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神の箱庭 〜Magic World〜  作者: 杯東響時
第八幕「ありがとうとさようなら」
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「act02 遊ぼう!」

 せっかくの海だ。さあ今くらいは暗い話は忘れて存分に楽しもうじゃないか。


「この海、深いッ!?」

「バカね。海っていうのは川みたいに簡単に足がつくようなところばかりではないのよ。むしろ足がつかないほどうーーーーんっと深いところばっかりなんだから」

「まじか海すげぇ! それにこの水しょっぺぇ!」


 そうかこの少年、海を知らないということは水が塩っぽいことも知らないということになる。海を知らない人の王道の反応ではあるが今まで生きてきてこんなあからさまに田舎……、失敬。世間知らずな光景が見れるとは思っていなくて思わず笑ってしまう少女。その様子に首を傾げながら、でも彼女が幸せならいいかと自分を馬鹿にしている笑いだと思いもしない純粋な少年もまた笑う。


 一方お姉さんと相棒もアオハルしている少年少女らの元へとたどり着いた。


 結局あの後は話をはぐらかされて続きを聞けなかったので胸の中に引っ掛かりは残っているがそれはそれ、これはこれとして今は——


「久々に海に来たんだ。俺様だってはしゃぐぜ!」

「あら、じゃあお姉さんも混ぜてちょうだい!」


 遅れた二人は一斉に海へと飛び込む。人は沢山いるが場所も広いので人にぶつかることもないので大きくはしゃげる!


「おいガイナ、あそこの旗まで競争しようぜ!」

「なんであんなとこに旗が立ててあるんだよ」

「なんでって、こんな風に競争する人が多いからだろ。よし、行くぜ!」

「負けねぇ!」


「あらあら、男の子達は元気ねぇ。ああいう子見てるとお姉さん、いろんなとこがたっちゃいそう☆」

「……下品。それにしても泳ぐのはいいけれどガイナはあそこも足つかないってわかってるかな。まあ溺れてもココはワタシの中だもの。すぐ助けられるか」

「あら、下品♡」

「そういう意味じゃあないッッッ!!」


 男二人は競泳、女子二人は浮き輪に乗ってゆったりと海水浴を楽しんでいる。戦いのことなんて忘れて今日くらいはゆっくりと……。


「そういえば貴女、ガブリエルとの定着率はどのくらいなの?」

「うーん、確か三割ってとこだったかしら」


 熾天使いは人間に熾天使の性質が混ざっているという話は前にした通り。定着率とは要するに人属性にどれだけ熾天使が混じっているかということを表す数値である。一般的には三割が限界とされており、それ以上熾天使が混じってしまうと意識まで乗っ取られかねないのだ。天才を評されたガブリエラでも三割を超えるのはギャンブルがすぎると判断して踏み込んでいない領域で、五分五分に混ざろうものなら自我が崩壊する可能性があるとも言われている。それだけ基本的には天使の方が圧倒的に力が強いわけで、実際過去に五割の領域まで踏み込みうっかり世界を滅ぼしかけた熾天使いがいたらしい。熾天使との契約というのは強力な力が得られる反面、扱う人間が半端であれば簡単に世界に終末を呼ぶことができるまさに諸刃の剣なのだ。


「そう考えれば当代の熾天使いは全員三割に迫っているわけだから特に優秀な人間が多いのね」

「ふふ、確かにそうかもしれないわ」


 少し含みのある笑みをこぼしながら優雅に妖艶にドリンクを口にする。この不自然な不快感、ガイナとキールは慣れているようだが先程会ったばかりのガブリエラはどうしてもこの雰囲気に慣れることができない。


「そんなに緊張しなくてもいいのよ」

「別に、緊張とかしてないわ」

「あら、それじゃあガイナくんのこと取られるかもって心配してる?」

「は、はあああああ!? そんなわけないですけどぉぉおおおお!????」

「ふふ、冗談よ。人の愛、いいえ、恋の邪魔をするほど無粋じゃないわ私」


 自分の中でもまだ整理できていないのになんとなく恋だとか愛だとかで感情を片付けられたのが面白くないのかむぅと口を尖らせる。気付けば男達と目指していたはずの旗が消えているが熱くなりすぎて溺れかけた二人は既に氷漬けにしてこちらに向けて海中を進ませているので問題なしだ。


「アナタはその、恋とかしてないの?」

「恋バナでもしたいのかしら。いいけれど。私は恋っていう恋をした覚えは、ないわね」


 ふと脳裏に浮かぶのは子供の頃の光景。およそ十の時に大虐殺を起こした、その一年前くらいの記憶。当時は辛く、苦しく、毎日毎日泣いてばかりの日々だったが今にして思えば「ああ、なんてもったいないことをしていたのだろう」と思うばかりである。


 舌なめずり。


「そうね、愛に溺れたことはあるけれど恋って言われるとこう、あんまりピンとこないものね」

「恋と愛はそんなにわける必要があるほど違うもの?」

「違うわね。恋は相手を想うもの、愛は独りよがりなものかしら」

「そうなの? あえて言うなら普通は逆だと思うのだけれど」

「私の前だから大人ぶった話し方しなくても……、って冗談よ冗談。だからそんなに睨まないでちょうだい」


 ため息一つ。ガブリエラが大人ぶっているのは単に大人に見られたいからとかではない。魔法協会は実力主義を語ってはいるものの中では年功序列の考えが染みついてしまっている。熾天使いに現状若い人間が多いのも奇跡のような状態なのだ。あのろう……もとい協議会が変わらないようではなんともならない。そんなだから少しでも舐められないように強く振舞おうとしているのだ。最初は背伸び感しかなかったが今では自然と身に付き舐められることも少なくなった(単に成長しただけとか言わない)。


「当たらずとも遠からずってやつかしら。でも別に意識してやってるわけじゃないから気にしないで」

「ってことはあの老害達が原因ね?」

「……へぇ? 話がわかるじゃない」

「ふふっ、私も嫌いだからあのクソジジィ達」

「へぇ! アナタ話がわかるじゃないの!」


「ふふ、ガブリエラって呼んでもいいかしら?」

「ええ、勿論。こちらこそ強く当たってごめんなさい、ラスティーナ」

「ラストでいいわよ」

「じゃあ、これからよろしくねラスト」


 共通の好きな物、嫌いなものが一つでもあれば仲良くできる。女性の友情も案外すぐできるものなのだ。


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