とある雨の日
空はどんよりと暗く、雨が降りしきり、雷が鳴り響くとある日のこと。
りさは
(なんかいやな感じの天気)
と思いながら仕事をしていた。店内はケインがペンを走らせる音が静かに響いている。
すると、ドアが乱暴に開いた。外の雨が入り込み、店内の床を濡らす。ドアに立っていたのは肩で息を切らし、何やら怒った表情をしている。
「どうなってんだ!おい!お前!この店利用したのにふられたじゃないか!どうしてくれんだ!」
「そ、そんなこといわれましても」
りさは仰天した。
そもそも、恋文屋は恋文を書くというだけで、恋愛成就するとは一言も言っていない。
何やら男は勘違いしているようだ。しかしそれを言っても逆上するだろう。男は怒鳴り続ける。
「他の奴はうまくいってるのに、なんで俺だけ!おかしいだろ!」
「も、申し訳ございません」
「高い金払ってんだ! !困るんだよこんなことじゃ!」
「はい……」
「俺の人生かかってんだ! もっと責任感もって仕事してくれなきゃ困るんだよ!」
「返す言葉もございません……」
怒鳴り散らす男性客にりさは必死で耐えていた。指先が冷たくなるのを感じる。動悸が速くなってこめかみがズキズキしてきた。
りさは、日本にいた頃、仕事で怒鳴られ慣れていたが、ここヴェルニカ国に来てからは、周りの人が穏やかで優しいこともあって、一度も怒鳴られたことがない。
(ど、どうしよう。すごく怖い……)
久しぶりに人から怒鳴られ、恐怖で手足が小さく震えるのを感じる。
理不尽な客をみかねたケインが
「お客さん」
と怒気をはらんだ声で話しかけると、
「な、なんだよ、俺は別に悪くねえぞ……全部お前らが悪いんだ!じゃあな!!二度とこんな店利用するか!」
と慌てて捨て台詞を吐き、嵐が去るかのように男は店を出た
バタンと扉の閉じた音が店内に響き渡る。ポツンと立ち尽くす二人。
「リサ、大丈夫かい?」
ケインが優しくそう聞くと、りさは糸が切れたようにわんわん泣き出した。
「こ、こわかったよ〜」
「よしよし、リサは何も悪くないよ、よく耐えたな。偉いよ」
ぼろぼろと大粒の涙を流すりさをあやすように、優しく抱きしめ、頭を撫でるケイン。
ひっくひっくとしゃくりあげるりさ。
「ご、ごめんなさい、私、もう、いい大人なのに」
「りさなんてまだ子供みたいなものさ。それに、いくつになっても大人になんかなれないもんだよ。おじさんも、歳だけとって中身が伴わないや」
「ケインさんはちゃんとした大人ですよ」
「ちゃんとした…ねえ…」
(ちゃんとした大人なら、部下にこんな気持ち抱かないよねえ)
困ったなあと頬をポリポリかくケイン。
しばらく二人は抱き合ったままだった。
外はようやく雨が止み、雲が去って太陽が辺りを照らし出した。
ブックマーク登録、評価、感想ありがとうございます。
原稿の励みになっています。




