そうか、そうか。では王宮御用達の恋文屋として看板を作らせよう」

「ありがとうございます」


ちら、とフランツの顔を盗み見した。

先ほどは微笑んでいたが、今はつまらなそうな顔をしている。

いい折衷案だと思ったのだが、フランツはそうは思っていないらしい。


「それではこれで失礼いたします。また七日後に恋文屋として伺いますね」


そう言ってりさは王宮を去った。


***


「リサ! 待て!!」


階段を下っているとフランツが走って追いかけてきた。

まるで大きな黒い犬のようだなとりさは思う。


「なぜ王宮専属を断った!? 良い話ではないか!」

「さっきも言ったでしょ、ケインさんやお客さんたちに恩があるの」

「しかし……王宮専属となれば今より待遇はよくなるし、それに……」


俺といる時間も増えるではないか、とごもごも言っていたが聞こえないふりをする。


「いいじゃん、王宮御用達も箔がついていいよ。看板も新しく作ってくれることだし」

「そうだが……」


中々諦めがつかないようでフランツは大きくうなだれる。


「私、今の環境が気に入ってるんだ。ケインさんと働くのは楽しいし、お客さんたちと話して手紙を書くのも楽しい。王宮専属になったら、それが無くなってしまう気がしたの」

「そうか……わかった。リサがそこまで言うなら仕方ない」


やっと分かってくれてよかった、とリサは安堵のため息をもらす。


「では、これからも私に手紙をかいてくれよ」


そう言って、フランツはりさの手を取りそのままま唇へもっていき、手の甲にキスをした。


「フランツ!?」

「はは、そう照れるな。こちらまで照れるじゃないか。さて、店まで送ろう

そう言って今度はりさの手をぐいと自分の腕に絡ませスタスタと歩いて行った。


「ちょ、ちょ、フランツ、普通に歩こう!普通に」

「恋人同士ではこれが普通であろう」

「恋人じゃない!!」

「あ、見ろリサ。虹がかかっているぞ」

「あ、本当だきれーい……じゃなくて! 腕!!!」


がっちりと抱かれた腕はとてもじゃないが振りほどけない。

しょうがないと諦めたリサは空にかかった虹を見つめ、早く店につかないかなぁとため息を漏らした。


***


およそ30分、フランツと腕を組みながら道中色々話をしたがやっと店についた。


「それではまた来るからな」


と名残惜しそうに去っていった。


「ただいま戻りました~」


若干げっそりした声でリサはケインに声をかけた。


「あぁ、リサ! !大丈夫だったか?」

「ええ、まあ。大丈夫です」


お茶の用意をしよう、と思いながらりさはふらふらとキッチンへ進む。


「それで?王宮専属の話断っちゃったの?」

「そうですね」

「もったいない。俺なら即決するのに」

「だって、ケインさんと働くの楽しいから」


そういうと、ケインは目をぱちくりさせ、ふふっと笑った。


「こんなおじさんと働きたいなんて、リサは変わってるね」

「だって、ケインさんがいなきゃ今頃私野垂れ死んでましたもん! 本当に感謝してるんですよ!」


そう、ありがと、とケインは言うと小さく


「感謝してるのは俺のほうだよ」


と呟いたが、あまりにも小さな声だったのでりさは気づかなかった。

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