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青天の霹靂  作者: 由葵
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神様聞いてませんけど。

ある日、何時もの様に職場に届いた荷物をヒョイっと胸まで抱えて、何時もの様に片付けるだけのハズだった。


今までに感じた事の無い違和感。

胸の辺りがじんわり濡れてる?

私に子供はいない。出産経験は無し。

故に母乳が出た経験も無い。

これは、ナニ?

嫌な予感しかない。



別の日。

生理が来た。憂鬱だ。生理痛が辛い。

立ち仕事が辛さに拍車を掛ける。

下半身に鉛が詰まってる。

あぁ、ドッと出た。下着が汚れないと良いけど。

え?ちょっと待って。止まらない?ドッとどころか、

ドーッと出て止まらない!ナニこれ!?



健康診断で子宮筋腫かもと言われて、病院に行くつもりだったのを早めよう。胸も気になるしついでに。

母乳出さなくても乳腺炎とかなるそうだし。

婦人科苦手たけど、仕方ないか。


職場の近くの婦人科。

女医さんが親切で丁寧と評判。

何とかしてくれるんじゃなかろうか。


結果。

怪しんだ子宮筋腫どころが、ナニも分からない?

おそらく卵巣?が大きく腫れてて他がエコーに写らないらしい。大きな病院でないと無理だろうと紹介状を書いてくれた。評判通り、優しい先生だった。お世話になるのはこれきりになりそうだけど。


大きな病院で、MRIだの、CTだの、採血だの、そんなに!?って聞きたくなる位の請求額にビックリしながら結果を待った。今は生理痛どころじゃない程お財布に痛かった。大打撃だもの。お陰である程度覚悟は決まったけど。

結果聞きに来るのは気が重い。


手術が決まった。


子宮筋腫と卵巣嚢腫。

両方全摘。まぁ、納得ではある。

両方とは思ってなかったけども。

子宮筋腫は一つではなく、何個か同時多発するタイプらしく、それぞれがそれなりに大きくなっていた。

嚢腫状態でも有るらしい。

この間の大出血はこれか。


卵巣も本来のサイズは片方2~3cmのはずが、13cmまでになってた。それも両方。私の身体はどーなってしまったのか。ストレスまみれの人生の賜物かな。


主治医曰く、絶妙のタイミングでの来院らしい。

これ以上経過すると、子宮はともかく卵巣が破裂の危険だったらしい。なるべく早く手術したいと。

覚悟は出来たから、それで構わないんですけど。

でもそれだけじゃないんですよ。

胸もね?おかしいの。

行くべき科から訪ねる私に、主治医は「絶対胸が先だから!」と、乳腺外科に連絡を取ってくれた。

先生慌てないで。嫌な予感しかしない。


胸にね、針を刺された、。どでかい注射器で。

胸の奥の組織を、色んな角度で採取する必要が有るらしい。

胸の表面に麻酔はかけてくれた。

針を刺すのは一ヶ所。先ずブスーっと、結構な深さで。

ゆっくり引き抜いて、抜ききらずに角度を変えてブスーっと。これを4~5回。これを両方。麻酔の効き目は何処?ってくらい痛かった。注射関係で涙が出たのは初めてだった。


胸の結果を聞きに行くのは、とにかく嫌だった。

予感というか、確信というか。

ただの乳腺炎じゃない事に気付いちゃったじゃないの。

変な緊張感出さないで。行かない訳にもいかないし。


乳癌。全摘。両方。

ステージ2だけど、場所が両方共に乳頭の奥。

残してほしくても、無理な相談。

あぁ。両親になんて説明しよう。

神様。私そんなに悪い事しましたか?

かなり真面目に生きてましたよ?

まぁ、離婚はしたけど。

あれは緊急避難だったと思ってる。

あのままじゃ私が壊れてたし。

あのストレス塗れの生活から始まってたのか?

自分の身体に起こってる事が今一つ信じられない。手術の日程やら、治療の流れの大事な話が頭に入って来ない。

手術前の説明に親族連れてこいと。

母には聞かせられない。弟よ、頼む。すまんね。


説明日。主治医には少し妙な顔をされたけど。

やはり弟に同行して貰った。

他所のお宅は普通親が来るものだろうか?

私も弟も既にいい歳なので、特に何か言われる訳ではない。

話が始まれば、本人より余程真剣に聞いてくれた。

何時も助ける側に回ってくれる様な弟が、もう仏様の様に思えてくる。この後の両親のサポートまで丸投げするつもりなのも黙って引き受けてくれるなんて、人間の出来の違いに泣けてくる。ありがたい。


手術中に、両脇のリンパに転移がないか組織採取して検査するらしい。つまり私の胸の傷は右脇から左脇迄ほぼ一直線に入る。胸の谷間が数cm途切れるくらいか。

盲腸の手術だって未経験だったのに、いきなりコレか。

ハードル高いなぁ。

まな板の上の鯉。よろしくお願いします。


まだ働いてる年齢なので、再建の話にも及んだ。

この機にいっそ大きくしようとする人もかなり居るそうで。

あ、私は元の質量で良いので。自前の肉が邪魔なのに、胸が大きくなっても服が入らなくなるだけでメリットは感じない。

胃腸の病気じゃないから特に痩せないとの事だし。

なんなら太るらしいし。

こんなに病気のオンパレード状態て太るとか、なんの嫌がらせか。

病変の摘出後に、ペッタンコになった胸の皮膚をも一度伸ばす為に生理食塩水を注入するバックを入れて閉じるそうな。聞いただけで痛そうだ。止めた方が良かっただろうか?入院準備やら必要書類の確認やらの説明に現実味が増して、すっかり後ろ向きになってしまった。

もう病気の事に関して話したくない。

暫く弟と無言で座ってた。


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