俺様と勉強するぞ!
りさがいつものように恋文屋で仕事をしていると、来客を知らせるベルが鳴った。
「りさ!俺様と国立図書館いくぞ!」
「なんですか王子、藪から棒に」
やってきたのはアクロサウス第三王子のベルナルドだった。彼は現在、ヴェルニカ学園に留学生として日々学んでいる。
そんな彼が突然りさを誘い出すので、店にいたケインは何事かと椅子から腰を上げて様子を見る。
「なんでもすごい立派な図書館があるそうじゃないか。俺様そこでりさと勉強がしたい!」
「なんで私なんですか、お友達いらっしゃらないのですか?」
割と失礼なことを言うりさ。
「そんなことねーけど、お前が一番おもしれーからな! 王子命令だ! 今から行くぞ」
そう言って強引にりさの手を取り、連れ去るベルナルド。
「ケ、ケインさん~店のことよろしくお願いします~」
「ごめんね、りさ。おじさん何もできなくて」
手を合わせて謝るケイン。
かくして二人は国立図書館へむかうのであった。
***
森の横にある豪勢な図書館は、とても大きく、入口には女性の銅像が飾られている。
歩みを進めると蔵書スペースが目に留まる。天井まである本棚には梯子がかけられていて、大きなシャンデリアが中央に飾られている。並んだ机と椅子は豪奢なもので、りさはまるでロココ時代のフランスにきたみたいだと思う。
「俺様、歴史の勉強するから、リサ、お前横で教科書音読してくれ!」
「だめですよ、図書館は静かにしなきゃ」
りさは大声のベルナルドを制すように、人差し指を口元にやり静かにするよう求めた。
「知らねー!俺様の勉強の邪魔するやつはぶっ潰す!」
「もー、じゃあ小声で言いますね」
「頼んだぞ!」
そう言って、りさは歴史の教科書を小さな声で音読する。
「聞こえねー、小鳥のさえずりかっつーの。もっとこっち寄れ」
りさの頭をつかんでぐいと自分の方に寄せるベルナルド。
「ちょっと、やめてください、私モノじゃないです!」
「あ?わりーわりー」
ベルナルドはそう言うと素直にりさの頭を離す。
りさは
(びっくりした!)
と胸をドキドキさせていた。
***
一旦音読をやめ、りさは静かに勉強するベルナルドの顔を眺める。
真剣にノートをとっている姿は、映画俳優のようで絵になる。
(この人黙ってると本当に綺麗な顔してるな〜。あ、瞳が蒼くて綺麗。吸い込まれそう)
そんなことを思っていたら、ベルナルドと目が合った。
ニヤリとするベルナルド。
「お前、やっと俺様の美貌に気づいたな?」
「そ、そんなことは」
「いい、いい。俺様美しいからな。仕方ない、俺様の顔をぶしつけに見たこと許してやる」
「もう、違うのに」
りさはぷいっと顔を背け、教科書に目を落とした。
***
空はすっかり日が暮れて、夕焼けが目に眩しい。風が強いので雲が素早く流れている。
「あー!勉強した勉強した!」
「お疲れさまでした」
「また俺様に付き合えよ!命令な!」
「もうちょっとその傲慢な性格直さないと、立派な大人になれませんよ」
りさがそう言うと、しゅんとするベルナルド。
甘やかされて育ってきたので、あまり怒られたことがないのでしょんぼりしている。
「俺様、頑張って勉強したのに……」
「頑張って勉強しても、そんなんじゃ人がついてきませんよ」
「それは……そう……かもな」
うなだれるベルナルド。すぐさま切り替えて頭を上げる。
「俺様にそんなことを言う女は初めてだ。やっぱお前おもしれーな。どうだ、俺様の妃にならないか?」
「き、妃!?」
「どうだ?面白そうな毎日が過ごせそうじゃないか?」
「つ、謹んでお断りします」
「そうか……まぁよく考えてくれ」
(あーびっくりした! 今日はびっくりしっぱなしだなあ)
りさの鼓動が高鳴る。顔が赤いのは、夕日に照らされただけじゃない。
そうして二人は街に戻り、それぞれ家路についたのであった。
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