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女心を甘く見るなよ!

温かな日差しが恋文屋サリューを照らす。

りさが、ヴェルニカ王国は常春の国だと知ったのはここ最近のことだった。

ケインに


「雪とか降らないんですか?」


と聞くと、


「たまに降る」


と答えられた。


(冬景色のこの国はさぞ美しかろう)


そんなことを思っていると、扉が開きロザリーがやってきた。


「リサさん! 必ず返事の来るお手紙を書いて!!」


開口一番は、それだった。


***


興奮気味のロザリーをなだめ、 椅子に座らせお茶を淹れてやる。


「ロザリーちゃん、今日はどうしたの?こんなに切羽詰まってるロザリーちゃんを見るのは初めてだからちょっと驚いちゃった」

「すみません……実は、アーディ様から『しばらく公務で忙しく、中々返事を出すことができなくなる』と言われて……」

「そう、えーと前回ロザリーちゃんのわりに手紙を書いたのは……」

「三十日前です!」

「お、おう……長いね」

「もう私、早くアーディ様からのお便りが欲しくて……それで……」


シュンとするロザリーにケインは苦笑いして答える。


「まぁまぁ、仕事が落ち着いたらまたすぐ来てくれるさ」

「甘いですよ、ケインさん」


キラリとりさの瞳が鋭く光る。


「男は、恋人は俺のことを待っててくれるだろうと思いがちですがそんなことないです。ほっとかれてる間にいい男が寄ってきたらそっちにいきますって」


ちょっと主語が大きかったかな、と反省したがケインにはこれくらい言ってもいいだろう。

ロザリーもうんうんと首を振って同意している。


「ご、ごめんごめん。じゃあリサ、あとはよろしく」


そそくさと自分の執務室に戻るケイン。心当たりがあるのか決まり悪そうにしていた。


「で、絶対返ってくる手紙……だったよね?」

「ええ。私じゃ考えられないので今回はりささんに考えてほしくって……」

「わかった。ぴったりのがあるよ」

「ええ?」


そう言ってりさは紙とペンとインクを持ってきて、ロザリーの前で手紙を書く。

完成した手紙を見て、ロザリーは感嘆のため息をついた。


「これなら、お返事くださいますね!」

「うんうん。ところでアーディ様って王宮に住んでる人?」

「ええ、以前そのようにお話しされてました」

「じゃあ、私そろそろ王宮で仕事の依頼受けてこなきゃだからその時渡しておくよ」

「いいんですか!?」

「可愛いロザリーちゃんのためだよ、これくらいどうってことないよ」


そういってロザリーの頬をつんとつつく。

ロザリーは


「やめてください~」


と言っていたが、表情は明るい。


***


「じゃ、王宮にいってきます」

「はい、気を付けてね」


ひらひらとケインに手を振られ、店を出るりさ。

すると、店の入り口付近に馬車とフランツの姿があった。


「リサ!元気だったか?」

「七日前も王宮で会ったじゃん。変わらないよ」

「そうか。いつも徒歩で来てもらって悪いからな、今日は馬車を用意した!」


(えっ乗っていいの?馬車に?)


そう思って目をぱちくりさせるりさを、フランツは愛おしそうに眺める。


「これから毎回私が迎えに行こう!往復にも時間がかかるだろう?」

「まぁ、正直ありがたいのですが……」


フランツと密室で二人きりかぁ……やだなぁ。

この人なんだか私のことを恋人扱いするから苦手だ。


「ほら、乗らないのか?あぁ、馬車に乗るのが怖いのか。どれ」


そう言ってフランツはひょいとりさを抱きかかえた。いわゆるお姫様抱っこである。


「こ、怖くない!おろしてフランツ!」

「ははは、まぁよいではないか」


りさの抵抗むなしく、抱きかかえられて馬車の座席に降ろされるりさ。

あぁ、びっくりした。なんかドキドキするけど、驚いたからだよね、多分。

ときめきじゃないよね、絶対。


御者が「はいやー!」と声を出し、馬を走らせる。


***


「で、リサ。私への手紙の返事はまだか?」


フランツは馬車の中でりさに尋ねる。

実はりさはフランツと手紙のやり取りをしていた。

ただし、りさから手紙を渡すときに金貨を頂いている。


「プロの書き手に手紙を要求するなら対価を払いなさい!」


と一喝したら、すんなりと承諾したのだ。

割のいいバイトたと思ってやっている。


「ありますよ、はいこれ。今回はインクの色を橙色にしてみました」

「よいよい、みなまで言うな。読む楽しみが減る」


にこにこと手紙を受け取り、そのまま胸にしまい込むフランツ。


「あれ?今読まないの?」

「ば、馬鹿な!本人の目の前で読めるか!」


そういってあたふたするフランツは、ちょっと可愛いとりさは思った。

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