「act?? 一つの戦いの果て」
吹き荒れる砂嵐、その中で一人歩く影があった。それはかつて熾天使いと呼ばれた大魔法使い。今ではその契約の九割以上と左腕を喪失して熾天使いから二つ下の階級である『座天使い』程度、つまり並みの魔法使いよりは断然強いが、熾天使いには手も足も出ない程度の力しか残っていない。喪失した左腕の代わりに氷で歪な腕を精製している。人のような柔らかさはなく、固く、冷たく、まさに今の彼女の精神状態をわかりやすく表現した象徴。
歩く。歩く。一体何年こうして歩いたのだろう。胸の奥に微かに残る契約の痕を頼りに彼女は男を探して歩く。みんなはもう彼は死んだと言うが、それを認めることは彼女にはできなかった。
——大丈夫、魔力はまだこうして繋がってるから生きているはず。
——目の前で胸を貫かれて絶命したのを見たのに?
——うるさい、黙れ。まだ生きてる。そんなことはワタシが一番よく知ってる。
——でも死んだ場面を見たのも事実。なによりジブンだけじゃなくて、いろんな人が見てた。
——うるさい。
——これでも諦めない?
——うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい……。うるさい!
ぶおっ、と一段と強い風が吹くと踏みとどまろうとしたが、砂に足をとられて後ろへと転げ倒れる。倒れたまま周囲を見渡して洞窟を見つけると、這いながらそちらに身を隠して火を灯す。ここは夜は冷えるらしく、体温が既に自分でもわかるほどに冷たくなっていた。
——今日はここらへんが限界ね。時間は惜しいけれど、ワタシが死んだら元も子もないわ。カレを探せる人間はワタシしかいないのだから。
疲れているが、眠ると必ず悪夢を見るため眠る気にはならなかった。とはいえ生理現象、安心して休める場所を見つけてしまうと自然と瞼が落ちてくる。その頬には一筋、涙が通っていた。
——《《ガイナ、アナタは今どこで何をしているの?》》
心の中でそう呟いたのを最後に、彼女の意識は途絶えた。




