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これって吊り橋効果ってやつですか?


太陽が雲に隠れてあたりがほんのり暗くなったある日のこと。

りさは、七日に一度の貴族たちからの依頼を受けるため、いつものように王宮に赴いていた。

店の前にやってきた迎えの馬車からフランツが降りる。


「リサ! 待たせてしまったか?」

「ううん、大丈夫だよ。あ、これフランツ宛の恋文。たくさんあるよ」

「リサからの恋文だと!?」

「ちがうちがう、依頼されたやつだよ。私からの手紙はこれ」


りさはそう言って、束になった手紙とは別に一通の手紙を差し出した。

りさは金貨を貰ってフランツと文通している。


「そうか……リサからではないのか。ぬか喜びしてしまった」

「まぁまぁ、それよりモテモテだねフランツ」

「リサ以外の異性からの好意など嬉しくもなんともない」


すねるように言うフランツをよそに、りさは馬車に乗り込んだ。


***


ガタゴトと馬車に揺られる二人。りさはフランツにあることを聞く。


「ねえ、フランツは私の文字が好きなんでしょ?じゃあ私が依頼されて書いた手紙を読んでも嬉しいんじゃないの?」


そう尋ねると、フランツは首を横に振る。


「確かにリサの綺麗な字だが、リサの気持ちではないから胸が躍らない」

「そ、そう。中々の過激派だね」


少し胸がドキドキするりさ。


(文字を褒められたからだよね)


と自分に言い聞かせる。


***


ヴィンセントから恋文の依頼の書類を受け取り、フランツがいる鍛錬場にやってきたりさ。

フランツは訓練中のようで、一対一で相手と対峙し、剣をさばいている。


(素人目から見ても、強いのがわかるな)


相手とは圧倒的に体幹が違った。体はブレることなく相手に剣をさしていた。


「そこまで!」


審判役の男が言う。


「団長、手合わせありがとうございました」

「ああ、もっと訓練が必要だな」


そう言うと、フランツはりさからの目線に気づき、タタタと駆け寄る。


「リサ! 今の見ていたか?」

「え?ああ、うん。かっこよかったよ」


そう言うと嬉しそうに大きく笑うフランツ。


「そうか!かっこよかったか!そうかそうか!」


何やら満足気である。


「さあリサ、店まで送ろう」


そう言って馬車のいる王宮入り口まで歩いて行った。


***


「でもほんと、さっきはすごいもの見させてもらっちゃった。かっこよかったよ」

「リサにそう言われると嬉しいものがあるな」


りさに褒められ慣れてないフランツの口元はだらしなく緩んでいる。

すると、一羽の小鳥が馬目掛けて飛んできた。

馬は急に飛んできた鳥に驚いて、ヒヒンと暴れだした。


「リサ!危ない!」


そう言って暴れ馬からりさをかばうフランツ。額に馬の蹄があたり、傷から血が流れる。

青ざめるりさ。


「フランツ!大丈夫!?私のせいだ、ごめん」

「何、向かい傷は男の勲章。りさが無事でよかった」


そう言われ、心臓がドクンと高鳴るりさ。

馬に襲われそうになったからか、それともときめきのどちらかなのかわからない。


(これってあれだ、吊り橋効果ってやつだ)


りさは冷静を務めてそう思うようにした。


「助けてくれてありがとう」

「いいんだ。りさに怪我がなくてよかった。それよりりさ、良ければ今度遠乗りに行かないか?」

「アナベルちゃんも一緒ならいいよ」

「そうか!楽しみだな!」


そういって笑いあう二人。馬がヒヒンと鳴いている。落ち着きを取り戻したようだ。

雲に隠れていた太陽が顔を出し、辺りを照らした。

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