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神の箱庭 〜Magic World〜  作者: 杯東響時
第八幕「ありがとうとさようなら」
74/128

「act13.5 兄として」

 兄として可愛い妹を残して先に自分に殺されるというのはなんとなく気分が悪かったしその妹がさらに自分を殺した相手を殺したと知った時にはバツも悪くなってしまった。次に表に出て来た意識は前と違い好んで戦う性格のやつではないらしい。できれば自分が出てやりたいとこではあったが生憎と表に出てくる意識はランダム、しかも現在の表の意識、確かそう、カナメとかいうやつはまだ未熟なため別の意識を表層化させる術を持っていない。


 ……妹と再び話せるチャンスかとも思ったがそれもしばらくお預けのようだ。


 しばらく妹とカナメのあまあまな空間を共に味わっていた。ぶっちゃけ見せつけられている方としてはかなり複雑な気分だった。だって自分に似た顔を持つ少年が自分の妹といちゃついているというのは少し、かなり複雑だ。本人達にいちゃついている自覚はなかっただろうがアレは誰がなんと言おうと糖分が多めな空間だった。


 それからしばらくして世界が壊れ、いつの間にか知らない世界へと移っていた。世界を渡るのは初体験だったがなんというかこう、別の世界だとわかっていても中々素直に受け入れられるものでもなかった。いや、現に意識だけ生きているという状況の方が他の人にとっては不可思議かもしれないが。


 この世界で数年過ごした。妹を探しているようだったが結局見つからないどころかこの世界の裏側にある醜い事情、おそらく前の世界にもあったであろうソレらを見せつけられ、そして十年後、ついに妹はいないという決断を下した。同時にカナメは覚悟を決める。もう二度とこんな悲劇を起こさないためにも『神』を完全に殺害してみせると。


 本当になんでもない普通の少年にここまでの強い覚悟を決めさせてしまった責任の一端は自分にもある。カナメが妹を探している間にもう彼女はいない、諦めろと言い続けていたのは自分だからだ。


 だからコイツを守る。たとえその結果自分が消えても。


 少し前にカナメの覚悟がブレた出来事があった。なんの因果か並行世界の妹と会ってしまったのだ。無意識にだが彼女を求めてしまっていたようだが彼女はあくまで並行世界の妹というだけでメイリーンとは別人なのだ。彼女に妹の影を重ねるのは彼女に、そしてカナメのためにもよくないと思った。だからウリアの主導権を奪ってでも彼女からカナメを遠ざけた。そしてあわよくば彼女を■して存在の基準点を妹に、と考えたところで上から誰かが降ってくる。そのおかげでやっと正気に戻る。なるほど、メイリーンを失って正気ではいられなかったのは自分もだったらしく目的の人物だけを回収して逃げる。


 もう妹は、この世界にはいないのだとわかっていたじゃないか。


 ——そして今。ウリエルの気迫に押されたカナメは明らかに動きが鈍くなっていた。権能を発動された時なんて特にそう。頭ではわかっているのに体が追いついていかなかった。心の奥底で恐怖が生まれて足が動かなかった。


 カナメ程度の魂強度ならば精神的に弱っている時は主導権をこちらでも握れることは少し前の出来事でわかっている。


「バカッ、避け——」


 それが最後の言葉だった。カナメを逃がすために表へと浮かび上がる。おそらくあの攻撃ではカナメ一人分の意識しか生き残ることはできないだろう。一人の少年に背負わせるには残酷すぎる責任だったろうか。むしろ自分が神殺しの責任を背負っていた方が良かったのではないか。


 ……違う。たとえこの先どんな苦しい出来事が待っていようと、自分はカナメに生きて、その人生を全うしてほしいと思ったのだ。


 意識が消え行く中ふと視線をこの世界の妹に向ける。後ろの少年二人を必死に守っているその姿、服の隙間からちらりとだけだが見覚えのある火傷のような痕が、見えた。


 ——あぁ、お前そんなとこにいたのか。そりゃあ見つからないわけだ。


 それなら安心していける。彼らがいるなら少なくともカナメが一人になることもないだろう。


 頼んだぜ、メイリーン、カナメ。俺は最後まで立ち会えなかったけど、お前達の旅が、終わりが満足できるもので終わるよう祈ってるぜ。




 ま、神なんざ死ねばいいと思ってるから祈るってのもおかしな話だがな。


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