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神の箱庭 〜Magic World〜  作者: 杯東響時
第九幕「焦燥と躍進と」
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「act2.5 少年は駆ける」

 最初に違和感に気付いたのはおそらくマリンが人の身にて天を歩む者セラフィム・フェイカーを起動させた時だろう。マリンとはガブリエルの契約を介して魔力が繋がっており、二人合わせて一つの魔力タンクになっている。当然、片方が魔法を使えば察知くらいできるのだ。


「マリンがアレを発動させるほどの強敵……。ウリアの言ってた厄災獣の子ってやつが現れたのか!?」


 急げ急げ。マリン程の実力があれば厄災の子がどれだけの脅威でも負けることなどないはずだ。いや、むしろ苦戦していてくれた方が幾分安心できる。何故なら彼女の性格上、勝てる戦だと思えば楽しみ、勝ったと思えば笑顔でどや顔、つまり油断、慢心することは目に見えている。


「クソッ、なんだって一人で戦って……。自分の性格理解してるのか、あいつ!」


 そう文句を言ったって誰も聞いていないし、後の祭りなのはわかっているが文句、言わずにはいられないッッッッ!


 マリンの反応はあの背の高い樹の近くにある。他にも小さい反応がいくつもあるがこれは無視しても大丈夫だ。多分山に籠っていた時に時々見かけた変なやつらの仲間かなにかだろう。


 注意すべきはすぐそばで大きな魔力を放つ黒い存在。まだ視認できていないが魔力反応だけで黒いやつだとわかるのだから相当にヤバイやつだ。そして、もう一つ。巧妙に姿を隠している反応が一つ。これの存在にマリンが気付いていれば問題はないが、動きから察するにやはり気付いていない。


「っと!?」


 様々な思考を巡らせていると突如一筋の熱線が薙ぎ払われる。それを辛うじて避けると、燃えた木に氷魔法をぶつけて軽く消火をする。この魔法の扱いも随分と慣れたもので、マリンほどの実用性がある氷はまだ作れないものの小さな火程度なら凍らせることができるくらいにはなった。


 急げ急げ。マリンの魔力反応が大幅に増大した。おそらく権能魔法を使おうとしているのだろう。と考えているうちにあの大樹よりも遥かに背の高い氷槍が子を貫いた。あれほどの大魔法をほぼタイムラグなしに使えるのは滅茶苦茶じゃないか?


「——見えた!」


 マリンの姿を捉えた。何を考えているのか誇らしげに豊かな胸を張り上げている。悔しいが、こんな状況でも少しだけむらっとしてしまった。


「ってそんなこと考えてる場合じゃない!」


 直後、マリンの背後から黒い影が出現し、その爪を脇腹へ刺し向ける。


 ——時間加速(クロックアップ)で間に合うか……!?


 間に合わない。全力で駆けても十秒はかかる。それではあと一秒足りない。


 ——何か魔法でマリンを吹き飛ばすか!?


 それこそ間に合わない。マリンやエドガーみたいにノータイムで魔法を撃てるなら問題ないのだろうが、生憎時間操作魔法以外に関してはキールに言わせてみれば学生レベルというお粗末さ。


 ——爪があの柔肌に触れる。


 グダグダと考えている暇はない。自分の中に何か解決策はないか思考を巡らせていると、その思考に割り込むように聞いたこともない魔法の名前が浮かんできた。どんな効果を及ぼすか字面を読めば理解できる。


 ——これならマリンくらいは助けられる!


時間交換(クロック・チェンジ)!」


 視界が一瞬にして切り替わる。目の前にはおそらく今までマリンが見ていたであろう景色が自分にも見えていた。


 ——爪が食い込んだ。そうすれば当然のように赤い赤い血が溢れる。


 先程まで自分がいた方を見ると、状況を飲み込めていないのかマリンが呆然と、酷い顔でこちらを見つめていた。


 ——爪が大きく振り払われ、それに伴い身体は大きく跳ね、喉を血液が昇って、塊となり口から吐き出された。


 なんてことはない。マリンと自分の時間を入れ替えただけだった。使いようによっては強力な武器になるこれを、自己犠牲という形で使っただけのこと。厄災の子と入れ替われなかったのは対象に時間の概念がない、生命じゃなかったからだ。


 勿論代わりになるメリットもあった。自分はろくな回復魔法を使えないが、マリンならば自前の魔法があるから少なくとも死ぬことはないはずだ。


 あぁ、それと単純に。


 ——マリンが傷付くのは見たくなかったから、かな……。


 そこまで考えて一度意識をぷつりと落とした。


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