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神の箱庭 〜Magic World〜  作者: 杯東響時
第九幕「焦燥と躍進と」
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「act08 イテグリア・エイカム」

「へえ、じゃあガイナちゃんはココでズット寝てるんだ」


 解散後、キールとエドガーはそれぞれの部屋へと行き、ツヴァイスと二人でガイナが眠っている部屋へと向かう。その間互いに会話はなく、重苦しい空気が流れていた。


 久しぶりに会ったものの何を話してよいものかわからない。今までどうしてた、とか何があったの、とか色々と聞きたいことは沢山あったが、結局話せず仕舞い。部屋に着けば自然とガイナの状態を説明するしかなく、そのおかげで初めて会話が生まれたのだ。


「ワタシのせいで、ごめんなさい……」

「イイエ、ガイナちゃんだっテガブリエラさんを守レて嬉しかったと思いマスよ。ジブンを責めないでクださイ。コレから成長してイケバいいんですよ、ガブリエラさんも、アタシも。そしてガイナちゃんも」

「……ふふっ、なんだか少し見ないうちに大人になったみたいね。ワタシからも質問いいかしら?」


 ええ、どうぞ、と言うと一口だけ水を口に含み砂糖をこれでもかと大量に入れ、改めてそれをぐいっと飲み干した。


 ——見てるこっちが心配になるような飲み方ね……。味覚死んでるのかしら。


「アナタ、何があったの? ソレ、多分ワタシよりも強い力よね。本格的に悪魔使い(デビルマスター)にでもなったのかしら」

「アクマ使い、っていうよりはニンゲンとアクマとの境界が曖昧にナッテるだけデスよ。ガブリエラさんのアクマ版、みたいナヤツです」


 ガブリエラさんの、が指すのはおそらく人の身にて天を歩む者セラフィム・フェイカーのことで違いないはずだ。彼女の前では一度も披露したことなどなかったはずだが、それすらも看破できてしまうというのか。


 しっかし、熾天使であるガブリエルよりも強い悪魔だなんてどうやって契約できたのだろうか。そう簡単に出会える代物ではないはずなのだが——と疑問を口にしようとしたところで扉がコンコンとノックされる。叩き方から察するに男の人、キールかエドガーだと思ったが、入ってきたのはおよそ予想すらしていなかった人物であった。


「ここが例の彼が寝ている部屋か、ってうおっ。女がいっぱいいる……」


 苦い顔でそう呟いたのは第一師団団長であるイテグリア・エイカム。翠の瞳、美しい金色をした髪は肩まで伸びている。普通の女性であれば虜に、男性でも思わず目を奪われるほどの美貌だが、残念かなこの部屋にいる女性陣は全く効果なし。それがわかって少し安心したのか息を吐くと、ガイナが寝ているベッドの近くまで寄りその顔を覗き込む。すると何か満足したかのように近くにあった椅子へと座る。どうやらガイナの存在は師団長も知っていたらしい。


「この少年を含め、本来ならば君達のような子供は我々が守るべき存在なのだがな」


 エイカムの口から出たのは驚くほどまともな言葉。どうやら王が絡むと厄介なだけで、普段は評判通り人当たりの良い好青年(?)といった感じらしい。


「ワタシだって熾天使いです」

「その肩書だけで少年少女が戦いに出なければならない。そんな状況になっているのが——いや、これは私の偽善だな。君達が並みの覚悟でここに立っているわけではないことはその顔を見ればわかる。すまないな」

「エイカムさんはトテモ優しいヒトなんですね。サッキはすみまセンでした」

「あっ、いや私の方こそ取り乱してわ、悪かった……」


 これは意外。その外見通りモテるからてっきり慣れているものかと思っていたが、翠の瞳が揺れているのを見るにどうやらそうではなかったらしい。


 それは自覚があるのかわざとらしく咳払いをすると、もう一度だけガイナの方を見て席を立つ。


「あら、もうお帰りですか?」

「別に、最初から特に用があったわけではないからな。とはいえ、正直思った以上の素質だな、そこの少年は。いつか肩を並べて戦ってみたいものだ」

「きっとすぐに叶いますよ」

「そうであると信じたいな。では邪魔をした」


 それだけ言うと逃げるようにそそくさと部屋から出ていく。その様子がなんとなくおかしくって顔を見合わせるとくすりと笑ってしまった。


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