恋のライバル登場! ?
風が強く、屋根が吹き飛ぶ事件があり、王国騎士団が救助にあたっていたとあるバタバタした日のこと。
恋文屋サリューにとある女がけたたましくドアを開け入ってきた。
「ケイン!来たわよ!」
「……アンナ。ここにはもう来ないと約束したよな?」
「あら、そんなの忘れたわ。元気にしてた?私がいなくて寂しかったでしょう?」
「あのー、どちら様ですか?」
りさは、ケインにやたらとなれなれしい女に名前を尋ねる。
女は痩せすぎた身体に、真っ赤なワンピースを着て、髪をキッチリとお団子にまとめている。おくれ毛一つない。
目はいやにキツく、狐のような印象を与えるその女は、りさにちらりと目線をやった。
「あら、あんたが新しい書き手のリサって女ね。私はアンナ。恋文屋サリューの元書き手よ」
「えっ!?」
「あんたが来るちょっと前に辞めさせられたの」
「な、なんでまた」
「ケインがいけないのよ!私に魅力を感じないから!」
「アンナ、もう帰ってくれないか?」
ははーんとりさは推測する。
恐らく、このアンナという女はケインのことを好きだったが、ケインはその思いに応えず、なんなら仕事にならないからとケインは暇を出したのだろうと。
事実、おおむね正解だ。書き加えると、アンナはケインの寝込みを襲ったのでクビになったのだった。
アンナはりさの机の上にある、書きかけの手紙を汚いものでも触るかのように手でつまんだ。
「ふーんこれが新人の書く手紙ねえ、へえ。そう。まぁ悪くないけど私の方が上ね」
そう言ってふふんと鼻で笑った。りさは
(なんかこの人いちいち鼻につくな)
と、少し苛立っていた。ケインも同様で、「早く帰ってくれ」と何度も言っている。
しかし、アンナはどこ吹く風だ。
「ねぇケイン、この娘なんかより私の方がずっとずっと美しいし、字も綺麗だわ!この女をクビにして私をまた雇って二人で仲良くやりましょう」
パンと手を叩き、いいことを思いついた!といった顔で最悪の提案をするアンナ。
りさは
(おいおい、冗談きついって)
とハラハラしながら行方を見守っていた。
ケインは眉間にしわを寄せ、アンナに詰める。
「アンナ、自分が何を言っているか分かっているのか」
「当然よ!さあ私を受け入れて!」
アンナが手を広げると、腕組をしたケインが大きくため息をつき、怒りをはらんだ声で言う。
「あのな、お前がいた頃より業績が倍以上に跳ね上がってるんだ。もうリサなしではうちの店は回らない。つまり、お前はもう必要ないんだ。もう帰ってくれ」
そうきっぱり言うと、アンナは顔を真っ赤にした。
「ふんっ!何よ、何よ!あんたみたいなちょっと顔がいいだけのオヤジ、別に好きでもなんでもなかったわ!じゃあね!」
そう言ってアンナは勢いよくドアを開け、大きな音を立ててドアを閉めた。
(嵐が去った……)
りさは急展開についていけず、ぼんやりとした頭でそう思った。
「……リサ、いやな思いをさせてごめんね」
ケインが深く深く頭を下げる。
「いえ、ケインさんが謝ることじゃ」
りさは慌てて、頭を上げてくださいと頼む。
面を上げたケインは、眉をへの字にしてりさに笑った。
「さっき言ったことは本当だよ。リサがいないと、もう俺やってけない」
そう言われ、思わず赤面するりさ。
(ビジネス!ビジネスとしてね!そうだよね!?)
りさは勘違いしないよう、細心の注意を払った。
もちろん、ケインはプライベートでもりさがいないとだめだと思っているのだが、そんなことりさは思いもよらないのであった。
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