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今私の仕事をばかばかしいって言いました?


りさが王宮に赴く日の朝。

いつものように馬車を引き連れたフランツが店の入り口前で待っていた。


「おはよ~。フランツ今日も元気そうだね」

「あぁ、今日はリサに会える日だからな! 待ちくたびれたぞ!」


そう言って笑いかけるフランツ。

第一印象が最悪だっただけで、根が悪い奴ではないことはわかってきたのだが、

どうもこの猪突猛進というか、一度決めたら頑固というか、そういうところはまだちょっと苦手だ。


「あ、はい。これ約束の手紙ね。あとで金貨ちょうだいね」

「ああ!待ち遠しかった!リサの手紙は大事に保管してあるからな!」


舞い踊るかのように喜ぶフランツ。

(フォントオタクな上にコレクターなのか。どの世界にもいるんだな、こういう人)


りさは呆れつつ、馬車に乗り込む。


道中、りさは気になっていたことをフランツに聞いた。


「ねぇ、フランツはどこの学校に通っていたの?」

「もちろん、名門ヴェルニカ国立学園だ!」

「へ~どんなこと勉強してたの?」

「俺は団員になりたかったからな。騎士の勉強をしていた」


そういって自慢げに話すフランツ。今なら聞けるかもしれない。


「ヴィンセントさんとは、どういう関係だったの?」


そういうと、笑顔がぴたりと止まるフランツ。


(やべっ地雷踏んだかも)


「なぜ今ここでヴィンセントが出てくる」


さっきとは裏腹に冷たく聞かれる。


「いえあの、ご学友だったという噂を聞きまして……」


りさがそう言うと、フランツは大きくため息を一つつく。


「そうか……リサだから話すがな、あいつは俺に何かというと突っかかってくるんだ」

「はぁ」

「ヴィンセントに好意を抱いていた女生徒が俺に心変わりしたことが気に食わなかったり、自分は剣術が全然だめなもんだから俺に嫉妬したり……まぁそんなところだ」

「へぇ。学校だけじゃなく職場も同じなんて大変ですね」

「まぁな。お互いもう大人だから喧嘩もしないが、用がなきゃ話さないな、まず」

「そ、そうですか」


(ライバルがいるって大変なんだな~)


とこの時のりさは呑気にそう考えていた。


***


王宮に着き、二人はそれぞれの持ち場へ戻る。

りさは執務室をノックしてヴィンセントの部屋に入った。


「おはようございます。今日も依頼書を受け取りに来ました」

「あぁ、ご苦労様です」


会話がこれだけでもなんなので、りさは世間話をしようとした。


「ところで、文通がこの国で流行っていますけど、ヴィンセントさんはどなたかと文通を交わしたりしているんですか?」

「私が?はっ、馬鹿な」


(ん?なんだか顔に似合わず口が悪いぞ?)


「文通なんてものが我が国の一大文化になってきているのは認めますがね、私はしませんよあんなバカバカしいこと」

「ばかばかしい……」

「手紙が届くのに一喜一憂するなんて合理性に欠けます。仕事のパフォーマンスも悪くなる。やっていいことなんて一つもない。馬鹿ですよ、文通をするなんて」


そう吐き捨てるように言い放つヴィンセント。


「それって恋文屋の私のことも侮辱してますよね?」


怒りを抑えて冷静に言うりさ。ちょっと血管が切れそうだ。


「あぁいえ、恋文屋さんは馬鹿にしてませんよ。立派な商売ですからね。ただ、文通にうつつをぬかすやつらが馬鹿らしいと思っているまでで」


そうにっこり笑う顔は眩しい。


(……いやいやいや!ほだされないぞ、そんな笑顔に!

明らかに恋文屋と、大事なお客様を馬鹿にしている!)


仕事に誇りを持っているりさは、ああそうですかと大きな声をだす。


「わかりました。ヴィンセントさん、私と文通をしましょう」

「は?なぜそうなるのですか」


心底わからない、といった顔をされたが知ったこっちゃない。


「私のプライドが傷つきました。絶対私からの手紙に一喜一憂させて仕事が手につかなくしてやりますよ」


鼻息荒くそう宣言するりさの挑発にヴィンセントは乗った。


「そこまで言うのならわかりました。ではまず私からお手紙を書きます。少し待っていてください」


そういって机に向かって何やらカリカリ書いている。

しばらくして、


「できました」


と言って紙を渡すヴィンセント。

これは……


「なんです、何か言いたいんですか?」

「いえ、あの、なんでもないです」


まさか文字がミミズのようにはっていて、読むのに苦労するとは言えなかった。

そう言えばケインさんが言ってたっけ


「この国じゃ字が下手な奴はモテない」


と……。

あぁ、ヴィンセントさんって、字が上手じゃないから恋文文化を馬鹿にしてたんだ……。

そう思うとおかしくなって笑いだしてしまった。


「な、なんですか貴女!なぜ笑うのですか!?」

「いえ、思い出し笑いです。お気になさらず」


笑いが収まったりさは


「お返事、七日後の今くらいの時間に私に来ますね」


と言ってヴィンセントの部屋から去ったのだった。

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