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週末の予定

「よし! 今日も良いのがたくさん撮れた! ありがとね、啓介君!」

「俺はただお前の注文にこたえてるだけだ」

「それにこたえられて完璧にこなせるのがすごいんだよ」


 俺は本当に注文を受けてそれに対応しているだけだ。本当にすごいのは幸の腕だ。


「いや、お前の腕がすごいんだよ」

「そんなことないって」

「いや、あるから」


 幸は、コンテストを片っ端から応募してすべてのコンテストで大賞を獲るほどの腕だ。

 例えば、俺の笑顔の写真を撮った時もそうだ。なんの汚れもない笑顔で、窓の外から差し込む光を使うことで笑顔がさらに輝く写真を撮る。最高の瞬間を撮っているのだ。


「お前の写真は、何においても最高の瞬間を撮ってる感じがするんだよな」

「だって、最高の瞬間を撮ってるんだもん」


 それを自信満々に言えるのがすごい。

 つまりだ。幸の写真を撮るセンスは天才的だということだ。

 俺は純粋に幸のことをすごいと思っている。


「あっ、そうだ。啓介君。今週の土曜日も付き合ってくれない?」

「うん? ああ、いいぞ」


 幸はカメラを置こうとする手を止めて俺に聞いてきた。

 毎週土曜日は幸の写真撮影の手伝いをしている。山に登って頂上からの写真を撮ったり、海に行って撮ったりしている。そこで、風景を撮ったり、俺をモデルとして撮ったりしている。


「それで、今回はどこに行くんだ?」

「今回はそうだね・・・桜でも撮りにいかない?」

「あぁ、良いんじゃないか」


 今は、3月の中旬だ。もうすぐで学校も終わり、高校1年生が終わる。

 

「もうすぐで、1年生も終わるからさ。1年間お疲れ様でしたということで、お花見も一緒にしようよ!」

「そうだな。もう1年が終わるのか」


 少ししんみりとした。

 この1年間は楽しかったからこそしんみりとする。幸に出会えていなかったら多分、俺は一人で毎日つまらない日々を過ごしていただろう。

 しんみりとしている俺に向けて、幸はカメラを向けシャッターを切る。


「おい、何撮ってんだ。見せもんじゃねぇぞ」

「いいじゃん! こういう顔も撮っていこうよ! このしんみりとしてる顔をさ!」


 俺は、撮られるまいと思って下を向くと幸は下から覗いてきた。

 あっ、可愛い。

 覗かれた瞬間思った。

 

「なんで下向いたの?」

「お前が撮ってくるからだろ」

「別にいいじゃん! 君はモデルだろ! モデルは撮られるのが宿命だ!」

「ぐぅの音も出ないけど!」


 その通り過ぎて、何も言えない。


「こうやって啓介君の写真を残すことで、啓介ブックができるじゃん」

「いらなねぇから」


 誰が読むかそんなもの。


「卒業の時に作ってあげる」

「見ないからな?」


 それだったら、幸ブックをこっそりつくってやろうか。


「幸はモデルに興味ないのか?」

「私は興味ないな~。撮られたいとは思わないし。恥ずかしいし」

「俺も恥ずかしいからな」


 何度やっても恥ずかしさは消えない。

 

「啓介君はよくモデルという恥ずかしいことをやってるなと思うよ」

「やらせてるのはお前だからな?」


 俺は決めた。絶対に幸の写真を撮って幸ブックを作ってやろうと。


「ちょっとカメラしまってくるね」


 すると幸は俺から離れ、カメラをしまう。

 俺はチャンスと思い、ポケットからスマホを取り出し幸の姿を撮る。連写で。


「と、撮った?」

「いや、撮ってない」

「嘘をつくな」

「撮りました」

 

 今の幸はカメラ人格じゃないのに、珍しくはっきりと言葉を放った。


「消して」

「いやです」

「明日からの写真撮影覚悟してね」

「消します」


 幸が本当に怒っていた。初めて見た。

 幸が見てる前で消した。しかし、その後すぐにゴミ箱から復元した。


「そ、それで水石君。し、集合時間はどうする?」

「あっ、そうだった。話に夢中で忘れてた」


 急にいつもの幸に戻った。

 最初はこの変化にも戸惑ったが、1年も一緒にいたらもう慣れた。


「そうだな。駅前に10時ぐらいで良いか?」

「い、良いよ。じゃ、じゃあお弁当作ってくるね」

「えっ? 良いのか?」

「お、お花見といったらお弁当でしょ。い、一緒に食べようよ」


 よっしゃー! 幸の手作り弁当だ! 

 俺は心の中で叫ぶ。

 

「じゃあ、今週の土曜日に10時に駅前で良いんだな?」

「う、うん。良いよ」

「じゃあ、決まりだ」


 こうして、今週の土曜日の最高の日程が決まった。

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