【サイコメトリー先輩と本の妖精】
椛「あー、ここ数日暑いなぁ?」
万「そりゃ、夏真っ盛りだし、来週には夏休みが始まるからね」
ち「この部屋、冷房弱すぎるんじゃないですか?」
万「うーん。けど、あまり強くするのも良くないしね」
椛「能力を使うのもな……。しゃーない、図書室にでも行ってくるか」
ち「あれ、岸先輩って読書家でしたっけ?」
椛「いーや。ただ、除湿器があるから、ここよりはマシだろう」
ち「超能力者が文明の利器に頼るのはどうなんですか!?」
万「くどいようだけど、そこまで便利なものじゃないからね。使わないに越したことはないよ」
ち「いや、この部活の意味……?」
椛「適当に涼んだら、そのまま帰るわ」
図書室にて
椛「……誰もいないのは珍しいな」
椛「いつもだったら図書委員がここでゲームをするなとうるさいんだが、居ないなら好都合だ」
ピコピコ
椛「ゲーム〇ーイは白黒の方が目にイイよなぁ」
?「それ、面白いの?」
椛「びっくりした!! なんだお前、いつの間に?」
椛「女……? いつからいた。ってか、うちの制服じゃねぇな」
?「私は落町 本。一応言っておくと、この名前気に入ってるから」
椛「別にお前の名前に興味はない。何か用か?」
本「私、それしってるよ。ゲームって言うんでしょ?」
本「ゲームを止めようと思ったけど、そしたら、図書室から出ていく?」
椛「まぁ、それなりに涼んだしな。適当なところで帰るつもりだ」
本「なら、少しだけ私の話に付き合ってよ」
椛「ゲームの片手間でいいなら、聞いてやる」
本「ええー。君って人に興味ないの?」
椛「……無いな。知っても得がないし面倒だ」
本「それは残念。じゃあ、読書には?」
椛「俺の親友が読書家だが、あいにく俺は本を読まない。おしゃべりはするけどな」
本「本と?」
椛「本当」
本「あはは。すごく面白いね。どんなお話をするの?」
椛「内容に関する話とかだな。ミステリー小説の犯人も聞けば丁寧に教えてくれるぞ?」
本「じゃあ、私のことも見透かせてたり?」
椛「まぁな。物の残留思念から依頼を受けることもある『私を見つけてほしい』ってな」
本「引き受けてくれるの?」
椛「お前ほど綺麗な本ならぜひとも手に入れたい。必ず見つけてやるさ」
本「人に興味はないのに、物を口説くのは上手なんだね。不思議な人」
本「けれど、私には記憶がない。それでも見つけられる?」
椛「俺は一度口説いたものは手放さない主義なんだ。とくに相手が乗り気ならなおさらな」
部室のカーテンの向こう側にて
葵「やっぱりこっちにきていたか、岸!!」
葵「ここはお前の部屋じゃないんだ。片付けろ」
椛「いやだと言ってるだろう。それと、ここにある物には触るなよ」
葵「それはもちろんわきまえているが……、落丁した本を撫でて、何のつもりだ?」
椛「んー。抜け落ちた記憶を塗り替える方法を考えてる」
葵「どういう意味だ……?」
椛「分からなくていいさ。この子だけが分ってくれればな」
椛「失ったのなら、あらたに作ればいい。本だって自由でいいんだ」
私は初版を買うことが多いのですが、たまに校閲漏れがあって見つけるのが楽しいです。
いや、だいぶ歪んだ楽しみ方の自覚はあるんですけどね……




