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神の箱庭 〜Magic World〜  作者: 杯東響時
第九幕「焦燥と躍進と」
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「act07 厄災獣の封印」

「まさか厄災獣の封印をした地の上に国を築いたのですか!? そんな危険なこと、嘘でしょう?」

「残念ながら真実だ。先代が封印をより強固なものとするため至る所に魔法で封印を施し、それが朽ちぬように、人の目が常にあるようにと小さな村を作ったのだが……。それがいつの間にかに大きくなっててな」

「大きくなっててな、で済む話ではないでしょう! 今からでも遅くない、早く一般の民を避難させないと——」

「たわけが。そんなものヴィクテム王が王となった瞬間に終えている。《《故にこの国で活動しているのは一人残らず全て厄災戦に志願している戦士なのだ》》」


 舌打ち混じりにエイカムが言った言葉に驚きを隠せない。だってこの国は世界で一番人が集まっている場所だ。だから世界で唯一国と呼ばれているのだ。そこにいる人間全てが剣士なり魔法使いなりの戦える人材、ということなのか。


「いつ封印が弱まってもいいようにこう準備を進めていたのだ。幸いなことに封印が弱まっていることも、しかも出現時間も予測できたことで先手が打てる。確かに愚かではあったが間に合ったので良しとしようではないか」


 完璧に準備を進めていて、しかも王からそう言われては何も言えない。


「わかりました。では当日の段取りは如何様に? そこも考えていないわけがないわよね、アレイスター」

「勿論だ、タナトスの封印が破れるのは一月三日頃だと思われるが、正確な時間まではわからない。よって一月一日を迎えた瞬間より封印を解いてこちらから打って出る。おそらく復活して開幕、殲滅式・高魔力光熱ディストラクション・バーストと呼ばれる熱線を撃つはずだ。それをハウリッド、君に止めてもらいたい」

「それはいいですが、何故開幕から撃ってくるわかるのでしょうか? 殲滅式・高魔力光熱ディストラクション・バーストなる魔力攻撃があることは資料を読んで理解していますが、そのようなことは書いていなかったと記憶しておりますが」

「ん、《《それはまあ歴史から学んだ》》というやつだ、気にしないでくれ」


 気にしないでくれってそれは無茶な話だろうが、同時にこの男が全く根拠のないことは言わないと理解している。もしかしたら国にある資料とは別口で何かを見つけたのかもしれない。だがアレイスターはその根拠を話さないと信用されないということを理解しているのだろうか。


「これはタナトスにとって必殺技ともいえる攻撃だ。ハウリッドがいくら防御に長けた魔法使いだとしてもこれを一度でも受け止めればおそらくほぼ再起不能になるはずだ。しかしこの攻撃、チャージには三十分はかかると言われている」

「つまりその三十分の間にケリをつけるということかしら?」

「その通りだ、ファイン嬢。前線部隊の五人はその間に一気に叩く。タナトスは大気中に漂う魔力を吸収し続けているわけで、つまり稼働時間はほぼ無限に近く長期戦は不利という状況も鑑みるとやはり短期決戦が良いとみる」

「短期決戦……。アタシもソレにサンセイです。そう長く持つ身体でハないデスからし」

「…………その間、前線部隊がタナトスに専念できるよう後援部隊が周辺に出現するはずの厄災の子を排除する。話すべき内容はこれだけだが何か質問はあるか?」


 ————マジ?


「い、いやいくらなんでも少なすぎるでしょ!? もう少しこう、具体的な攻略法だとかなんか授けるべき知恵とかないわけ?」

「そんなものはない」


 どうやらこのことを知らないのも外野組だけで師団長達はそれを理解したうえで戦うと言っているらしい。こいつらは何の自信があってこれで勝てると思っているのだろうか。世界最高峰の魔法使いと言われる自分でも勝てないような人物でも温いと言われているのにだ。


「ていうかー、不自然なほどにじょーほーがほとんど残ってないんだよねー」

「——たかだか百年程度前のことなのに……?」


 例えば五百年前の資料であれば古びて読めないこともあるだろう。しかし百年前だ。下手をすればその時代を知っている人間が生きていても不思議ではないほど直近の出来事のはずだが(現にガイナの父であるマキナは未だ存命である)。だからこその不自然なのか。


「油断をしているわけではねぇけど、あの時最前線にいた人間はほとんど死に絶えた上に生き残ったヤツらも詳細を話したがらない。オレ達としても満足しているわけではねぇけどさ、無いものねだりしても仕方ないからやるしかないってわけだ。なあに、愛する妻の為ならオレは死なないって!」


 ……まあ、この脳ミソにまで愛が詰まっているアホは置いといて。


 決死の覚悟でやるしかないというのは十二分に理解できた。幸い、ここにいるのは一人を除けば実績的にも申し分ない。当日おそらく別口でウリアとリヒートが参戦することを考えれば、今の人類側で用意できる最大戦力に近いと思われる。そう、一人を除いては。


 その一人に向け他の誰にも聞こえないよう小声で、


「(キール、抜けるなら今のうちよ。厄災戦に参加するにしても最前線である必要はアナタにはないはずよ)」

「(ばっかか、自分が強いからって他の人間を見下していい理由にはならねぇだろぉが。その程度の覚悟なら今ここに立ってねぇよ。それに俺様は俺様の世界を守りたいだけだ。それには自分のことも含まれてるし、本当にやばくなったら勝手に離脱するから心配すんな)」


 忠告するつもりだったがどうやら不興を買ったらしい。自分の強さに己惚れる、この性格だけは直さないといつか最悪なことが起こりそうな気がしてならない。


今まで大人ぶって行動してきたつもりだったが、所詮それも外っ面だけの話。もう少し年を取れば落ち着きというのも後からついてくるものだったりするのだろうか。思い返せば周りには腐った大人ばかりだったからか、まともな大人というのを想像できない。ここにいる人間だってどこか頭のネジが飛んでる人たちばかりだ。


……とりあえず今は考えるのはやめにしよう。とにかく生き残る、そして厄災獣を打ち倒すことだけを考えるんだ。


「これより一ヶ月は王都の周辺に出現している厄災の子の討伐をしながら、力をつけていってもらいたい」

「アレイスター・クロウリー。それも良いが、まずは無理をしないことだ。厄災の子狩りに精を出しすぎて怪我をしてもいかん。ということで、じゃ。ワシはお主達に無理強いする気はない。直属の上司でもない、であるからして命令権もない。そもそもここに集まってもらったのもお主達の意志だ。これから一ヶ月と少し、自由に行動してくれたまえ。そして、できることなら年明け、またここに全員集まれることを祈っているぞ」


 全員が静かに頷く。それぞれの覚悟を胸に、これから一ヶ月それぞれ過ごしていくこととなるだろう。


「では、解散!」


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