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デート

 ついに、土曜日がやってきた。今日は幸との写真撮影という名のお花見だ。

 俺は駅前に10時集合にもかかわらず、1時間前に来てしまった。


「さすがに、早すぎたな」


 楽しみすぎて早く来すぎてしまった。

 しょうがない。そこらへんで時間潰すか。


「あ、あれ? み、水石君? まだ9時だよ?」

「幸も、まだ全然早いぞ」

「あ、朝からお弁当を作ってたら楽しみになっちゃって。は、早く来すぎちゃった」


 幸は照れながらも笑顔で言う。最高にかわいい。写真撮ろう。

 スマホを取り出す。

 (パシャ)


「水石君。消そうか」


 さっきの笑顔に殺気が加わった。


「明日消します」

「今」

「はい」


 幸の前で写真を消した。復元した。 


「そ、それでなんで水石君も早く来たの?」

「それは、まぁ幸と一緒の理由だよ」


 俺はそう言い自分で作ってきた弁当を取り出す。


「あ、あれ? 水石君も作ってきたの?」

「なんか、お前だけに作らせるのも悪いと思ってな。交換して食べようぜ」

「う、うん。あ、ありがとう」


 カップルみたいで恥ずかしくなってしまった。

 それをごまかすべく話を変える。


「じゃ、じゃあ電車乗ろうぜ」

「そ、そうだね。で、でも、早くても30分先の電車じゃないとないよ」

「そうなのか。じゃあ、どっかで時間潰すしかないか」

「じゃ、じゃあさ一緒にカフェに行かない?」

「おう、良いぞ」


 俺らは幸を先頭にカフェへと向かう。

 はっ! これはいわゆるデートってやつでは!

 俺はそれに気づくと目の前にいる幸を見るたびに胸のドキドキが高まっていく。


「つ、着いたよ……な、なんでそんな顔赤いの?」

「気にすんな」


 そして、こっちを向くな。かわいすぎて顔がさらに赤くなってしまう。


「いらっしゃいませ」


 店員さんが俺たちに挨拶をする。


「2名様でよろしいでしょうか?」

「は、はい」

「では、あちらの席にどうぞ」


 店員さんに案内され席に座る。


「こちらが本日のメニューとなっています。ごゆっくりどうぞ」

「あ、ありがとうございます」


 幸はお礼を言い、俺は軽く頭を下げる。

 

「じゃあ、何頼むか」

「み、水石君。こ、ここのフレンチトーストがおすすめだよ」

「そうか。じゃあそれにするか。お弁当もあるし。一皿頼んで一緒に食べるか」

「そ、そうだね」


 フレンチトーストに、俺はコーヒー、幸はカフェオレを注文した。


「み、水石君コーヒー飲めるんだね」

「まぁな。受験の時に飲んでたらなんか好きになった」


 受験の時にカフェインを取り入れるため飲んでいたが、好きになっていた。

 注文の品が届くまで少し喋った。桜の下どんな写真を撮るかなどだ。

 そんな話をしている間に商品が届いた。


「こちらがコーヒーとカフェオレ。そして、フレンチトーストです」

「どうも」


 注文を受け取る。


「じゃあ、食べるか」

「み、水石君が先食べていいよ」

「良いのか? じゃあお言葉に甘えて」


 俺は、ナイフで一口分に切りフォークで食べる。


「うん。美味い」

「だ、だよね。この甘さが絶妙だよね!」

「そうだな」


 俺は、口の中にコーヒーを流し込む。甘さと苦さが混ざってちょうどいい。


「幸も食えよ」

「い、いや、良いよ」

「切ってやるからさ」

「えっ、い、いや」


 なんで、幸はこんなに顔が赤くなっているのか。食べるのをためらうのか。俺は考える。

 そして、俺は気付いた。

 このフォーク俺が使ってたやつだ! このままいくと間接キスになる! だから幸は顔が赤くなったり、食べるのをためらったりしたのか。


「幸、そのだな……」


 俺は持っているフォークを下ろそうとする。すると、幸は俺の腕を上げてフォークに刺さっているフレンチトーストをパクりと食べる。

 まさかの行動に数秒間固まってしまった。


「お、おいしいね」


 顔が赤くなりながらもおいしいと感想を言う幸。

 それを見た俺が言えるのは一つだけ。しあわせだ。


「あの~フォークならありますけど……」


 すべてを見ていた店員さんはニヤニヤとしながら言ってくる。


「「最初から言えよ(言ってください)!」」


 これで恥ずかしがっている俺はまだ幸に告白できそうにない。

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