ハッピーマリッジ
アーディとロザリーの婚約から三か月後。
りさ達はロザリーとアーディの結婚式に招待された。
久しぶりの貴族と庶民の結婚式なので、街をあげてのお祝いとなり、貴族の他にも街のみんなが招待されている。
結婚会場は王宮内の庭園で、バラが大きく咲き乱れている。庭園内にある噴水も元気よく水を吹き出していた。
式にはりさ、ケイン、フランツ、アナベル、ヴィンセント、カロル、ルイ、ベルナルド、アラン、そしてひょっこり見に来たアーサーの姿があった。
りさは薄い桃色の、レースがあしらわれたパーティドレスを着て、幸せそうなロザリーを眺めていた。
「似合うよ、リサ」
後ろから声をかけられる。魔法使いのカロルの声だ。りさは振り返って答える。
「そうかな、なんか慣れないから照れるよ」
「りさの雰囲気にぴったりだ」
「ありがとう。カロルも今日はフード被ってないんだね」
「さすがに僕も結婚式には正装でくるよ」
「そっか、カロルも似合ってるよ。かっこいい」
照れたカロルから花びらが舞う。それを見て二人で笑いあった。
しばらくカロルと談笑して別れた後、ドラゴン調教師のルイがグラスをふたつ持ってやってきた。
「はい、リサ。お酒持ってきたよ。」
「ありがとうルイ」
りさがお酒を一口飲んだ姿を見て、ルイは辺りを見回す。
「すごいね、人がいっぱいの式だ」
「本当に」
「りさは結婚って憧れる?」
「私?うーん、よくわかんないや」
「ははは!そっかリサらしい」
じゃあ他の人に挨拶しに行くから。お酒ありがとう、と別れたりさは王宮取締役のヴィンセントの元へ向かう。
「こんにちは、この度はおめでとうございます」
「ああ、りささん。この度は恋のキューピッドをされたらしいですね」
「いやあ、私はただ手紙を書いただけですよ」
「それが尊いことなんですよ。少なくとも私にはできません」
「なんかヴィンセントさんに褒められると照れますね」
「褒めていません、本当のことです」
そう言われて照れるりさ。そんな二人を見た王国騎士団長のフランツがりさの元に駆け寄る。
「リサ、いい式だな」
「うん、そうだね」
「俺たちもこんな式をあげたいものだな」
「うん……うん? 今なんて?」
りさがそう聞くと、フランツは笑った。
「ところでリサ、今度俺の実家に来ないか」
「へ?なんで?」
「リサを両親に紹介したい」
「や、やだよ!」
「む……そうか、無理強いはよくないな……だが俺は諦めないからな」
「もー!私あっち行くね」
りさが会場である庭園をうろうろしていると、
アクロサウスの第三王子、ベルナルドが料理を盛られた皿を持ってやってきた。
「リサ、肉食ってるか?うまいぞ」
「まだ食べてないや。どこのテーブルにあるの?」
「食わせてやる。ほらあーん」
「は、恥ずかしいよ」
「いいから、王子命令だ。ほらあーん」
そう言ってりさに口を開けるよう要求するベルナルド。
りさはしょうがなく、従った。
「あ、あーん」
「うまいか?」
「うん」
「そうか! よかった!」
ニコッと笑うベルナルドを見て、りさは赤面した。
そこに、歴史学教師のアランがやあやあと手を振ってやってきた。
「先生も来てたんですね」
「ええ、街のみんな招待されたそうですよ」
「すごいですね」
「ええ、歴史的瞬間に今立ち会っています」
「ははは、おおげさな」
りさがそう言うと、アランが「おや」と何かに気づいた。
「リサさん、髪に何かごみがついてますよ」
「え、やだどこだろう」
「とってあげます。じっとしててください……ほら、取れました」
「ありがとうございます」
和やかに笑いあっていると、りさはとある人が目に入った。
酒を片手にエルフのアーサーがふらふらと歩き回っている。
「めでたいのー」
「アーサーさん?」
「おおリサ、何をしとるんじゃ?」
「何って、結婚式に出席してるんですよ」
「そうかそうか。何かめでたい雰囲気だと思ったら結婚式だったか」
はははと笑うアーサー。
「アーサーさん招待されてないんでしょ」
「そうじゃがいいんじゃ。ワシ、エルフだし」
「もーそうですか」
***
誓いの言葉を終えたロザリーがりさの元に駆け寄ってくると、色とりどりの綺麗なブーケをりさに渡した。
「リサさんのおかげで幸せになれました、本当にありがとうございます」
「私は何もしてないよ、ただロザリーちゃんの気持ちを代筆しただけ」
「それでも、リサさんがいなかったら私は今ここにいません。ありがとうございます」
「へへ、なんだか照れるなあ」
花のにおいを嗅ぐりさ。
(いい香り)
そんなりさを見つめてケインが聞く。
「りさは誰と結婚するの?」
「さあ、まだわかりません」
「おじさん、リサを手放せないから、誰かのお嫁さんになんかならないでね」
「え?やだな、結婚しても私働きますよ」
「うーん……そういうことじゃないんだけど……今はそれでいいよ」
困ったように笑うケイン。
二人を祝福するたくさんの風船が青空に放たれる。
ロザリーとアーディの幸せな未来を示すように、どこまでもどこまでも高く空をのぼっていった。
end
最後まで一緒に駆け抜けてくださり、本当にありがとうございます!
番外編と新作も用意しているので、まだまだお付き合いいただけると嬉しいです。