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神の箱庭 〜Magic World〜  作者: 杯東響時
第二幕「自然調律」
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「act05 旅立ち」


「ほんとについてくるのね?」

 あの一戦から一晩明けた朝、小さく頷いたのは町長の三人娘の次女、ツヴァイス・アンデ・シュタイン。

 大きく豪快な返事をしたのは熾天使いミカエルに対応する魔法使い、ミハエル・エドガー。

 ガイナとガブリエラの旅に同行すると言ったのはこの二人。

「まだわからないけれど、もしかしたらこの旅はアナタが思う以上に辛い旅になるかもしれないわよ。それでもいいの?」

「私もガイナと同じでこの町という箱庭の世界しか知らないから自分の世界を広げたいの。それに魔法も使えるから足手まといにはならないつもりだよ」

 その言葉が偽りのものではない事を心を読むことで確認する。

(まああの女の妹なわけだし元より嘘だとは思ってないけれど念の為、ね。でももう一つ可愛い理由も知っちゃったのは意外だったわ)

「それでアナタもついてきちゃうのね……」

「当たり前よ! まだ決着も着いてないのはそうだが、何よりお前らといると何か知らんが退屈はしなさそうだしな!」

 ガブリエラが露骨に嫌な顔を向けたのはエドガー。対した大男は豪快に、満面の笑みでそう言い放つ。

 諦めたのかため息をつくと一人先に歩き始める。それに続くように残りのメンバーも足を進めた。

「ただし、アナタを見つけたことは協会にも報告させてもらうわよ。異論はないわね?」

「報告?」

 ガイナとツヴァイスは首を傾げる。

 町の外れにある魔法協会の支部に着くといつの間に書いたのか文字が沢山書かれた紙をそこにいた人へと手渡す。

「熾天使いのマリン・ガブリエラ、定期活動報告書の提出をしに来たわ」

「それはご苦労様でございます。この後なのですが、活動の予定等は何かおありですか?」

 と、それなんだけれどと前置き、エドガーを前へと出す。当人は少し申し訳なさそうに、

「ミハエル・エドガー、今は活動報告書はねぇがこの嬢ちゃんと行動を一緒にするからコイツが出す時はオレもこれから出すぜ」

「……!? アナタがあの行方不明だった熾天使いですか。ではそちらの方も報告させて頂きますのでこれからも宜しくお願いしますね」

「行方不明?」

「熾天使いっていうのは一部を除いてその殆どが国の全戦力と単体で渡り合える程の怪物なの。そんな怪物が何処で何をしてるかわからないなんて恐ろしいなんてものじゃない。だから不定期的にでもいいから自分が今何をしているのか報告しなきゃいけないのだけれど、この男はそれを数年間サボってたわけ。あと少しで行方不明から指名手配に変わるとこだったのよ」

「だってめんどくせぇし」

「一年に一回でも文句一つ言われない活動報告が??」

「ははっ、賑やかで結構。そんな熾天使いさんにお仕事の依頼が届いてますよ」

 そう言って見せたのは何やら沢山文字が書かれた紙。ガイナは所々しか読めずに頭を悩ませているが他の面子は仕事の内容を理解できたようでそれはそれで頭を悩ませていた。

「ウルティーナ村の裏山調査、ね。あそこ確か立ち入り禁止になってなかったかしら?」

「今でもそうなのですが上からの依頼でして、支部に一番最初に来た熾天使いに依頼をして欲しいとのことでした」

「あのジジィ達が直接依頼だと? こいつぁかなりきな臭いぜ」

 基本的に魔法協会で受けられる依頼は協会外部からの依頼がほとんどである。協会内部からの依頼となると出てくる可能性は二つ。

 一つは世界的な危険を孕むもの。

 二つ目は協会のケツ拭き、外部に知られたくない事情の後始末。

 どれにせよろくなことにはならなそうである。

「いきなり大変な仕事になるかもだけれどみんな大丈夫?」

「勿論、険しいのは元より承知の上だ」

「大丈夫、私もガイナと一緒なら何処までだっていけるよ」

「危ねぇ方が楽しいしな!」

「ではお決まりのようですね。それでは不肖、わたくし、ドラコ・サンダートが皆様の旅のご武運を祈っています」

 途端そこにいる四人が一瞬光る。魔力反応があったので何か魔法をかけたということなのだろうか。

幸運の呪い(まじない)の魔法ね。それぞれに最悪が降りかかる時一度だけ身代わりになってくれる光属性の高位魔法。これほどのものを扱えるということはアナタ意外と高名な魔法使いだったりしないかしら?」

「そんな大層なものではありませんよ。改めまして皆様に龍の加護があらんことを祈ります」

「まあいいわ。よし、じゃあ次の目的地はウルティーナ村で決まりね!」

 目的地は現在位置から北におよそ二日歩いたところにあるウルティーナ村。魔法協会が立ち入り禁止区域と定めた危険地帯。

 世界を知る旅に出たのはガイナだけではない。ガブリエラもエドガーもツヴァイスもそれぞれの世界を知る旅がここから始まる。






 ──思えばここからだったかもしれないね。君達がここまでたどり着くと運命付けられたのは。全く、面白い物語だったよ。

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